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解決篇


 時計の短針が、もうすぐ十二の文字を差そうとしている。

 弥生ちゃんたちの寝息が聞こえているのを確認して、わたしはそっと部屋を抜け出した。

 服装はパジャマ代わりのジャージと、Tシャツにカーディガンを引っかけただけ。だらしなさを極めに極めたこの格好はシスターにバレたら絶対に怒られる。そもそもこんな時間に寮から出ようとしてる時点で、見つかったら説教部屋行きは確定だ。

 ……でも、ロッテちゃんは今夜限定で大丈夫だといっていた。

 なにか根回ししてくれたのだろうか? 自信満々でいいきってたから、ホントに大丈夫なんだろうとは思うけど……やっぱり怖いものは怖い。

 電灯が照らすひと気のない廊下を、足音をたてないよう慎重に歩く。

 窓の外には、落ちた夜の帳が、静かにその闇を深めていた。





「……遅かったですね」


 待ち合わせ場所に辿り着くと、そこにはすでにロッテちゃんがいた。

 寮から校舎に向かう道の途中。彼女が持つランタンの優しい明かりが見えた時、全身を覆っていた強張りがゆるやかにほどけた。


「だって夜間の無断外出なんて、シスターに見つかったらめちゃくちゃ怒られるんだよ? 絶対バレないようにしないと……」

「大丈夫だといったでしょう。今夜の外出は理事長に話を通してあります。職員に見つかっても素通りされますよ」


 と、ロッテちゃんが呆れたようにいう。

 えええ、学院長を飛び越えて理事長にいっちゃったの? たかが七不思議の確認にそれはやりすぎじゃあ……なんて、わたしが慄いているうちにロッテちゃんはさっさと歩きだしてしまった。

 待ってー。


「本当にノロマですね貴女は。さっさとしてください。私は眠いんです」


 こちらを振り向くことなく、ロッテちゃんは吐き捨てるようにそういった。

 なんだか今夜はやけにご機嫌斜めだ。どうしたんだろう?

 不思議に思っていたわたしは、彼女の手が微かに震えていることに気づいた。

 ああ、そうか。――怖いんだ。

 急いでロッテちゃんに追いつくと、小さな掌をギュッと握った。

 淡い紫の瞳が驚きに見開かれる。咄嗟に振り払われそうになったその手を、わたしは決して離さなかった。

 彼女はあまり教会の外に出たがらなかった。それは、他人が怖いからではないだろうか? もし幽霊の類が怖いのなら、きっとあんな森の中で独りっきりでは過ごせないだろう。

 夜も更けた学院の中に人の気配はない。それでも、ロッテちゃんは震えを隠せないほど他人の存在が怖いんだ。

 理由はわからない。けど、いまはそれを知るより先にすることがある。


「……ごめん。無理させちゃったね」


 息をのむ音が聴こえた。

 同時に、繋いだ手を強く引かれる。


「無理などしていません。……手をはなしてください」

「――離さないよ」


 目を見て告げると、綺麗な顔がくしゃっと歪む。きっと、弱味を見せるのがイヤなんだろう。

 ……だけど。ごめん、ロッテちゃん。これだけはどうしても譲れない。


「わたしも暗いところ苦手なんだ。安心するから、繋いでてもいい?」


 きっと、こんな嘘なんて簡単に見破られてしまうだろう。

 それでも手を繋ぐと安心するのはホントだよ? 深い夜の闇の中、すぐ傍に温度を感じられることが、とても心強い。

 お互いが迷子にならないように。子供みたいに小さな手を強く握りしめて、にへっと笑った。

 もう諦めてね? ロッテちゃん。わたし、昔から笑って誤魔化すの得意なんだ。

 われながら間の抜けた顔で向かい合うことしばし。ふいに、ロッテちゃんがツンと顔を逸らした。


「……貴女はやっぱり変です。好きにしてください。私はもう知りません」

「うん。ありがと」


 お礼をいうと、ますます顔を逸らされた。怒ったかな? でも、ランタンの光に照らされた横顔がほんのりと赤くなっている。

 ……これは、照れてる? え、まさかのツンデレ? ……ねぇ、そういう可愛らしい属性ってどこで売ってるのかな。わたし、そういうのひとつも持ってないんだけど。超絶美少女で頭良くてツンデレとか、神様からどれだけ恩恵あたえられてるのさ。ズルい。


「……なんです?」

「これでロッテちゃんにお胸があったら、わたしは神様に決闘を申し込むところだったよ」

「意味がわかりません。早く手を離して頭の病院に行ってください」


 絶対イヤだ。わたしは繋いだ手を力いっぱい握りしめた。


「……それで、仲間外れの怪談に見当はついたんですか?」


 溜め息と共に、ついでといった様子で尋ねられた。


「うーん……たぶん、『秘密の話』じゃないかなぁと思うんだけど。なんか後づけっぽいし」

「自分で考えたいから教えるなといった割には、ずいぶんと安直な答えですね」


 呆れたような声が返ってくる。

 だって、いくら考えても思いつかなかったんだからしょうがない。

 早々に自分の解答権を放棄したわたしは、頼れる友達に丸投げすることにした。

 教えて、リーゼロッテ先生!


