なんだあ気恥ずかしかった
お昼時のピークで出来上がったお客さんの波に押し出されるようにパン屋さんを出て、アリシアさんと街を歩く。
みんなお昼休憩なのか先程までよりも人通りが増えていて、私は自然とアリシアさんと手を繋いで歩いていた。
「何か欲しい物とか見たいものはありますか?」
アリシアさんが聞いてくれるけど、欲しいもの、見たいもの、ぱっと思いつかない。
「うーん…」
「お食事会に参加するのに必要なものはだいたい揃えられたかと思いますが…靴はドレスとセットの物がありますし、主様とエリュさんに頼まれた物は受け取り終えましたから」
お食事会に参加するのに必要なもの。ふと視線が胸に抱くリネに移ると、視線を感じ取ったのかリネが私を仰ぎ見る。
「食事会の時、リネはこのままで平気何でしょうか?首輪をしないと駄目とかありますか?」
「首輪…確かにそうですね。リネさんの首輪は帰ったら主様にお願いしましょう」
「わかりました」
「他には大丈夫そうですか」
「多分…ドレス、靴、鞄、手袋にハンカチもいただけたので大体は揃っていると思います。マナーがよくわからないですけど」
「普段通りで大丈夫ですよ。おかしな人はエリュさんとフィシェルさんがどうにかしてくれます」
「そういえば二人もドレスを?」
「エリュさんはそうだと思いますが、フィシェルさんはわかりませんね。制服を着ていくんじゃないですか?」
「制服?」
「普段着ているブラウスとスカートに本当はブレザーとコートが魔法学院の制服で正装なんですよ」
「フィシェルさんは学生さんだったんですか?」
「飛び級で卒業していますけど、教授方に引き留められて嫌々席を残していますね」
「なんだか複雑な事情がありそうですね…魔法学校ってたくさんあるんですか?」
「そうですね。今はたくさんありますけどその中でもフィシェルさんが席を置くイー大陸魔法学院、ダリアさんの通うチッタス王立魔法学校、この間荷物を運んできてくださったナナイさんの通うフニル魔法学校が、最難関で格式の高い三大魔法学校と言われていますね」
「通いたいとかは全くないですけど、どんなところか見てみたいです」
「二人にお願いすれば簡単に見れると思いますよ?フニル魔法学校は孤島にあるので校内には入れないはずですが島を観光出来たはずです」
「いつか行ってみたいですね」
私の言葉にアリシアさんが驚いた顔をする。
「行きたくなかったですか?」
「いえ…フニルは景色が綺麗だと有名なので行ってみたいです」
「アリシアさんはガンドルヴァルガさんと旅行などに行ったことはないんですか?」
「ないです。ずっと二人でお城ですよ」
「そうですか…いつか行けたらいいですね」
「そうですね…リーシルさんも島なら安全ですし、ナズナさんとリネさんがいてくれたら、お城を空けることも出来るかもしれませんね」
「その時は任せてください!ね?リネ?」
リネもアンと吠える。
そうして話している間にあっという間に門まで歩いてきていて、アリシアさんの顔パスで門を通り抜けて、少し歩いて離れたところで元の巨駆に戻ったリネの背に乗って空を飛んでいく。
「今日はいい息抜きになりましたか?」
「はい!一緒にお出かけ出来て楽しかったです!」
「それは何よりです」
「アリシアさんは普段はお一人で買い物に出ていたんですか?」
「そうですね。空間に穴を開けられるようになったのは最近ですので、荷物のことを考えるといつも一人で買い物に出てました」
「それは確かに大変ですね。森から距離もありますし徒歩で荷物までとなると…」
「いえ、徒歩ではないですよ?」
私の後ろで私を支えるように私の肩の上から腕をリネの背に突いていたアリシアさんが、私を突然抱き締めてリネの背から跳ぶ。
「アリシアさん!?」
驚いたものの落ちるような様子は無く、慌てて振り向いたリネが捕まえに来ることもない。
「これは…」
「私は飛べるんですよ。これでは見えませんね」
アリシアさんが私の向きを顔が向かい合うように内向きにすると、アリシアさんの背から大きな白い翼が見え隠れする。
「翼があったんですか!?」
「普段は邪魔なのでしまい込んでいるんです」
「魔法で?」
「ナズナさんと触れ合っていても今まで勝手に出たりはしませんでしたから違うみたいですね。私も驚きです」
リネの背にゆっくりと降りて翼をしまい、私を持ち上げて前を向かせて座らせ直してくれる。
「かっこいいですね」
「ふふふ…ありがとうございます」
アリシアさんが私の頭を撫でて、リネの背も撫でる。
「またお買い物に付き合っていただけますか?」
「はい!喜んで!」
うぉふっと吠えたリネがさらに速度を上げて飛んでいき、程無くして中庭に降り立つ。
すると大師匠が手を振って迎えてくれる。
「おかえり。三人とも」
「ただいまです大師匠」
「ただいま戻りました主様」
リネもうぉふっと挨拶をして身体を伏せて、アリシアさんが私を抱っこしてリネから降りて、地面に下ろしてくれる。
「楽しかったみたいでよかった」
大師匠が私の頭を撫でて、少し迷ってアリシアさんの頭も撫でる。
「アリシアも久しぶりにいい顔をしている」
「いつも不機嫌みたいじゃないですか?」
「いやっそんなつもりは」
「冗談です。今度はみんなで出かけませんか?」
「そうだな…そうじゃな…それもいいな」
「はい。約束ですよ?主様」
親子のような祖父と孫のような微笑ましい会話になんだかいけないところを見ているような気がして大きなリネにぎゅっと抱きついて気持ちを誤魔化す。
今日はアリシアさんのいろんな姿を見られた気がする。それと忘れず恩返しを考えておかないと。




