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第108話 悲劇ふたたび

「チョコ-1 グランプリ、スーパーミドル級準決勝第2試合、ドルレット・レツィ選手対セルバン・コドレアヌ選手は、第1試合に続き、ゲスト解説にタカノリ・チョコハタケヤマさんをお招きしてお送りします。実況はわたくし、コンスタンティン・モクレスクが務めさせて頂きます!⋯チョコハタケヤマさん、いよいよ始まりますね!この試合の見所は、どのようなところになるとお考えですか?」

「そうですね、まずはドルレット選手ですが、彼のテンカオはものすごい威力を持っていますね。彼と戦っている選手は、距離をとっていても全然、安心出来ません。凄まじい速さで、いきなり膝が飛んでくるからです。側頭部へのハイキックも警戒する必要があるでしょうね。一方、セルバン・コドレアヌ選手は首相撲からのティーカオが得意なのですが、準々決勝でコスミン・アルジェサーヌ選手を倒した左フックも強烈です。パンチも蹴りも強烈なので、ドルレット選手にとってはかなり手強い選手であると言えるでしょう。どちらの選手も、一発で相手を倒せる武器を持っていますから、一瞬も目を離すことが出来ない、非常に緊張感のある試合になると思います」

 チョコハタケヤマがそう述べた次の瞬間、リングアナウンサーがドルレットの名前をコールし、照明が落とされました。そして選手が出てくる通路に向かってスポットライトが照射されました。レーザー光線が再び、踊り狂うように照射され、観客席からは歓声が上がりました。光の中にいたドルレットは、"このタイミングで、マイケル・ジャクソンシテ・トクトーレの名曲『デンジャラスカル』が流れるはずだ"と思い、耳を澄ましました。しかし会場に大音量で鳴り響いたのは『デンジャラスカル』ではなく、『チョコ猫ふんじゃった』でした。

 ドルフの『チョコだんご三兄弟』事件に続き、再び悲劇が起きたのです。

 犯人は言うまでもなく、自宅の近所に住むジジイであるソリン・ムレシャヌと深夜3時まで酒を飲んでいたチョコ-1 グランプリ運営委員会のアムザ・ブリンコベアヌでした。二日酔いの頭痛で頭が回っていなかったブリンコベアヌは、音響スタッフに「ブリンコベアヌさん、今度こそ間違えないようにお願いしますよ?ドルレットさんの曲は『デンジャラスカル』ですよね?」と訊かれ、「いや、『チョコ猫ふんじゃった』だよ。今度こそ間違いない」と答えてしまったのです。後になって関係者から「なんで二度も間違えたんだ!」と問い詰められたブリンコベアヌは、「太陽のせいだ」と言ったとか、言わなかったとか⋯。真相は、闇の中です。

 まばゆい光の中で困惑しながらリングに上がるドルレットの姿を見て、観客席にいたクララは、「この入場曲、ドルレットが選んだのかなあ?あいつが選びそうにない曲だけど⋯」と呟きました。ダリアは、「ドルレット君、明らかに困惑した顔してるし、多分、スタッフが間違えたんじゃない?」と返答しました。

 続いてリングアナウンサーはセルバン・コドレアヌの名を叫びました。ドルレットとは反対側の通路に現れたセルバン・コドレアヌにも、スポットライトが照射されました。流れた曲はチョコボン・ジョヴィの『イッツ・チョコマイ・ライフ』で、これはコドレアヌが実際にリクエストした曲でした。ドルレットは思わず、"ず⋯ずるい⋯おれも格好いい曲で入場したかった⋯"と思いましたが、よく考えてみるとコドレアヌは全然ずるくないので、やるせない気持ちになりました。

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