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サンダーバード

 避雷針の実験は無事に成功し、護衛の兵士さん二人が村長さんに話しを聞いて戻ってくるまでに三度の雷が落ちたけど、壊れたりする様子もなく帰り村に寄って避雷針の近くには危ないので近づかないように伝え、レイゼリアさんの言いつけ通りに残りは宿舎で貰ったお菓子を食べながらのんびり過ごして英気を養い、翌朝、レイゼリアさんとレーシャさんに見送られながらリネと空に飛び立つ。

 雨の勢いは変わらず土砂降りで、フードの中にこもった雨音が聞こえ続ける。


「リネ、サンダーバードの位置はわかる?」


 わふっと吠えてリネが厚い雲に向かって飛んでいき、私は私達を守るように四つの鉄塊を乱回転させながら周囲を旋回させたまま雲の中に入り込む。

 雲の中は視界が悪く、寒くて息がしにくい気がする。

 しかもブブブブブブブと虫の羽音のような聞こえるなんて思わなかった。

 雷のせいなのか雲ってそういうものなのかと考えながら周囲を警戒していると、キーヒュッキーヒュッと変わった鳴き声が響くように聞こえてくるけど方向がよくわからない。

 そしてリネが喉を鳴らして唸り始めると、すぐにサンダーバードが姿を現す。

 ブブブブブブブと羽音を鳴らしてまるで巨大な蜂のような姿の鳥が、キーヒュッと私達に向かって鳴く。

 もっと鷹や鷲のような凛々しい姿を想像していたけど、見た目はちょっと可愛い気がする。

 でも殺すつもりでいかないと。


「リネ…いくよ!」


 リネがサンダーバードに向かって咆哮を放つと、素早い動きで雲の中に消える。

 そして周囲を旋回する鉄塊の一つに稲妻が走り、ダーンっという轟音と同時に突然頭上に現れた鋭い嘴が迫ってきて、私は咄嗟に左下から居合いのように刀を斬り上げる。

 しかし、サンダーバードは瞬時に後退してまた雲の中に消え、そこかしこからゴロゴロと雷鳴が響いて羽音が掻き消される。


「リネお願い!」


 刀を消して両手でしっかりリネに掴まると、リネが急旋回して加速してから急上昇を始め、足が寒さで刺すように痛み出すのを四つの鉄塊の操作に集中して紛らわしていると一瞬世界が真っ白になって雲の上に出る。

 息が苦しい。頭が少し締めつけられる。

 盾をばらばらに動かし続けているからだろうか。

 リネが身体を元の大きさに戻して、どこかに狙いを定めて今度は勢いよく急降下をして雲に飛び込んでいき、サンダーバードに向かって大きな口を開いて噛みつこうと肉薄する。

 それも難なくすり抜けるように避けて、また雲の奥に逃げようとするサンダーバードに向かってリネの背を駆け抜けて刀を霞の構えからサンダーバードの胴体を狙って突きを繰り出す。

 サンダーバードはそれすらも避けて回り込んで私に向かって嘴を伸ばし、私は魔力を全身に張り巡らせて身体を捻って嘴を斬り上げる。

 嘴が短くなったサンダーバードはキーヒュッキーヒュッと何度も鳴きながら不規則に飛び回りながら、周囲に稲妻を走らせ、私は危険に感じて刀を消す。

 するとサンダーバードは刀を警戒していたのか、消した途端に落下する私を追いかけながら啄んでくる。

 盾は大きなリネの方が雷が来そうだから今はリネの周囲から戻せない。仕方なく刀を出して牽制しながらリネが拾ってくれるのを信じて落ち続けていると、サンダーバードの背後から現れた牙が生えた大きな口がばくんと閉じられサンダーバードが雲の中に消え、リネはそんなことは意にも介さず私の下に入り込んで私を背に受け止めてくれる。


「ありがとうリネ。でも動きが速い…どうしよう…」


 二手に分かれるしかないだろうか。それ以外に作戦が思いつけない…。


「二手に分かれよう。私が囮になるから、匂いでサンダーバードの位置がわかるリネが隙を突いて仕留めて」


 私は鉄塊の一つに股がってリネの背から離れ刀を八相に構えると、リネは狼大に身体を縮めて、急旋回してわざと三つの鉄塊を振り切って急上昇する。きっと雲の上に出たんだ。

 私はありがたく三つの鉄塊を自分の周囲に旋回させるとまた鉄塊の一つに雷が落ち、その瞬間に横から突進してきたサンダーバードに突き飛ばされて空に放り出されて急いで出し直した鉄塊に股がった瞬間、激しい衝撃が身体を貫き、見渡す限りの花畑に来てしまう。


「戻らなきゃ…起きなきゃ落ちて死ぬ!」

「そうだよ!」

「ごめん!」


 突然現れたトーゴが私の頬を殴り、痛みと驚きで固まるとカリナからビンタが飛んできて、倒れ込んだ私をウィンが蹴り飛ばす。

 私の意識を失わせて夢から出そうという作戦なんだろうけど、みんな普通の子供の力しかなく、痛いけど気絶するほどじゃない。

 それと不安通り魔法じゃなくて自然の雷は無効化出来ないみたいだ。


「おれってこんなに弱かったのか…」

「私達普通の子供だし…」

「やっぱり駄目そう…」


 三人が落ち込みながら手を止める。


「勇者は?勇者なら…」

「入れ替われないか頑張ってる」

「くっそー…」

「歯、食い縛って!」


 ジュジュがどこからかそう叫ぶと、私目掛けて盾がすごい速度で降ってきて目の前が真っ暗になって、バサバサバタバタとケープがはためく音がして目が覚める。

 大丈夫、身体は動く。死んでもおかしくなかったはずだけど効きにくいんだろうか。

 鉄塊を出してすぐに掴まり、空中にぶら下がったところに突っ込んできたサンダーバードをギリギリまで引き付けて三つの鉄塊を盾にして出して衝突させ、怯んだ隙に刀を振り抜き胴に一太刀入ったところで、大きく叫ぶ。


「リネーーーーーーーーーーッ!!」


 叫びに答えた銀色の矢がサンダーバードの首を捉えて噛み千切り、サンダーバードが静かに落ちて雲の中に消えていく。


「リネ…下に何かある?大丈夫かな?」


 リネが慌てて急降下してサンダーバードを追っていき、私もとりあえず鉄塊に抱きつくようにして飛んでリネを追って雲を抜けるとサンダーバードをリネがくわえなおして降下する速度を落としてくれ、私はリネの背に飛び移る。

 やっぱり動物相手はリネに任せた方がいい。

 無事にリネが駐屯所正面の広場に着陸して、とりあえず戦いは一段落みたいだ。

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