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第11話 おそろしい指示書

「チョコレート計画は大統領が今、最も力を入れていらっしゃる最重要計画であると、認識しております。その計画の担当大臣を任せて頂き、大変、光栄に存じます。わが命に代えても、必ずや、計画を成功させる所存です」

 チョコレツィカは、視線を真っすぐブラックカカオに向けて言いました。

「うむ。頼もしいぞ、チョコレツィカ。今までは、このわしが大統領とチョコレート計画担当大臣を兼務しておったが、今日からは君がチョコレート計画担当大臣だ。警察の人事や、逮捕する人間を選別する際の基準、牢屋の管理なども君に一任するから、もし現状のやり方に不満があったら、好きなように変更して構わん。とにかくチョコレートの支配率を上げることだけを考えて、進めてくれたまえ」

「承知致しました。可及的速(かきゅうてきすみ)やかに決定し、計画を進めて参ります」

 

 チョコレツィカがチョコレート計画担当大臣に任命される一時間ほど前に、ラクラミキオアラのお母さんは、チョコ警察のテレポート装置によってチョコの国に飛ばされていました。ラクラミキオアラ、ドイナ、ペイズリー3世の三人も一緒でしたが、チョコ警察はテレポート装置の機能を使って、テレポートと同時に子供たち三人は気絶するように設定していました。そしてラクラミキオアラのお母さんだけは正気を保ったまま、姿と声を変えて転送しました。ラクラミキオアラたちが見たときに、自分と同い年くらいの、見知らぬ女の子に見えるようにしたのです。なぜ、わざわざそんなことをする必要があったのか。それを説明すると少し長くなるのですが、ちょっと我慢して読んで下さいね。

 チョコの国、チーズの国、マシュマロの国といった、食べ物の国は全て、磁石のN極だと思って下さい。人間の住んでいる世界は、S極なのです。だから、食べ物の国同士でテレポート移動したり、普通に行き来することは出来ません。チョコの国と人間の世界であればテレポート移動が可能なのですが、その場合も、どこでも良いわけではありません。例えばチョコの国の大統領官邸、ブラックハウスのあたりは時空の壁が分厚いので、テレポートには不向きなのです。チョコ警察の庁舎がある場所や、牢屋がある場合も不向きです。どのような条件だとテレポートが可能なのか、チョコ人の専門家もはっきり分かっているわけではありません。ただ、調査の結果なんとなく分かってきたのは、普段、人がいない場所の方がテレポートの成功率が高くなるということでした。例えば、森の中などです。しかし、人間を森の中にテレポートさせて、そこまで警官がいちいち足を運んで、牢屋に連行するのでは、手間もコストもかかり過ぎます。そこでブラックカカオが考えたのが、親しい関係にある複数の人間を同時に飛ばして、そのうちの一人に"連行する役割"を担わせるという方法でした。動揺や混乱を最小限に抑えるため、その一人以外は気絶した状態でテレポートさせ、そのとき同時に、連行担当の人間の目につくところに、一枚の指示書をテレポートさせるのです。その指示書はチョコの国で作成されたものなので、国内でテレポート転送していることになります。国内で、しかも無生物の場合、転送元や転送先がどのような場所であってもテレポートは容易なのです。

 指示書には、こう書いてあります。

『ここは、チョコの国です。何も危険なことは起きませんから、安心して下さい。あなた達は、チョコのお城に招待されました。あなたが先頭に立って、この紙に描いてある地図と方位磁石を見ながら、あなたの大切な人達を、チョコのお城まで連れて来て下さい。描かれている方位磁石は、絵なのにちゃんと機能して動く、特殊な方位磁石です。あなたは、見た目も声も変えられています。自分の正体を明かしてはいけません。正体を明かすと、全員、元の世界には戻れなくなります。あなたは、"チョコの国のお姫さま"と名乗って下さい。そして、他の人たちはおそらく、あなたがいないことに気づき、心配し始めるので、"チョコのお城にいるので、行けば会えます"と言って、安心させてあげて下さい。あなた以外の人達は気絶していると思いますが、五分ほどで、目を覚まします。それでは、よろしくお願い致します。』

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