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unfading  作者: 人波夕日
魔法塾 1回生編
19/24

発動条件

並木荘に辿り着くと、ちょうどユイが鍵を閉めているところだった。

「ただいま。ユイさん。今から仕事?」

「おかえり、夕斗ユウトモモ。いや、今日は私用だ」

と一言だけ交わし、夕斗ユウト達の級友については触れることなく彼らに会釈だけして、ユイは去って行った。

夕斗ユウトたちは扉の鍵を開け

『おじゃましまーす』『ただいま』

と声を上げたが誰もいないようだった。ユイが鍵をかけて出て行ったのだから当たり前のことなのだが・・・。

そして、一同は夕斗ユウトの部屋に入り、出したテーブルを囲んで座り一息ついた。6人も入ると少し狭い。

「それでさ、ユウト。さっきのお姉さん誰?」

アキラ夕斗ユウトに聞いた。たいてい、このメンバーの時は話始めるのがアキラであることが多い。

「ああ、今のはここの住人で親良唯シンラユイさん。クリアースの戦闘員だよ。そのパートナーもここに住んでるよ」

「へー。すごい美人だったね」

「・・・。かっこいい。男の中に交じって戦う女の人」

アカネ百合ユリが憧れるような顔をしていった。

「それでさー、パートナーは男の人?女の人?」

と憧れの顔とは一変させて、下世話な笑い顔を浮かべアカネが問いかけた。

「男の人だけど・・・。なに?その酔っ払いが人の恋愛沙汰に絡んでくるような笑み」

「いやー、なんていうの?命の危機の時とかに感じる、吊り橋効果?みたいなのあるのかなー、なんて思って・・・」

「いや、それはないと思うよ」

「なんで、そう言い切れるのよ?」

「2人は従姉弟なんだよ」

「それ、関係あるわけ?」

「所感なんだけどね。あの2人はそういう仲というより家族、兄弟みたいな感じがするんだよなー」

「ふーん。そして、そこで顔を一喜一憂させているモモちゃんはその従姉弟の弟さんが好き、と」

「へあ!?」

モモが声を上げ、顔を真っ赤にした。

それを見て、アカネがニヤニヤと笑っている。

「そ、そ、そんなことないよ!それにユイさんがいるし・・・」

「それは心配無いってユウトくんが言ってるじゃない」

「で、でも・・・。入る余地が無いというかなんというか・・・」

モモの声がどんどん小さくなる。それを見て

「はぁー。まあ、いっか。どうせ今日チョコ渡すんでしょ?その時にでも本人に聞いてみればいいのよ」

とコレ以上の追求を諦めたようにため息をついてアカネは話を打ち切った。

「あ、チョコ!そうだった!ちょっと待ってて」

夕斗ユウトの部屋からモモが逃げるように出ていった。

「ちょっと、イジメすぎじゃないのか?」

「ん?そー?ちゃんと逃げ道作ってあげたしいいんじゃない?」

アカネは悪びれることなく笑った。



モモが部屋に戻ってきて、みんなにバレンタインの友チョコを渡したあと、一同はそれを食べたながら本題に入ることにした。

「というわけで、今回のレポートのために話し合いをしたいと思う。レポートは各自もらったけども、タチバナ先生に聞いたところ、話あって班で提出でもいいらしいんだよ。今回のレポートの目的は魔法を実際に扱う前にどのようなものか把握し実感することだったでしょ?だから、みんながそれぞれどのように感じたのかが分かるようなレポートなら問題ないらしいんだ」

