意趣返し
大変お待たせしました!
とは言ってみたものの、待っている人いるのか?この作品?
階段を下りてリビングに入ると、テーブルの上に7人分の料理が置かれており湯気を立てていた。
「おかーさん。パスタはー?」
たしかにテーブルの上をよく見みると桃がリクエストしたパスタは並んでなかった。並んでいるのは煮込みハンバーグとご飯とスープだった。目聡い奴である。
「今、持っていくから手伝って。あ、みんなは座って待っていていいからね」
桜に言われ、桃が笑顔で台所に行くのを見ながら、みんなは席に腰を落ち着かせた。
そこに、桜と桃が台所から戻ってきた。桜はお盆を持っておりその上には人数分の麦茶が入っているコップがある。桃はお皿を1つ持っていた。
母娘はそれらをテーブルの上に置き席に着いた。桃が持っていたお皿の中身はパスタサラダだった。うまく皆の意見を取り入れたものだ。またそのせいではないだろうが、桜の料理は昼から結構な量であり手間がかかっているのがうかがえた。
「はい、みんな揃ったわね。じゃあ、いただきます」
それにあわせ、皆が手を合わせ「いただきます」と声を揃えた。
「みんなはどこまで話し合いが進んだの?」
と桜が昼食を食べている途中に皆に聞いてきた。
「一応、魔法の発動条件を確認するところまでは意見を出し合いました」
「うん。それで、どんなことが分かった?」
「講義で習ったことの確認みたいな感じでしたね。目を瞑り言葉を呟くことで発動したい魔法をイメージする」
「必ずその動作をしないといけないの?」
「いいえ、目を瞑るのと言葉を呟くのはどちらかだけで良いようです」
「・・・。それも講義で言ってたこと」
「他には?」
「あとは・・・。<飛行魔法>なら羽、<四大元素魔法>ならそれを媒介とするものが必要だってくらいかな?もちろんどれも処理済みのもの」
「うん、そうね。それであってる」
と頷き笑いながら桜は続けた。
「じゃあ、他の<上級魔法>に必要なものは?」
「今回の試合に出てきたのでいいですか?」
はい、と茜が手を挙げて質問した。
「ええ。じゃあ、まずは、今回<飛行魔法>の他にどんな魔法が使われていたかな?」
「えっと、、<浮遊魔法>と<擬態魔法>ね」
「他には?」
「うーん。思い浮かびませんね」
「みんなは?」
「それであってると思います」
「そう。じゃあ、それぞれに必要なものは何かな?」
「・・・。<浮遊魔法>に必要なものは空に漂うなら葉っぱやビニール袋。水に浮く場合なら釣りの浮きとかでも代用可能。<擬態魔法>は擬態する動物の一部なら何でもいいけど、カメレオンの皮が好まれてる」
「うん。正解。良くまとまってるわね」
その言葉に皆は満足そうな顔を浮かべた。
夕斗達は昼食を食べ終わったあと部屋に戻って話し合いを続けていた。
「じゃあ、続きと行きますか」
「えっと、次はなんだっけ?」
「<四大元素魔法>、<規模変換魔法>、<上級魔法>の差を見てどのように感じたか答えよ。ね」
「違いねー・・・。講義で習ったことを上げると、魔法の触媒が異なるよね。あとは発見、開発の違いだね」
「そうだね。触媒の違いだと<四大元素魔法>は処理を施した水、油、砂を触媒として水、風、火、土を操る魔法だね」
「<規模変換魔法>は対象に描いた陣がその触媒の役割をはたしているよね」
「・・・。<上級魔法>はそれぞれ固有の触媒を必要としている」
歩、茜、百合がそれぞれの魔法に使われる触媒を上げたが、これは夕斗が言った通り講義ですでに習っていることだ。なので、この課題の真意は他のところを指すのだろう。彼らはそれに頭を悩ませた。
「何を書けばいいんだろう?見て感じた違いだろう?」
夕斗が何度目かになる呟きを零した。もうかれこれ1時間以上たっていた。いまだ進展はない。
「そうなんだよねー。なんだろう?あ、たとえば触媒の使い方とか?」
「お?何それ?どういうこと?」
茜の思いつきに明が反応した。
「あ、いやね、触媒が違うから当たり前なのかもしれないけどさ・・・」
と茜が言いよどむ。
「気にせず話してみてよ」
歩が促す。
「勝手な思い付きよ?それでもいい?」
皆はそれに頷いた。茜のちょっとの思い付きが今の状況を打破するものにならないかという期待の目をして。
「んー。なんていうのかな?例えばさ、<四大元素魔法>を使うときは触媒を介して触媒自体が魔法の対象になるのよね。ほら、水なら水、火なら触媒の油からなる火、土なら土って具合に。まあ、風は空気だから処理の仕様がないからなんか若干異なるけど・・・」
「うん。それで?」
と誰ともなく先を促す。
「で、<規模変換魔法>は聖水で描いた陣が描かれた物質、又は聖水で濡れた手で触れた物質を対象としてるのよね。つまり、触媒である聖水じゃなくて触媒が触れているものに魔法をかけるのよ」
「え?それだと、<四大元素魔法>の風はこの部類に入らない?だって、触媒は聖水で濡れた手で触れた物を対象としてるよね。空気や風を物質って言っていいかどうかはわかんないけど・・・」
「そうなのよ。桃ちゃんの言うとおりなのよ。だからさっき言い淀んだのよ。まあ、ここまで言ったから最後まで続けるね。<上級魔法>は触媒が魔法の対象に触れてなくても効果を発揮するのよ。たとえば今回の試合だと姉弟の姉の方が使ってた鉄片にかけていた<擬態魔法>ね」
「あ~、あれか。沙紀って先輩がなんで驚いてるのかわからなかったけど、あの盾に<擬態魔法がかかっていたのか・・・」
明が議題と全く関係ないところに納得を示した。
「え!?何?あんた、あの鉄片が見えてたの?」
「ああ。それと、あれは<規模変換魔法>もかかってたぜ。だから、茜の今の話はやっぱ違うんじゃないかな。<規模変換魔法>も対象に触れなくてもかけられるっぽいしな」
何も難しいことじゃないよ、という感じで明は頷き茜の説を否定した。
「驚くことでもないよ。藤崎さんの時も明は最初から気づいていたから」
「へー。すごい才能ね。知らなかった」
「なんか、素直に褒められると照れるな・・・」
「まあ、いいわ。それは置いといて、私が思ったことはこんな感じなんだけど・・・。でも桃ちゃんと明に否定されちゃったし、やっぱり違ったかな?ははは・・・」
力なく茜が笑った。
「うーん。でもなんかそんな感じの事でいい気がするんだよね・・・」
「・・・。的は外れてないと思う」
「・・・まあ、感じたことを書けってことは正解があるわけでもないんだし、こんなもんでいいんじゃね?外れたからって落ち込むなって」
「そう、かな。明があたしを励ますなんて珍しいね」
明は照れているように言い訳をした。
「ん?そうか?うーん。じゃあさっき褒めてくれたお礼ということで」
「うん。ありがと」
そんなやり取りを眺めていた桃が昼前の意趣返しにとばかりにぼそりと呟いた。
「・・・。やっぱり2人って仲いいよね?」
「「そんなことないって!」」
2人は声をそろえてそれを否定した。




