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エピローグ

 私は久方ぶりの友人に手を振った。


 ここは、王宮の中庭に建てられた東屋。

 来国した友達を招いたお茶会。


 異国の姫は、小さく手を振り返した。

 ちょうど私とレオンが告白し合った場所を通って、こちらに向かって歩いて来る。


「あ、いいの、いいのよ、座っていて」


 立ち上がって出迎えようとした私を、リシェルは手でとどめた。


 別に、全然大丈夫なのにな。


「リシェル! 久しぶりね! 半年くらいかしら?」


 興奮気味に話しかけた私に、リシェルはにんまりとした笑顔を返した。


「あら? 呼び方はそれで良かったかしら?」


 う……


「リシェル……お姉様……」


 慣れないなあ、この呼び方……


「ええ、お久しぶりね。アリシア王太子妃」


 リシェル……お姉様は、王族らしい余裕のある笑顔を浮かべた。


 私はリシェルの妹になった。

 ん? ってなった人もいるかも知れない。ごめんね、順を追って話すね。


 レオンに告白して、告白し返されたあの日から、私の生活は一変した。

 王宮に住むように言われて、従ったら怒濤の詰め込み教育が始まった。

 私もね? 貴族の端くれだからね? とおりいっぺんのことは知ってるし、出来るつもりでいた。

 王族になるには全然足りなかったらしい。


 礼儀作法に始まって、歴史、社会情勢、手芸に芸術、乗馬……

 中でも語学がしんどくて、レオンと結ばれたことを早速後悔しかけた。

 一週間くらいそうしていただろうか、突然、リシェルが国に戻るから一緒に来い、と言い出した。


 この勉強漬けの毎日が救われると思って、速攻で了承した。

 したら、道中、リシェルの国の歴史と作法を叩き込まれた。

 詐欺だと思ったね、私は。


 なんでこんなに学ぶ必要があるのか、と愚痴ったら、リシェルは驚いた。

 聞いてないの? あなたはわたくしの国の王族になるのよ、なんて言われて、私の方が驚いた。


 なんでも、私が王太子に嫁ぐには、どうしても家柄や血統が足りなかったらしい。

 それで、リシェルの国の王族の血が入ってることにして、王家に組み込むことにしたんだって。


 私が王族の血を引いてるだなんて、とんだペテンだ。

 でも関係者全員に都合の良いウソだったみたいで、私は簡単な儀式を受けて、あっさりとリシェルの妹となった。


 こうすることで、リシェルの国はウチの国に大きな貸しを作ったことになる。

 姫を嫁がせることなく、それ以上に強固で優位性のある結びつきを得られたってことで、リシェルの国には願ってもない話だったらしい。


 それから私は、一ヶ月くらい、リシェルの国で生活を送った。

 ここでも、王族として他国に嫁ぐための教育を受けた。他国、っても、自分の国なんだけどね。


 帰国したら大々的な婚礼の儀。一週間くらいお祭り状態だったんだから!


 そうして、やっと、私はレオンの妻となった。

 王太子との結婚って、大変。


「リシェル……姉様は今、どうしてるの?」


 私の質問に、リシェルは隣国の名前をあげた。


「そこの第二王子の婚約者。でもたぶん、近々、第一王子を廃して王位継承するんじゃないかな」


「そっちは大変そうね」


 私はのほほんと言った。

 ウチの国は王位継承権がレオンにしかないから、跡目争いは起きそうにない。


「アリシアは……この国は平和で良いわねえ……

 次の世代のあてもあることだし!」


 リシェルは私のお腹を見た。


「それにしても、大きくなったわねえ!」


 太ったんじゃないよ。

 いや、太ってもいるんだけど。


「なんだか、不思議な感じ」


 私は大きく突き出たお腹をさすった。

 そこには、新しい命が宿っている。


 レオンと、私の。


「触っても良い?」


 リシェルの申し出に、私は手を広げて答えた。

 そっとリシェルは私のお腹に触れた。


「なんか、ちょっと……ここに人が入ってるって……信じられない気がする」


「私も」


 我ながら。


「でも、アリシア……うふふ」


 リシェルは私のお腹をさすりながら、笑いをこぼした。


「けっこうバタバタしてたのに、やることはやってたのね……

 時期的に、私の国に来る前でしょ?」


 胎教に悪い話だ。


「……ってないの」


「ん?」


「だから、その……そういうことは、帰国してから……だったから……」


 リシェルはキョトンとした表情になった。

 そして、にや~とした笑いが浮かび上がってくる。


「なあ~に? 覚えてないとか、きっと何もなかったとか、散々言ってたのに!

 いっちばん最初から、結ばれてたんじゃない! もう!」


 リシェルはお腹を抱えて笑った。


「覚えてないのはホントだもん」


 ようやく爆笑が収まり、リシェルは浮かんだ涙を拭った。


「じゃあ、これって、レオたんが責任取ったって話だ」


 1000年に一度の運命のラブロマンス(私が言ったんじゃないからね! 国民がそう噂してるんだからね!)を、そんな風にまとめられるのは不本意な気がした。


 でも、まあ。


「そうかも」


 幸せにしてくれるんなら、いっか。


 同意するみたいに、お腹が内側から蹴られた。



(完)

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