塞がってるらしいけど何がだろう
そして私の知らないところで一気に話が進んだ二日後、私の髪はボサボサに服は煤けたぶかぶかの汚いノースリーブが一枚で、下を向けないほど太い鉄の首輪と手枷で厳重に拘束され、目隠しと口枷まで嵌められて何処かへと鎖で引かれていく。もちろん裸足で。
私がヘゼルさんに言われた命令は、ヘゼルさんとグーデルさんが賢者の杖だと名乗り出てオークションを混乱させた隙に子供達の隷属魔法を解くこと、そしてそれまではバレないようになるべくじっとしていること。
「お前も出品したいのか?」
「ああ。いいだろ?人族はレア物だから高く売れるはずだ」
鎖が強引に引っ張られて爪先立ちで必死に首が持ち上がるのに耐える。
「初物だろうな?」
「当たり前だ。あいつら節操無しの癖に病気にうるさいからな」
「言えてるぜ。今ボスに確認してきてやるよ」
「助かる。ほらっ大事に閉まっとけ」
引っ張られるのが終わり、キンっと金属音が聞こえてパンを破裂音が聞こえる。
「あんたよくわかってんな」
足音が遠ざかっていき扉の閉まる音が聞こえると、きっと奥で身体を調べられるけど耐えてくれと耳元で囁かれ、首が動かないのでお辞儀のように頷く。
少しして扉が開き、足音が近づいてくる。
「飛び入りだから三割でいいならいいってよ」
「うーん…仕方ないか。交渉成立だ」
「じゃあついてこいよ」
鎖を引かれていき、何かに座らされて足を開いた状態で足首と太ももを何かで縛られ、両手は鎖を何処かに掛けられたのか上の方に引っ張られて吊られる。
「じゃあ調べるぜ」
「ああ、傷はつけないでくれよ?」
「わかってるよ」
服が捲られてお腹に吐息を感じると下腹部を指でなぞられて、くすぐったくて身動ぎしてしまう。
「何だ?この紋様…」
「魔力が多いやつにはたまにそういうのが身体に出るんだ。扱いきれなくて親に捨てられたのさ」
「へー…さて、こっちは…」
股間が左右に引き伸ばされて吐息を感じると手が離される。
「おいおい、こいつ塞がってるぞ?」
「それがいいって奴もいるんだよ」
「こいつはあまり鳴きそうに見えねーけどまあ初物には違わねーか」
目隠しが外されて、何かの明かりで目がやられている間に口枷を外される。
「色白、目は茶色、人族の顔はわかんねーな…」
ようやく視界が慣れてきたけど首がほとんど動かないから相手の顔が見えない。
「トコヨやキコクの見た目だ」
「レア物のレア物ってわけか。じゃああんたはその扉の先に二番目の部屋が控え室だ。お前は騒がずに大人しくついてこいよ。また目隠しと口枷されたくなかったらなあ」
縛られていた足が外されて床に下ろされると鎖を引かれて廊下の奥に歩かされていき、階段を降りて地下牢に入れられると思いきや、牢屋の目の前で立ち止まる。
「っ!!うぐっ…」
突然、鎖を引かれて宙吊りにされ、首と手首にそれぞれの枷が食い込んで首がもげそうになって声が漏れる。
「おい、お前話せるのか?」
「マナ、チネ…」
床に落とされて、そのまま横たわると首輪と手枷を繋いでいていた鎖が外されて牢が閉められ、ガチャンと鍵をかける音が聞こえる。
「ヨウル大陸語か?トコヨの言葉か?とりあえず異常無しと…」
鳥頭の男が何かを書きながら地下から出ていくと、誰かが私を起こしてくれる。
牢の中に明かりは無くて、通路の天井の魔晶灯が微かに牢の中に入ってきているだけみたいだ。
「ありがとう…」
「あれ?普通に話せるの?」
緑色の肌の少女が驚いた様子で私の顔を見る。
「うん本当はね…」
牢の奥の暗がりにひとかたまりになっている少女達の姿が見える。
「ねえ…みんなは拐われてここへ?」
「うん…」
「他の牢にも?」
「多分ね」
「そっか…」