「なるほどね。それで、レポートに書く内容を話し合おうということになるのね」

「で、さっそくなんだけど、1つ目の課題からいいかな?」

「・・・。えっと・・・。2回生が魔法を発動する前にとっている行動を観察しまとめよ。だっけ?」

「そうだね。なにか思い当たる節ある?」

「あれだな。最初に<飛行魔法フライト>使った姉弟いただろ?」

「うん。彼女たちがどうしたの?」

「<飛行魔法フライト>を発動する時にさ、胸に手を当てて目を瞑ったんだよな。これ、何か関係あると思わないか?」

「たしかに・・・。2人して同じポーズとってた。手を胸に当てる前にポケットに手を入れて何か取り出したふうだったよ」

「・・・!<飛行魔法フライト>を使うには処理を施した鳥の羽が必要」

「なるほど、じゃあその時に取り出したのは鳥の羽ね」

「でも、おかしくない?」

モモが疑問の声を上げた。

「?何が?」

「だって、その姉弟と戦ってた女の先輩、魔法使うとき目なんて瞑ってなかったよ?」

「そうか?遠目だからよくわからなかっただけじゃないのか?」

「そんなことないって!実はあたし、今日見た試合を録画したんだよね。見てみる?絶対瞑ってないから!」



モモが言い張るので、その映像を投影機を使いテーブルに映し出してみた。すると、たしかに沙紀サキは目を閉じていなかった。そのかわりに彼女の口元が動いていることが確認できた。

「ほら、やっぱり!」

モモが胸をそらして鼻を膨らませた。

「ホントだったな・・・。疑って悪かった」

「でも、この映像のおかげてはっきりしたね。彼女は言葉にすることで、魔法に必要なイメージを作っているんだ」

「そうね。こっちの方が実践的って気がするわね。だって、相手から目を離す必要がないんだもの」

「・・・。でも、相当なセンスがいる」

「?なんで?」

「やっぱり、お前の座学の成績がいい理由がわからない・・・」

「なによー、あんたは理由わかんの?」

アキラの言葉にアカネは頬を膨らませた。

「いや、わからない・・・」

「ほらー」

「・・・。説明した方がいい?」

「お願い!百合ユリ

「・・・。分かった。魔法に必要なのはイメージと集中力でしょ?それには情報がたくさん入ってくる視界はノイズなの」

「でもさ、聴覚もたくさん情報拾うじゃないのか?そんなこと一概には言えないんじゃ・・・」

「・・・。そうかもしれないけど、聴覚は逆に自分の呟きを聞くことによってイメージをふくらますこともできるんだって。だから、初歩で習うのは目を瞑り、呟くことによって魔法を発動させる練習をするって講義で言ってたよ」

「うん。そこまでは覚えてる。で、どうして目を瞑るだけの方と、呟くだけの方だと呟いて魔法を発動させる方が難しいことになるの?今の話だと、どっちも一長一短よね?」

「・・・。それが、そうでもないんだよ。アカネちゃん。気になったから、そのことを先生にきいたんだよ。そしたら、目を瞑った方が魔法が発動しやすいんだって」

「なんでかなのか、先生言ってた?」

「・・・。うん。言ってた。試してみる?」

『試してみる?』

「・・・。そう。みんな今から私が言うものを想像してみて。まずは目を瞑って」

皆が百合ユリの言う通りに目を瞑る。

「・・・。いくよ。イルカ」

皆が頭にイルカを思い浮かべる。

「・・・。次は、目を開いて呟きながら思い浮かべてみて」

百合ユリは皆が目を開けたのを確認する」

「・・・。いくよ。カラス」

百合ユリ以外のメンバーがいっせいに呟く。

『カラス』

そのまましばらくたって百合ユリが口を開いた。

「・・・。どうだった?」

「どうだったって言われても・・・。」

「どっちの方が、はっきりと想像できた?」

「オレは目を瞑ったほうだな。みんなは?」

「ボクも同じだね」

「あたしもだ・・・」

「僕もだね」

「・・・。これが理由だって」

「なるほどね・・・」

「疑問が解消したところだし、話を進めよう」

こうして、6人はサクラに「お昼ご飯できたわよー」と呼ばれるまで話し合いを続けた。

第18部と第19部を一話にまとめて第18部にしました。

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