「……まず、この怪談をシスターたちは知りません。それを大前提に考えてください」

「え、なんで?」


 いきなり分からなかった。

 そんなことありえるの? わたしが通ってた中学校の先生たちは、学校の七不思議を知ってる人も結構いたよ?


「ここは腐ってもカトリック系を名乗る学校で、職員の大半は敬虔な信徒です。もし彼女たちが七不思議の存在を知ったら、『礼拝堂で怪奇現象が起こる』などとのたまう怪談を許すはずがありません。とっくの昔に禁止令を出しているでしょう」

「ああ、そっか……そういえば、礼拝堂の燭台にひとりでに火が点るって話があったね」


 たしかに、そんなことがシスターたちに知れたら大問題だ。気合の入った全体集会が一週間ほど開催されてしまう。


「じゃあ、『亡者の炎』が仲間外れの怪談なの?」

「いいえ、違います」


 ロッテちゃんはあっさりと首を振った。


「娯楽性だけを追求するような学校の怪談は、噂と同じで話の本筋にさも恐ろしげな装飾を盛りつけられ、時の流れと共に姿を変え、または違う話とすり替えられたりしながら、生徒たちの間で拡散していきます」


 儚く美しい横顔を眺めながら、わたしは淡々と紡がれる凪いだ声をきいていた。

 それはどこにでもある怪談や都市伝説なんてものの真相。幽霊の類を信じてないわけじゃないけど、ロッテちゃんの説明には説得力があった。


「それらはすべて、『聞く者を怖がらせる』という目的の下に語り継がれます。……ですが、あの学院の七不思議とやらの中には、目指す場所の異なる話が一つ混ぜられていました」

「それって、怖がらせるのが目的じゃないってこと?」

「正確には、生徒を怖がらせた先にある反応が目的、といったところでしょうか。――さぁ、着きましたよ」


 立ち止まったロッテちゃんは、そういって手にしたランタンを持ち上げてみせた。

 さっきから歩いていた場所は、学院の広い庭園の中。

 仄かな橙色の光に照らされたそれは――緑色の蔓と咲き誇るイングリッシュローズに覆われた通り抜けの壁だった。


「蔓薔薇の大アーチ……」


 夜闇に浮かぶその姿は、どこか不穏な気配を漂わせていて、わたしは思わず息をのんだ。

 明るい陽射しの下で見るとすごく綺麗なのに、時間によってこうも印象が変わるものなのか。夜に出掛けたことがないから知らなかった。


「じ、じゃあ、『月夜の異空間』が、仲間外れの怪談なの……?」

「そうです。……では、実際に体験してみましょうか」

「え?」

「今夜は満月です。確実に逸話通りの怪現象が起きるでしょう」

「え。……えっ!?」


 思わず変な声が出た。

 え? じゃあ、ここってホントに異空間と……?

 予想外の展開に立ち尽くすわたしを置き去りにして、ロッテちゃんはさっさと大アーチの入り口へと歩き出してしまった。

 ……なに? ホントに入るの? だって怪談が現実に起きるんでしょ?

 混乱したまま取り残されたわたしは、ふと、我に返って周りを見渡す。

 耳が痛くなるほどの静寂。しん、と静まり返った庭園は、人間なんて容易く飲み込んでしまいそうな暗闇に支配されていた。

 ほんの少し先も見通せない闇の中――ふいに、誰かの視線を感じた。

 きっと気のせいだ。そう思っていても、だんだんと背筋が冷たくなっていく。


「ま、待って……っ!」


 焦って小柄な友達を追いかける。

 呼ぶ声が震えてしまったのは、きっと仕方のないことだと思うんだよ。





「『月夜の異空間』とやらがどんな話だったか、覚えていますか?」


 追いついてホッと息を吐いたわたしに、ロッテちゃんはそう尋ねてきた。

 必死で肩を掴んだら鬱陶しそうな顔をされたけど、絶対に離さない。

 決意を固めつつ、質問された内容を思い出す。こう見えても記憶力には自信があるんだよね。えっと、『月夜の異空間』はたしか……。


「満月の夜は庭園の蔓薔薇に覆われた大アーチの中が異空間と繋がって、元の世界と連絡がとれなくなる……誰かの声が聴こえても、決して振り向いてはいけない……だったかな?」

「それでは一つ訊きますが、この中から元の世界と『連絡』がとれるか確認するために、コモモさんならどんな手段を使いますか?」

「連絡? そりゃあ、携帯だよ」

「はい。おそらく現代人の大半が、同じように『連絡しろ』といわれれば、まず手元にある通信手段を思い浮かべるでしょう。――それが、仲間外れの理由です」

「え、携帯が?」


 ロッテちゃんがコクッと頷いた。……どういうこと?

