いつ渡せるだろうか
「よし、後は食料庫にしまっておこう」
わふっと吠えるリネに木の実の籠を持ってもらい、私は茸の籠を持って食料庫に運び入れて、とりあえずリネの夜ご飯用に塊肉を出して台に置いておく。
アリシアさんもミミリさんもまだ戻って来ず、何か長い話し合いになっているみたいだ。
私が久しぶりに料理を作らないと。
パンはお昼に食べたのが最後だったみたいで残っていなかったので、とりあえず生地を捏ねて発酵のために鉄板に並べて置いておき、乾かないように濡らして絞った布を被せておき、食料庫からさっき採った茸達を持ってきて、洗ってから一口大に切って鍋に放り込んでいく。
後は鍋に水を汲んで火にかけ、布を取って生地が膨らんだのを確認して釜に鉄板ごと生地を入れて焼き始める。
「後はパンが焼けて、スープにいい感じにだしが出たら塩で味付けしようね」
わふっと返事をしてくれるリネを椅子に座って撫でながらのんびりいい匂いがしてくるのを待っていると、アリシアさんが入口から顔を覗かせる。
「ナズナさん、こちらにいらしたのですね」
「アリシアさん、お話は済んだんですか?」
「一応は…最終的には本番を見せるのは流石に早いのではとエリュさんが仰って、明日のハルメイニアの女の子用の講義はナズナさんは不参加になりました」
「師匠が帰ってきたんですか?」
「いいえ、保護者の意見も聞くべきだと主様が水晶玉で連絡を」
「そうですか…」
「料理をしてくださっていたのですか?」
アリシアさんが厨房の奥に進んで鍋と釜戸を確認する。
「とりあえず茸スープとパンを」
「いい香りですね」
「ミミリさんは帰られたのですか?」
「はい、遅くなってしまったと慌てて。また遊ぼうと仰ってましたよ」
「そうですか」
もう日も落ちてしまったし、急いで仲間の元に戻ったのだろう。
アリシアさんが手際よくサラダを拵え、よく焼けたパンを取り出してくれる。
私も茸スープを塩で味付けして完成させて木のボウルにとりあえず二つよそう。
「ありがとうございます。運んで食事にいたしましょう」
「はい」
料理を食堂のテーブルに運んで、アリシアさんとリネと仲良くいただきますを言ってから早速パンを食べてみる。
なんだかアリシアさんがいつも焼いてくれるものより固い気がするけど、今日のは上手くいった方な気がする。
「一人でも上手に焼けるようになりましたね。スープも美味しいです」
「ありがとうございます」
褒められて嬉しいけど顔が赤くなってないか恥ずかしくなってきてしまいつつも、食事を終える。
「ごちそうさまでした」
「そういえば木の実もたくさん拾ってきていましたね」
「はい、たくさんあるのでぜひお料理に使ってください」
「ではありがたく使わせていただきます。でも珍しいものもありましたけどよろしいのですか?」
「珍しいもの?」
「ロロトの実ですよ」
「一つは食べたので」
「そうですか?…いいことを思い出しました」
「いいこと?」
アリシアさんが楽しそうに笑みを浮かべる。
「お酒にしてエリュさんへの贈り物にしましょう」
「お酒?」
「切り分けて酒精の強いお酒に漬け込むと、とろっとした甘くて美味しい果実酒になるんです。お酒なら日持ちもしますからエリュさんがいつ仕事から帰ってきても大丈夫ですし、いかがでしょうか?」
師匠は幼い見た目に反してお酒に強くて好きなようだし、贈り物とかもしたことがない。
甘いものも嫌いじゃないし、いつもいろいろもらったり貸してもらうばかりだから、いいかもしれない。
「作ってみたいです」
「では厨房にいきましょう」
「はい!」
空の食器を持って三人で厨房に移り、食器を下げて、アリシアさんが材料を用意してくれる。
空の瓶、ロロトの実が二つ、お酒の瓶。お酒はリクウという名前の透明で酒精の強いお酒らしい。
「早速作業しましょう。まずはロロトの実の皮を剥いて半分に切って一口大にしてください」
「はい!」
ナイフで皮を剥いて、まな板の上に置いて半分に切り、中央の黒い種を取って、乳白色の柔らかい果肉を一口大に切り分ける。
「出来ました!」
「後は簡単です。切ったものを瓶に入れて、リクウを実が浸るくらい注いでしっかり瓶に栓をするだけです」
「わかりました!」
空の瓶に二つ分のロロトの実を入れて息を止めてリクウを注いでいき、実がお酒に浸ったところで止めてしっかり栓を閉める。
「あとは涼しい食料庫に隠して寝かせておきましょう。まずは十日後に一度様子を見て、透明なお酒が乳白色に変わっていたら、裏漉しをして更に五日ほど寝かせます」
「わかりました!」
食料庫の棚の下に瓶を隠しておき、アリシアさんがもしも誰かが見つけても大丈夫なように私の物だとわかるように乾燥したナズナの花をどこからか取り出して瓶に巻いて縛っておいてくれる。
「これで安心ですね。みなさん自分の物は三角帽子の中や自分の魔法空間にしまっていることがほとんどですが、私がしたように何かが巻かれていたり、掛けられている物をもしも見つけた時はそっとしておくのがいいです」
「わかりました」
「さて、まだ降りてこないようなので私は主様にご飯を届けて来ます。今日はもう大丈夫ですから、ナズナさんとリネさんはゆっくりしていてください」
「わかりました。お部屋に戻ろうか」
リネの背を撫でるとわふっと答えてくれて、アリシアさんと別れてリネと部屋に戻る。
灯りをつけてベッドに腰掛けて両手を広げると、リネが身体を縮めながら胸に飛び込んできて、それをベッドに横たわりつつしっかりと抱き止めてそのまま全身わしゃわしゃ撫で回す。
リネが甲高い声でくぅーんと鳴いて気持ち良さそうに身動ぎして顔の上に落としてしまう。
「わっぷ!ごめんリネ大丈夫?」
アンっと吠えてお返しだとばかりに私の顔をそのままぺろぺろと舐め回してきてくすぐったい。
「くふふ…あはははは!くすぐったいよぉ」
リネを顔の上から引き剥がしてぎゅっと抱き締める。
「あまり舐められ過ぎたらまたお風呂に入らないといけなくなっちゃうよ」
リネが今度は悲しげにくぅーんと喉を鳴らす。
「怒ってないよ。でもべたべたになっちゃうから、また明日ね」
ぽかぽかのリネを抱いているからか、ベッドに横になっているからか、いつもよりも早く眠たくなってきて、寝間着に着替えてベッドに入る。
最初はなんだか苦手だったワンピースのような寝間着も、メイド服のスカートに慣れたおかげか今ではなんともない。
「リネ灯り消すね」
紐を引いて灯りを消してリネを抱いたまま毛布にくるまる。
「明日はアルセルに行く用意しないとね。蜘蛛ちゃんとやっつけれるかな。でも捕まえてクエトゥさんを喜ばせてあげたいね」
アンとリネも返事をくれる。
でも用意といっても私の持ち物は必要最低限で特別用意するような物はない。
洞窟らしいので角灯の油をちゃんと忘れずに確認しておかないといけないくらいだろうか。
「リネおやすみ…」
一応は病み上がりだからか、部屋に閉じ籠っていて体力が落ちていたのか、すぐに眠りにつき夢を見ることもなく、すっきりとした朝を向かえ、一日の休養をいただいた翌朝、いつの間に覚えたのか旅行鞄を




