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第113話 ワイルド男

※ドルレットがブラックカカオの別荘を出て一人暮らしを始めたタイミングがよく分からない状態になっていることに気づいたので、第60話と第64話を少し修正しました。何卒、ご容赦下さい。

 計量と記者会見は、大富豪ヤスミン・ディニクが経営するディニク・ロイヤル・ホテルのバンケットルームで行われる予定になっていました。イベントプロデューサーとしての能力も高いディニクは、部下に「決勝で戦う二人がホテルに到着する。車から降りてくる。集まったマスコミが一斉にカメラを向ける。フラッシュが激しく焚かれる。その場面も、このお祭りの需要なワンシーンなんだよ!ワハハハハハ!!そこで地味な車から降りてきたんじゃ、ちっとも盛り上がらない。最高級のロールス・チョコロイスを2台用意して、ドルフ君とドルレット君の自宅まで、お迎えに行かせるんだ!ワハハハ!」と指示していました。

 ドルレットが住み込みで働いてる児童養護施設の前には、朝から大勢のマスコミや、インターネット配信者達が集まっていました。チョコ-1 グランプリはチョコの国でかなり話題になっていたので、視聴率や再生回数を稼ぎたい人達にとっては恰好のネタだったのです。ドルレットの中には、"子供達のプライバシーを守らなければ!"という気持ちと、"大会を盛り上げたいと思っているマリウスさんやヤスミン・ディニクさんの気持ちを考えると、マスコミや配信者の人達を無下に追い払うわけにもいかないな⋯"という気持ちの両方がありました。ドルレットは中庸を得た対応をしようと心に決め、ドアを開けて建物から出ました。一斉にマイクを差し出してきたテレビ局のレポーターに向かって、彼はこう述べました。

「皆さん、今日は雨の中、ご足労頂きまして、ありがとうございます。ご質問には、私がきちんとお答えします。ただ、その前にひとつだけ、お願いがあります。ここは、児童養護施設です。ここで暮らしている子供達は全員、未成年なのです。とても繊細で、傷つきやすい歳頃(としごろ)です。顔を撮影されて一度でも全国に放送されたり、配信されたりすると、複製されてどんどん広がり、それを消すことはほぼ不可能になってしまいます。誹謗中傷、犯罪に巻き込まれる危険もありますので、子供達へのインタビューは、どうか、お控え下さ⋯」

 ドルレットがそこまで言ったとき、背後にあるドアを開けて、子供達が一斉に出てきました。

「わっ!ちょっ⋯!⋯出てきちゃダメだって言ったでしょ!!」

 ドルレットは大慌てで止めようとしましたが、既にシュテファンはドルレットの横でレポーターに「ドルレットお兄さんは普段、どんな人?」と訊かれ、「普段から、めちゃくちゃ格好いい。一日平均、20人は女性が寄ってくる」とデタラメな情報を提供していました。

「ちょっ!!シュテファン!お前、なに言ってんだ!」

 ドルレットがそう言うと、シュテファンは大爆笑していました。シュテファンの隣では、中学1年生の仲良し女子コンビ、ルクサンドラとサンジアーナが「ドルレットさんの好みの女性のタイプ、教えてくれる?」とリポーターに訊かれ、「う〜ん⋯好みとかは特に無いんじゃね?ドルレットはね、女性なら誰でもいいっていう、ワイルドな人だよ。アハハハハ!」「アハハハハ!うける〜!それ、当たってるかも!ドルレットは、来る人は拒まずっていう、世界一のワイルド男だからね!アハハハハ!」と、これまた完全にデタラメな情報を流していました。

「ゔおおおおおい!!お前らっ!いい加減にしろっ!!何を言うとるんじゃあああ!!」

 ドルレットが叫ぶと、集まっているテレビ局のリポーター、インターネット配信者、そして子供達が一斉に大爆笑しました。

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