 意味が分からないまま、わたしはジャージのポケットから携帯を取り出した。長年愛用している白のガラケーは、表面に細かなキズがいくつもついている。よく落とすからね。ごめんね、それでも健気に働いてくれる君が大好きだよ。まだまだ最新機種には乗り換えないから、安心してね。アレ、操作とか難しそうだし。

 聖母のごとく慈愛に満ちた眼差しで歴戦の兵士じみた相棒を眺めると、やる気を誇示するようにアンテナを三本ともバッチリ立てていた。

 山の中なのにすごいよね。わたしのケータイはホントに優秀だ。

 ……なんて優越感は、すぐに打ち砕かれた。

 ブツリ、となんの前触れもなく、アンテナが消えた。代わりに映し出されたのは、丸っこい『圏外』の文字。

 まるで、見えないなにかが覆いかぶさったみたいに。わたしのケータイは、急に外界との繋がりを絶たれてしまった。


『蔦薔薇に覆われた大アーチの中が異空間と繋がって、元の世界と連絡がとれなくなる』


 ――ゾクッ、と悪寒がはしった。

 アーチの中を満たすのは、濃厚な闇。

 日中から陽が当たらないせいで冷えきった夜の空気が、硬直したわたしの首筋を撫でていく。粘りつくようなその感触は、なんだか酷く不快に感じられた。


「……どうしました?」


 前から訝しむような声が聞こえる。

 ……気づけば、ロッテちゃんが振り返ろうとしていた。


「ダメっ!」


 慌てて鋭く声をあげ、大アーチの出口へと駆けだした。すれ違いざまにロッテちゃんの手を握り、有無をいわせず引っ張って走る。

『――決して振り向いてはいけない』

 やけにおどろおどろしい声が頭の中で木霊する。

 どういう原理かわからない。けれど、もうこの中は異空間と繋がってしまった。

 いったい振り向いたらどうなるのか、調べておかなかったことをはげしく後悔した。


「ちょ……ま、まって……こら、手を離しなさい!」


 しかし、いまそんなことは後回しだ。後ろで大きな声が聞こえるけれど、手を離すなんて冗談じゃない。ロッテちゃんが異空間に取り残されてしまう。そんなのは絶対にイヤだ。

 がむしゃらに足を動かして、ようやく視界が開ける場所へと抜け出した。


「……で、出て、これた……?」


 おそるおそる周囲を見回す。そこは、アーチの中よりも微かに明るかった。

 上を向けばまん丸な月が見える。その仄かな光に照らされているのは、この二ヶ月ですっかり見慣れた広い庭園だった。

 ……ああ、帰ってこれた。

 安堵のあまり、その場でへたりこみそうになった。跳ねまわる心臓を抑えつけて、小さな友達を振り返る。ちゃんと、一緒に帰ってきてるよね?


「……てを……はなしなさい、と…………いった、でしょう……」


 ――ロッテちゃんは、なんだかぐったりしていた。

 ゼェゼェいいながら背中を丸め、肩を大きく上下させている。

 え? そんなにダメージ大きかった? だって、三十メートルくらいしかなかったよ?

 ……どれだけ体力ないんだろう。

 ロッテちゃんのあまりの運動不足っぷりに恐怖を忘れたわたしは、呼吸が楽になるよう華奢な背中を撫でた。


「……明日から、ちょっとずつ運動しようね?」

「よけいな……おせわです……!」


 怒られてしまった。

 大事だと思うんだけどなぁ、体力づくり。そんなんじゃ山なんて登れないよ?

 という発言はさらに怒られそうなので封印することにして、黙々と介抱し続けることしばし。なんとか回復したロッテちゃんは、不機嫌そうな顔のまま歩きだした。

 その先にあるのは蔓に覆われた大アーチ。

 え、また入るの? もうやめようよ……。


「まったく、コモモさんと行動していては身体がもちません。たまにはその足りない頭を使ってみたらどうなんです?」

「ね、ねぇ、もういいでしょ? この中に入るのはやめようよ」

「少しは人の話を聞いてください……入りませんよ。場所はもう把握しました」


 ……場所を把握した?

