第100話 反応の多様性
オティリア達が電車でチョコ浜アリーナのある新チョコ浜に向かっていたちょうどそのとき、ドルレットが勤務している児童養護施設では、職員達が子供達を、近くにある市民会館で行われるパブリックビューイングに連れて行く準備をしていました。
施設にあるテレビで観ると、前回のように前列の子供たちしか観れなくなるので、パブリックビューイングに連れて行くことにしたのです。施設には、子供たち全員分の椅子を並べられるほど広い部屋は無く、椅子もそんなにたくさんありませんでした。施設内は土足禁止で、ほとんどの部屋にカーペットが敷かれていたため、床に直接座ってもらう形も検討しましたが、大きな画面で観るためのプロジェクターはありませんでしたし、部屋の広さも足りなかったので、結局、パブリックビューイングに連れて行くのが一番だろうという結論に達したのです。市民会館は歩いて15分ほどの場所にあり、チョコ-1 グランプリのパブリックビューイングは無料だったことも大きな理由でした。
「座席数はかなりあるみたいだから、多分大丈夫だと思うんだけど、念のため早めに行くことにします!その方が、席を確保出来る可能性が高いでしょうから!みんな、歩道を歩くときは、横に3人並んじゃダメよ!他の人達の迷惑になるからね。雨が降ろうが槍が降ろうが、地震、雷、火事、オヤジ⋯何が降ってきても横2列を死守するのよっ!!」
施設の女性職員シモナ・シリバシュが少しおどけた笑顔でそう言うと、施設の前に集まった子供たちは様々な反応を示しました。
「槍が降ってくるの?こわい⋯」
と、比喩だと分からず本気で怖がる子、
「横3人はダメってことは、5人ならいいわけね。OK!」
と、揚げ足を取ってニヤニヤしている屁理屈王子、
「火事って、降ってくるものじゃなくない?火の粉なら分かるけど⋯」
と、まだ子供なのに正論おじさん化している子、
「シリバシュさん、何言ってるんだろうね。オヤジが降ってくるなんて、あり得ないよね!!オバサンなら分かるけど ! 」
と全く意味不明かつ不気味なことを言っている子、
「ドルレットなら、オバサンが降ってきても絶対勝てるよ!」
と言ったシュテファンなど⋯。
「はいはい!!みんな!!静かにぃ〜!出発しますよ〜!」
シリバシュは元気に笑顔で言いました。子供たちも、なんだかんだ言いながらパブリックビューイングを楽しみにしていたので、「は〜い!!」と大きな声で答えました。
まだ試合開始時刻の1時間半ほど前でしたが、市民会館の入口の前には、既に大勢の人達が列を作っていました。それを見たシリバシュは、"見た感じ、500人くらいかな。あれくらいの人数なら、大丈夫。パブリックビューイングが行われるホールは1500人収容できるから、余裕だわっ!"と考えました。




