第12話 母の決意
ラクラミキオアラのお母さんは突然、見たことも無い森の中に飛ばされました。
「えっ!!ええ〜っ!?ど、どこなの、ここは!?」
思わず声に出して、そう言いました。
「えっ!!わたしの声じゃないっ!!」
変わっていたのは、声だけではありませんでした。お母さんはすぐに、自分の背が低くなっていること、そして腕や脚も、子供のように細く、短くなっていることに気づきました。驚いたお母さんは、左右の手で、自分の顔をぺたぺた触りました。
「か、顔も、なんか違う!!わたしの顔じゃないっ!!一体、何がどうなってるの〜!?」
ほとんどパニック状態であたりを見回すと、右の斜め後方にある大きな樹を背もたれにして、ラクラミキオアラとドイナ、ペイズリー3世の三人が、眠っていました。正確に言うと、チョコ警察のテレポート装置によって、気絶させられていたのです。お母さんは驚いてすぐに駆け寄り、ラクラミキオアラの肩を両手で揺さぶりながら、「ラクラミキオアラ!!ラクラミキオアラ!!起きてっ!!しっかりしなさいっ!!どうしたのっ!?」と声をかけました。しかしラクラミキオアラは気絶したままで、目を覚ましませんでした。お母さんはドイナとペイズリーの肩も同じように揺さぶりましたが、結果は同じでした。三人の手首に指を当てて、脈拍を確認しました。
「身体は温かいし、脈拍も正常。どうやら、気絶しているだけのようね…」
お母さんは安堵しました。
「わたし、夢でも見ているのかな」
お母さんはそう思って頬をつねってみましたが、普通に痛かったので、「これは、現実かも知れない!」と思いました。
困惑しながら後ろを振り向いたラクラミキオアラのお母さんは、地面の上に置かれている紙に気づきました。れいの、指示書です。お母さんはすぐにそれを拾い上げて、読みました。丁寧な言葉で書かれているけれども、温かさを全く感じない文章だとお母さんは思いました。"チョコのお城"とか、"チョコの国のお姫さま"とか、そこだけ読めば可愛く感じる言葉が出てくるのですが、文章全体に不気味な、全く信用出来ない雰囲気が漂っているせいで、ちっとも可愛く感じないのです。お母さんは指示書を読み終えたとき、寒気がしました。そして、こう思いました。
"この手紙を書いた人はきっと、とんでもなく悪い人だ。わたしたちを騙そうとしている。わたしが、ラクラミキオアラを守らなければ!そしてドイナちゃんとペイズリー君も、守らなければ!"
しかしお母さんは、とりあえず今は指示書に従うしかなさそうだと思いました。「正体を明かすと、全員、元の世界には戻れなくなります」と書いてあったので、「チョコのお城まで連れて来て下さい」という指示に逆らって連れて行かなかった場合も、元の世界に戻れなくなる罰を与えられるかも知れない、と思ったのです。まずはチョコのお城とやらに行って、そこからが勝負だ、と思いました。
しばらくすると、ラクラミキオアラたちが目を覚ましました。
「ん…んむむ…」
初めは意識が混濁していたため、ラクラミキオアラは、自分が置かれている状況をしっかり認識することが出来ませんでした。しかし、しばらくすると、自分が見覚えのない森の中にいることを、はっきりと認識しました。
「えっ!!えええっ!!?ど、どこ!?ここ、どこ!?」
それはドイナとペイズリー3世も同じでした。
「えっ!?ブランの森とは違うし、ラスノフの林とも全然違う…どこなの!?ここは!」
「おれに訊かれても分からないよ!そんなことより、あの樹、変じゃないか!?葉っぱが全部、チョコレートみたいな色してるぞ」
ペイズリー3世が、見てはいけないものを見てしまったような顔で言いました。
「えっ!!人がいるっ!!女の子!!」
ラクラミキオアラが、近くの樹に寄りかかって立っている女の子に気づいて、言いました。その女の子は言うまでもなくラクラミキオアラのお母さんなのですが、見た目はすっかり子供になっていて、膝丈くらいの焦げ茶色のワンピースを着ていました。無地ではなく、サンドベージュと黒を組み合わせた素敵なタータンチェックでした。襟は白い丸襟で、とても可愛らしいワンピースでした。そのワンピースはチョコ警察のテレポート装置のオプション機能によって作り出されたものですが、素材もデザインも、意外と良い感じだったのです。
「だ、誰ですか、あなたは!?ここは、どこなんですかっ!?」
ドイナが、ラクラミキオアラのお母さんに向かって言いました。