 意味が分からず首を傾げていると、アーチの外壁に沿って歩いていたロッテちゃんは蔓の茂みの中に手を突っ込みだした。


「さきほど、私は仲間外れの理由として通信機器の使用を挙げました」

「え。う、うん」

「では、生徒が学院に携帯電話の持ち込みを許されるようになったのは、いつのことかわかりますか」

「えっと、たしか四年前だって聞いたけど……」

「その通りです。つまり、他の怪談とは違って『月夜の異空間』が生まれ得るのは古くても四年前。加えて学院内での携帯電話の所持が常識ではなかった令嬢たちに違和感なく怪談を普及させるには、長い時間が必要だと推測されます。……なのに、貴女のクラスメートは当然のように大アーチの話を七不思議の一つに数えました。おかしいと思いませんか?」


 その言葉で、わたしはようやく「仲間外れ」の意味に気づいた。

 新しすぎるんだ。『月夜の異空間』は。

 学院に来るまでは携帯電話を使うのが当たり前だったけど、ここではちょっと前まで持ち込むことすらできなかったんだよね。ロッテちゃんにいわれるまで、まったく意識してなかった。


「婉曲な言い回しで紛らわせようとしていますが、電波を狂わせるくらいなら誰にでもできます――ああ、ありました」


 そういって、ロッテちゃんは茂みから手を引き抜いた。その掌には、光沢のない真っ黒な金属の塊が乗っていた。


「電波妨害装置――巷で携帯ジャマーと呼ばれる品ですね。安いものなら一般の学生のお小遣い程度でも余裕で買えます。ただ、そのほとんどが使用を違法とされるものばかりですが」


 ……もはや驚くしかなかった。

 え、じゃあ、さっき携帯が圏外になったのって、その機械のせい? ……わたし、めちゃくちゃ取り乱したんだけど。うわーうわー。

 さっきの自分の行動を思い出して、恥ずかしさのあまり頬が熱くなる。

 そんなわたしには見向きもせず、黒い塊についた汚れを払ったロッテちゃんは、ランタンを持って歩き出した。


「あれ、どこ行くの?」

「この怪談を生み出した者のところです」

「……え?」

「放置しようかとも思いましたが、気が変わりました。このままにしておくのは危険かもしれません」


 独りごとのように呟いたロッテちゃんは、そのまま振り返りもせずに校舎へと歩いていく。

 危険、ってどういうこと? 誰が危ないの?

 わたしがいくら尋ねても、隣を歩く雪の妖精さまはなぜか不機嫌な様子で、口を引き結んだままなにも教えてくれなかった。



                ◇◆◇◆◇◆◇◆



 深夜の旧校舎の空気は、やけに冷たく感じられた。

 しん、と静まった無音の空間。張り詰めた気配の中に、床板を踏む二つの足音がぎしぎしと響く。同じ真っ暗闇の中でも庭園より不気味に感じられるのは、ここが閉鎖された場所だからだろうか。

 随分と昔に建てられたというこの木造の旧校舎は、設計に著名な建築家が携わった貴重なものらしく、使われなくなったいまも当時の形のまま丁寧に保管されていた。

 ただ、老朽化が進んでいるので生徒の出入りは禁止。違反した者には厳しい罰が与えられるという。

 そんな立ち入り禁止の場所に侵入した罪悪感と相まって、階段をのぼる足が小刻みに震える。


「……コモモさんは、怪談を実現するという行為の目的はどこにあると思いますか?」


 ともすればギブアップしそうになるわたしを気遣ったのか、仕方なしといった様子でロッテちゃんが話しかけてくれた。これまた渋々といった風に手もつないでくれている。

 ごめんね。自分で思ってたよりもヘタレで。肝試しなんてしたことなかったんだよ。


「ええと……そこに人を近付かせたくないから、とか?」


 少し考えてから、思いついた答えを口にする。たしか、推理小説でそんな話があったはず。

 ありえない話じゃないよね。怪談を流した場所に死体が埋められてたりとか…………と、考えてたら気味が悪くなった。

 できるならもう帰りたい。言いだしっぺだから無理だけど。


「よく聞く話ですね。……ですが、それは本当に現実的な理由でしょうか?」

「どういうこと?」

「たとえば他人に見られたくないものをどこかに隠すとして、その場所の話題を口にしようと思いますか? わたしならまず考えません。人は『禁忌』に惹かれる生き物です。怪談や肝試しを好む人種だって存在するのに、わざわざ自ら注目される要素を作り出す者などいないでしょう。いるとすれば、それは現実の見えていない愚か者か、他人の迷惑が愉しくて仕方ない精神異常者です」


 うーん、相変わらず辛辣な物言いだ。いっそロッテちゃんらしいとすら思える。

 ……じゃあそのアイデアを思いついたわたしって愚か者か精神異常者なの?

