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unfading  作者: 人波夕日
魔法塾 1回生編
21/24

決勝戦 その1

日が変わって2月21日の午後2時前。

魔法塾で行われる『夏期入塾トーナメント』の決勝戦の舞台に夕斗ユウト達は訪れていた。

決勝の舞台は地下競技場である。地下競技場は2つあるが、決勝戦がどちらの競技場とは示されていなかった。なのでとりあえずエレベーター、階段から近い方の入り口を開けてみる。すると下階に競技場が見え、目の前はその競技場を横断するように通路が伸びていた。ちょうどこの通路を挟んで2つの競技場が隣接している感じとなっている。その通路も含め両方の競技場を囲むように柵が置かれており、観戦者がまばらに存在していた。

「思ったよりも人多いな・・・」

「そうだね。優勝がどのチームか塾生達も気になるんだろうね。それに他校の生徒が結構来ているっぽいね。これは意外だね」

来ている観戦者をよく見ると、先週のように一般人や魔法関係の者も多くいるが、それよりも多くの塾生が集まっていた。その中にはアユミの言うとおり他校の制服を着ている生徒がかなりの数存在している。下手をすると彼らはこの魔法塾全体の塾生数よりも多いかもしれない。以前、じんから他にも魔法塾の分校があるということを聞かされていたが彼らを見るのは初めてのことである。

そんなことを夕斗ユウトが考えているとアナウンスが入った。

「これから競技場を繋げますので通路にいる方は移動してください」

その指示に従い通路にいた観戦者たちが通路からはけた。

それを確認した試合場に降り立っている教員であろう人が通路の壁に手を触れ何事かを呟く。すると通路がみるみる内に小さくなって彼の手に収まった。彼が<規模変換魔法リサイズマジック>を使ったのだろう。

これにより横断するようにあった通路がなくなり2つの競技上が繋がり1つの競技場となった。

そして通路を取り払った彼のほかに競技場の入り口、つまり元北側の試合場と元南側の試合場の階段の前にそれぞれ1人ずつ教員がおり、彼ら3人が魔法を発動すると試合場は緑に覆われる森となった。この森を構成する木々は夕斗ユウト達の目線の高さあたりまで伸びるものもあり、下階からだと10メートル以上あると推定される。

先ほど真ん中にいた教員が通路があった位置にある梯子から観客席に上がってきて柵を魔法で取り付け対岸にいる教員に合図を送る。それに従い反対側の通路があった場所にも柵が取り付けられた。

「えー。お待たせしました。これより、『入塾期別夏期第二回魔法戦闘サバイバルゲームトーナメント』の決勝戦を行います。今回のフィールドは森林フィールドです。決勝戦は毎年の如く、これまでの試合の倍の大きさのフィールドで争ってもらいます」

放送が入り、ざわついていた会場が静まり返る。

「それでは選手の皆さん所定の位置に移動してください」

この指示に従い6人の選手がフィールドに降り立ち配置に着く為に移動する。

それと同時にスクリーンに両チームの情報などが示された。赤い防具をつけているチームは先週夕斗ユウト達が観戦した時に勝ったチームのようだ。春香ハルカ春明ハルアキ姉弟と寛太カンタの3人である。

もう一方の黒い防具をしているチームは男3人のチームで、身長順に時雄トキオ輝行テルユキ武正タケマサという名前らしい。しかし、見た目からは武正タケマサが一番体重があるように見える。

6人が所定の位置に着くと再びアナウンスが流れる。

「それでは、試合開始とします。何があってもこれが最後の試合となります。悔いを残さないように。始め!」

最後の言葉と同時にブザー音が鳴る。

こうして、104期生の『入塾期別夏期第二回魔法戦闘サバイバルゲームトーナメント』の決勝戦が始まった。




試合開始の合図とともに両チームが駆け出す。今回はフィールドが縦に長いため相手との距離がある。それに加え、森林フィールドなので位置取りも大切になってくる。

このフィールドの特徴としてはやはり、10メートル近くある木々があげられるだろう。しかし、木々が無く草原になっている場所がいくつも点在している格好となっている。選手たちのスタート地点もその1つであり、またその草原とは別に木々が倒れ苔が生えているところや、水が流れているところも存在し、場所により足場が異なるのも特徴の1つである。よって、このフィールドで勝つには視界の狭い森で相手をより早く見つけることと相手を自分の有利な場所に引き込む事が重要なのである。



赤チームは夕斗ユウト達が見ていた試合で繰り出した寛太カンタウォータと<規模変換魔法リサイズマジック>の合わせ技と春明ハルアキウィンドによる<風爆>を有効活用するために水が流れている開けた場所を目指す。

目的地に着いた寛太カンタは辿り着くやいなや聖水を水辺に流し手を付ける。すでに剣型のキーホルダーを武器の大きさにしている。このまま、それらをウォータで形成する蛇に乗せれば佐奈サナ達を屠った技が完成する。しかし、寛太カンタはまだ水を自分の周りに纏わせず、離れた位置でもウォータを維持させるために細い糸の様に自分の手と水辺を水で結び、森の中に隠れる。

それを周りを警戒しながら確認した春香ハルカがこの場所に敵をおびき寄せるべく森の中へと消えていった。寛太カンタ春明ハルアキは静かに彼女が敵を引き込んでくるのを息をひそめ待つ。



武正タケマサはその様子を遠くで自身に<擬態魔法ミメシス>をかけ木の上から眺めていた。

そこから少し離れてから向こうがこちらに気付いていないのを確認し、彼は<擬態魔法ミメシス>を解き左手に握られているビデオカメラと右手に握られている小型無線機をそれぞれ目、右耳に当てた。そして呟く。

「我の記憶を表し、飛ばせ」

彼が使った魔法は自分の記憶を映像、音声、文字などで再現する魔法<記録魔法レコード>の一部と通信などに使われる<発信魔法センダー>の合わせ技。これを使うことにより、ある一定範囲の人物に自分が見た記憶を送ることができる。ただし、受信機|(この場合魔法使用者が定め、聖水処理をしたある特定のもの)を定める必要があり、それを身に着けている人物にしか送ることができないのも特徴である。


「向こうだったか。やっぱり待ち構えてやがる」

赤チームが来るであろう候補は2カ所あった。そのうちの外れを引いたため時雄トキオは舌打ちをした。

「あー、気持ち悪っ!この頭に直接情報が入る感じ慣れねー。しっかし、携帯とか、カメラとか持ち込み可ならさー、直接中継すれば良いんじゃね?って思うの俺だけ?」

一方、輝行テルユキは頭を押さえながら時雄トキオに話しかけた。

「仕方ないだろ。ルール上、直接連絡が取れる物は持ちこんじゃダメなわけだし」

時雄トキオ輝行テルユキの質問に少しうっとうしそうな顔をした。

「いや、そうなんだけどさ。それはわかってるってー。だからそんな顔すんなって。でもこれって実戦的じゃないだろ?」

「だが、これが上が定めたことだ。従わなかったら失格だ」

「あー、やだやだ。早く卒業して自由にやりたいねー」

「ああ、ここでいい成績を残せばそれも夢じゃない。社会に出ても上はうるさいと思うがな」

「うし、なんか春香ハルカちゃんはこっちに向かって来てるっぽいし、攻撃開始として、ちゃちゃっと片付けるとしますか―」



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