いったい何人いるんだろうか。あまり人数が多いと魔法を解除するのに時間がかかる。
どうしよう。先に事情を説明しておいた方がいいのかな…。
「あなたも拐われて?」
「…うんそんな感じ……」
「あなたは番号がついてないね」
「飛び入りらしいからかな」
よく見ると首輪に番号札のようなものがつけられているみたいだ。それに素手で触れられて魔法が解けてしまうところだった。
ずっと魔力を溜め続けている成果だろうか。
「お腹のそれ…あの人達に?」
服がはだけていたようでお腹の紋様が見えていたのを立ち上がって、裾を下ろして服を直すけどパンツが無いのが若干気にくわない。
「魔力がたくさんある証みたいなものだって聞いたよ」
「じゃああの人達に何かされたんじゃないんだね」
「うん…まさか何かされた?暴力とか」
緑の少女がひとかたまりになっている少女達の方を見ると、少女達が立ち上がって横に避けていく。
すると壁際の暗がりに横たわって震えているような人影が見える。
立ち上がり近づいてよく見ると、熱があるのか汗を掻いていて、はぁはぁと息苦しそうにしている小麦色の肌の少女が倒れていた。
その少女の下腹部には赤い紋様が怪しく光を放っていて、これを見て私のお腹の白い紋様が気になったのだろう。
「これは魔法なの?」
「うん…買い手が見つかればこれをつけるって言ってた。これがあれば子供でもすぐに立派な娼婦になれるとか笑いながら話してたよ…」
「なんでこの子だけ?」
「見せしめだよ…私達を助けようとして…」
「そんな…」
毒じゃないなら多分魔力を浴びせれば治してあげられる。
やっぱり事情を説明するべきか?治した直後に動き回れる保障もない。それなら今のうちに治しておいてすぐに動けるようにそのまま倒れているふりをして休んでいてもらう方がいいと思う。
「みんな話があるから外に聞こえないように集まってくれる?」
恐る恐るといった様子でみんなが近づいてきてくれる。
「私は賢者様のお城から、賢者の杖と一緒にみんなを助けるためにきたんだ」
「それは…はぁはぁ…本当?」
意識があったのか小麦色の少女が目蓋を重たそうに開いて私を見る。
「うん。今からあなたにかけられた魔法を解くけど、バレないようにそのまま寝たふりをして動けるようにに休んでいて」
「はぁはぁ…わかった…」
「痛かったらごめんね」
へその下の紋様の上に手を置いただけで少女が歯を食い縛りながら痙攣をし始め、急いで右の手のひらから魔力を放出すると白い光が溢れて炎のように揺らめく。
「ぐっ!うぅ…はぁ、はぁ、ありがとう…ございます…多分もう…」
少女にそう言われて魔力を止めてまた内へと流しながら手を避けると、赤い紋様はすっかり消えていた。
「うん…消えてくれたみたい。ゆっくり休んでいて」
「はい…」
満足に休めていなかったのかすぐに目を閉じて寝息を立て始めると、小麦色の少女の周りにまた少女達がひとかたまりに集まって座る。
小麦色の少女はみんなの精神的支柱だったのかもしれない。
「あの…あなたは大人の方だったんですか?」
隣に座った緑の少女がさっきまでと違って緊張した様子で言葉が丁寧になる。
「ううん。みんなと同じ子供だよ。魔力があるだけで魔法使いでもないんだ」
「ほんと?」
「ほんとだよ。そういえばオークションがいつ始まるか知ってる?」
「ううん…ここがどこなのかも…」
「ここはマルデの娼館の地下のはず…」
「そうだったんだ…」
かなり静かで上の様子が全然わからない。
「上の様子がわかるような魔族の子いるかな?もしもわかる子がいたら教えてほしいんだ」
ひとかたまりの中から兎のような縦長の耳の子がゆっくりと立ち上がり、そっと私の後ろから耳打ちをしてくれる。
多分今から始まるところだと。