 答えが怖くて聞けない質問は、胸の奥にそっと仕舞いこんで蓋をした。


「『月夜の異空間』は、特殊な装置を用意してまで生徒に興味を持たせようとした怪談。流した者はそれなりに考えを持って行動しています。では、製作者の目的はどこにあったのか? わたしは、その答えを『他の怪談を消すため』だと推測します」


 表情を変えないまま、ロッテちゃんは淡々と言葉を紡ぐ。

 踊り場の窓から射す月明かりに照らされた横顔は、神々しく感じられるほど美しかった。


「他の怪談を、消す?」

「はい。さっきいったように、他人に近づかれたくない場所があるのなら、そこが目立たないようにすればいいだけのこと。怪談の製作者は、『月夜の異空間』で上書きした新たな噂を流すことで、元からあった話を一つ消したのです」

「それって……」

「調べてみましたが、各地の七不思議というものが発生する場所にはいくつかの共通点があるようです。そのオーソドックスなパターンで、学院の怪談には登場しない場所……たとえば、標本のある科学準備室、銅像の置かれたグラウンド、生徒が立ち寄らない手洗い場。あるいは」


 言葉を切ったロッテちゃんは、足を止めて廊下の端にある部屋へとランタンの明かりを向けた。


「――夜、ひとりでにピアノの鳴る音楽室……なんて話も、ありましたね」






「あら、どうしたの? あなたたち……駄目じゃない。こんな時間に出歩いちゃ」


 軋むドアを開け、覗き込んだ薄暗い部屋には、人が立っていた。

 当たり前のようにわたしたちを出迎えて、いつもと変わらない表情で違反行為を叱るその人を、わたしはよく知っている。


「梨々子先生……」


 わたしたちのクラスの副担任で、生徒から人気の優しい音楽教諭。

 すっきりと整った美しい顔に穏やかな微笑をのせて、普段となにひとつ変わらない姿で、古坂梨々子先生が夜の中で立ち尽くしていた。


「あなたは高遠さんね。それに……」

「リーゼロッテです。フラウ・コサカ」


 先生の言葉を遮るように、ロッテちゃんは自ら名乗りをあげた。フラウ、は敬称みたいなものなのかな。たぶん、ドイツ語だと思うんだけど。


「ああ、あなたが……噂は聞いているわ。なにか事情があるのかもしれないけど、ちゃんと授業に出なくてはだめよ」

「ご親切にどうも。それより、夜中にこんな所でなにをしているんです? たしか旧校舎には職員も学院長の許可なく立ち入れないのでは?」

「ふふ、お散歩よ。教師だって人間だもの。たまに静かな場所で息抜きしたくなることもあるわ」


 そういって梨々子先生は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 儚げで、どこか蠱惑的な表情。そのとき、わたしはここにいる梨々子先生がいつもとまるで別人であるかのような錯覚を受けた。

 優しく微笑む顔は普段と変わらない。なのに、なんでだろう……?


「そのお散歩とやらは、満月の夜にはいつも?」

「あら、なんのことかしら」

「わざわざ貴女が日取りを指定したのは、なにか理由があるからではないかと思いまして」


 ロッテちゃんの言葉に、音楽室の空気がしんと静まりかえった。


「え……? ろ、ロッテちゃん。それって……」

「はい。『月夜の異空間』を作り出し、細工をして生徒に広めたのはそこのコサカ先生です」


 淡々とした口調でさらりと告げられる。

 え。梨々子先生が怪談を作ったって……ええっ!?


「面白いお話ね、リーゼロッテさん」

「そうでしょうか? 貴女の性格を考えれば、これ以外の答えなどないように思えますが」

「私の性格?」

「はい。……貴女は生徒が大切で誰にでも優しい大人といった役割を演じていますが、実際は自分が求めるもののことしか頭にない自己中心的な性格です。今も、仕掛けたトリックがバレたことすらどうでもいいと考えている。違いますか?」

「ちょっ、ろ、ロッテちゃん?! そんな言い方は……」


 慌てて友人の暴言を諫めようとしたわたしは、梨々子先生の唇がニィッと吊り上がるのを見てしまった。

 あ、あれ? 先生?


「一応聞いておくけど、証拠はあるのかしら?」

「庭園を管理している庭師にでも口を割らせましょうか。おそらく貴女が渡した金銭の百倍以上の額を私個人の口座から準備できますが」

「ふふ。手段は問わない、か……なるほど。あなたは私と同じね」

「不本意ですが。……だからこそ、貴女に釘を刺しにきました」


 愕然とするわたしを置き去りに、二人の会話はどんどん先へ進んでいく。

 ……なに? どういうこと? これは頭が悪いからついていけないの?

 そうではないと信じたいわたしは、とりあえずロッテちゃんに説明を要求することにした。


「ちょ、ちょっと待って! 一体どういうこと? 先生が自分のことしか興味ないって……す、すごく優しいんだよ? それに、みんなにも人気があるし……」

「優しくて生徒に人気の教師だからといって、必ずしも素晴らしい人格者であるとは限りません。憶えていますか? 貴女たちが怪談のことを注意されたとき、コサカ先生はこういったそうですね。『怖い話が苦手な人に無理やり聞かせてはいけない』、と」


 アメジストの瞳がスッと細められる。


「もし彼女が本当に生徒想いの聖職者であるならば、まず怯える少女に『そんな怪談なんて現実ではありえない』と声をかけるのが正解です。真偽はどうあれ、不安がっている生徒がいるならそちらを優先するでしょう。ですが、彼女の物言いはそんな生徒を無視して怪談を続けろといっているように聞こえる。それは彼女が生徒どころか他者にまるで興味のない人間であるからに他なりません」


 はっきりと言い切ったロッテちゃんは、視線を先生の方に戻した。

 ちょっと前までなら、信じられなかったと思う。すぐに謝罪して、この口の悪い友達を連れて音楽室から逃げ出していたはずだ。

 でも、いまは違う。

 ――だって、梨々子先生はとても楽しそうに笑っていたから。


「そこまで把握しているなら、もう真相も掴んでいるのかしら?」

「おおまかにですが……貴女が世界的なコンクールで受賞経験のあるピアニストであること。聖ルーティアに在学中、将来を有望視されたもう一人のピアニストがいたこと。二人の仲が決して悪くなかったことと、この旧校舎を取り壊す計画が持ち上がっていることなら把握しています」

「あら、ほとんど分かっているのね。大した情報網だわ」


 狼狽えることもなく、先生はあっけらかんと純粋な感嘆の声をあげてみせた。

 ロッテちゃんはわたしと別れてから数時間の間にそれらの情報を調べあげたんだから、ホントにスゴイと思う。わたしなんてこの旧校舎が取り壊される話すら知らなかったというのに。

 そういえば、教会の中に機材の配線でいっぱいになってる小部屋がひとつあったっけ。前に聞いたら「仕事で使っています」っていってたけど、あの何台も置いてあるパソコンで調べたんだろうか。

 先生もロッテちゃんも、なんのためにそこまでするの?


「高遠さんには理解できないかもしれないわね。……ここはね、私とお姉様がはじめて自由を得ることができた大切な場所なの。申し訳ないけど、なにも知らない他人になんか汚されたくないのよ。ましてや低俗な怪談に踊らされるお馬鹿さんたちには、なおさらね」


 くすくすと、子供みたいな笑い声を洩らす。

 知らない先生の姿。梨々子先生が生徒を悪くいうところなんて、わたしは一度も見たことがない。

 いつも優しくて、穏やかに笑っていて。誰にだって公平に接してくれる、素敵な先生だったのに。

 ……なのに、どこでこうなってしまったんだろう?

 つきん、と。胸の奥が微かに痛んだ。


「あの、ここでなにがあったんですか? 先生は……」

「あら。それは秘密よ、高遠さん。あなたにも他人に踏み入られたくない場所くらいあるでしょう? それはきっと心の中にある場所も同じはずだわ」

「貴女がどんな思い出を抱いているのかなど微塵も興味ありませんが、名実共にここは学院の所有物です。たとえ失くなるとしても、貴女が余計な行動を起こすのはお門違いですよ」


 ひどく平坦な、抑揚のない声でロッテちゃんがいう。だけど、そこにはほんの少しの怒りが滲んでいるように感じられた。


「随分と必死ね……大丈夫よ。私は教師を辞めるもの。ここが失くなるのなら、もう学院に留まる必要もないわ。あなたの大切なものにも手出しなんてしないから、安心なさいな」


 そういって、先生は白くて細い指をひらりと振った。


「でも、ひとつだけ忠告しておいてあげる。あなたの望みは決して叶わないものよ。その時になって傷つかないようにね、禁忌の森の亡霊さん?」

「……余計なお世話です」


 からかうような口調に憮然とした声が返って、音楽室は静まりかえる。

 ロッテちゃんの望みってなんだろう? 絶対に叶わないって、どうして?

 気になったけど、この場で面と向かって尋ねるのはなんだか憚られた。

 そうこうしている内に、先生はもう興味を失くした様子でこちらに背を向ける。


「さぁ、子供の寝る時間はとっくに過ぎてるわよ。早くベッドにお戻りなさい」


 それっきり、美しい音楽教諭は二度とこちらを向くことはなかった。



              ◇◆◇◆◇◆◇◆



「なぁ、聞いた? 古坂先生、学校やめるんだってさ」


 怪談事件の夜からしばらく経ったある日の昼下がり。猫みたいな眼を丸くした千尋ちゃんが、重大な秘密を打ち明けるようにそんな話を持ちかけてきた。


「あ、そうなんだ」

「なんだよ。小桃、知ってたのか?」

「え?」

「こももちゃん、あんまり驚いてないみたいだから……誰かから聞いてたの?」

「ち、違うよ。ビックリしすぎただけ。……そっか、梨々子先生やめちゃうんだ」


 まさか二人に真相を伝えるわけにもいかないので、わたしは慌てて話をはぐらかした。

 あの夜に起きたことは誰にもいっていない。特にいいふらす必要もないだろうと思ってる。


「急だよなー」

「やっぱり、寂しい?」

「そりゃまぁ……あー。いや、どうかな? 寂しいっていうほどあの先生と関わってなかったかも。いい先生だったのになんでだろ?」


 千尋ちゃんと弥生ちゃんは不思議そうに首を傾げている。

 その理由は、真相さえ知っていればすぐに理解できる。

 先生は適度に距離をとってたんだと思う。怪談を流しやすくするように、かといって、不必要に近づきすぎない距離感で。だからきっと、誰の心にも深く印象を残さないんだ。

 ロッテちゃんにいっていた「亡霊」という言葉は、ひょっとすると梨々子先生自身にも向けられていたのかもしれない。

 あれから一度も話をする機会がなかったから、確かめようもないんだけど。


「小桃ちゃん、大丈夫?」

「へ? なにが?」

「お前、ここのところたまにボーッとしてるだろ。なにかあったのか?」


 心配そうに二人がこちらを覗きこんできた。

 そんなにボケッとしてたかな? あんまり自分では意識してなかったけど、先生の一件でそれなりにダメージを受けていたのかもしれない。

 けど、友達を心配させたままじゃダメだよね。

 わたしは頭をフル回転させて、話をごまかすことにした。

「ううん、大丈夫だよ。ちょっと寝不足なだけ。ほら、春眠暁を覚えずっていうでしょ?」

「毎日平均八時間は寝てるくせにまだ寝不足なのかとか、そもそもいまは六月で春じゃないだろとか、色々といいたいことはあるけど、とにかく小桃がいつも通りで安心したよ」


 わたしの優しい気遣いは、二人に呆れられながら納得されるという斜め上の結末を迎えた。

 ……なんで?





 今日は土曜だったので、午前中で授業は終わり。明日は朝のミサが終われば一日中お休みだ。クラスのみんなもどこか浮かれた様子で他愛のない話に花を咲かせていた。ひょっとしたら麓の町に出掛けるのかな。そんな光景も、この二ヶ月ですっかりお馴染みとなった。

 わたしはといえば、やっぱりいつもと同じように森へ続く道を歩いていた。

 左手に二人分のお弁当。右手には、麦茶とあの子が大好きな冷やし飴の入った水筒を二つぶら提げて。

 午後の空く日は、二人でお昼ご飯を食べて、そのまま宿題をみてもらったりお茶したりしながら過ごすことが多い。日本語を習いだして一年のロッテちゃんに現国や古典を教わっていると、自分の人生の意味的なものを見失いかけるんだけどね。

 ロッテちゃんと過ごす時間は、わたしの存在意義の生き残りをかけた戦いの歴史でもある。


「はろー。わたしですよー」

「……遅かったですね」


 お決まりのやりとりを交わして、包みを広げる。お、今日は山菜おこわのおにぎりだ。鮭の切り身にだし巻き玉子、ほうれん草のおひたしも入ってる。デザートに涼しげな葛餅までついて、とっても風流。夏って感じだね。ロッテちゃんも相変わらずの無表情だけど、いそいそとお箸を手にとっていた。

 昼食が終わると、冷やし飴で喉を潤して一休み。

 二人とも長椅子に楽な姿勢で腰掛けて、窓から入り込む森の風に吹かれていた。

 ゆっくりとした時間の流れる中、ふと、頭にあった言葉を伝えることにした。


「ねぇ、ロッテちゃん」

「なんです? 先にいっておきますが、宿題の答えなら教えませんよ」

「ち、違うよ!」


 いきなり釘を刺しにこられた。どれだけ信用されてないんだろう。そんなズルした前科なんて……まぁ、二、三回くらいしかないよね。結局、ロッテちゃんは解き方を説明するだけで答えは教えてくれなかったんだけれども。


「そ、そうじゃなくて……あのさ、先生が『望みは絶対に叶わない』みたいなこといってたでしょ? ――あんなの、気にしなくていいよ。ロッテちゃんならきっとどんな夢でも叶えられるからさ。わたし、応援しちゃうよ?」


 照れ隠しにちょっとおどけて告げると、隣で小さく息を呑む音が聴こえた。

 それからはどちらも口を開かず、しん、と静まりかえった空気が流れる。

 あれ? なんか深刻な感じになっちゃった?

 ……マズい。そんなつもりじゃなかった。もっとこう、入りすぎた肩の力が抜けるように、リラックスさせてあげようと思ってたのに。

 焦ったわたしは、なんとか失態を取り返そうと慌ててフォローの言葉を探す。


「えっと、ええっと…………あ、そうだ! なんかさ、梨々子先生さ、ロッテちゃんのこと『亡霊』とかいってたでしょ? あれもなんか違うと思うんだよね〜。そういうおどろおどろしい感じじゃなくて。どっちかっていうと……教会の幽霊? みたいな。あ、それも優しいやつね!」

「…………貴女はなにをいってるんです?」


 ――それはわたし自身にもよく解らなかった。

 でも、横目でチラッと様子を窺うと、ちょっと雰囲気が和らいだように思える。

 ……ていうか、笑ってる気がするんだけど、わたしの見間違い?

 急いで顔を向けると、バッと音のしそうな勢いで顔を逸らされた。


「えーっ! なんで隠しちゃうのさー? 見せてよロッテちゃんプレミアムスマイル!」

「う、うるさい。黙りなさい」


 にべもなく突き放される。

 表情筋が硬いのか、ロッテちゃんが笑うことって少ないんだよね。せっかく透明度全開の幻の微笑を見れるところだったのに……。今日はその貴重な瞬間を見逃してしまった。


「やさしい幽霊、ですか……」


 悔しさのあまり項垂れていると、ふいに、そんな呟きが耳に届いた。

 どこか満足気な声。言葉の余韻を楽しむように、ロッテちゃんはぼうっと荘厳なステンドグラスを見上げていた。

 昼下がりの陽射しに照らされたその表情が、あまりにも綺麗で。同性であることも忘れて、わたしは思わずその横顔に見惚れてしまう。

 『芸術』なんて言葉が霞んでしまうほどの、幻想的な美しさ。なのに、彼女は日本語ペラペラの和食好きで――とっても寂しがり屋の、どこにでもいるような普通の女の子だ。


「ふふっ」

「ちょ……重いんですが」


 苦情が聞こえる。けど、聞こえないことにした。わたしだって毎日のようにご飯を運んできてるんだから、これくらい許されると思う。

 溜め息をついた雪の妖精に寄りかかるわたしの頬を、初夏の風がくすぐっていく。

 とっても気持ちいい。それに、ロッテちゃんはすごくいい香りがする。深い森の奥に人知れず咲く、気高い純白の花のような香り。

 満腹の心地よさも相まって、なんだか眠たくなってきた。


「コモモさん」

「うん?」

「……ずっと、一緒にいてくれますか?」

「うん。いいよー」


 尋ねられて、即答する。

 そんなの当たり前だ。もう友達なんだからさ。……いや、わたしたちの関係は、もう親友と呼んでもいいのかもしれない。だって、難解な事件も二人で解決した仲だし。ごはんだって毎日いっしょに食べてるもんね。


「……私の周りには、尽きぬ欲に塗れた愚かな人間しかいませんでした。私のことを利益を生む道具としか見ていない者、得体の知れぬ化け物と恐れる者……でも、貴女は違う。貴女だけは、『私』を知ってもずっと変わらないままでいてくれた……」


 透き通った声が、切々と心の内側に秘められた言葉を紡ぐ。

 ちゃんときかなきゃ。そう思うのに、重くなった瞼はいうことをきいてくれない。

 また、起きたとき、もう一度話してくれないかな。

 そんなこといったら怒られるかも。


「ごめんなさい。……私は、きっと貴女を離してあげることができません」


 なんで謝るの? 一緒にいようよ。ロッテちゃんと一緒にいるの、わたしは全然イヤじゃないよ?

 ……そういってあげたくても、身体がまるで動かない。わたしの瞼は、もう完全に閉じきっていた。

 そのとき、ふいに花の香りが色濃くなった。


「――愛しています、コモモさん」


 うん。わたしも大好きだよ、ロッテちゃん。

 起きたらいっぱい遊ぼう。二人で、いろんな話をたくさんしようね……。



 ゆっくりと優しい闇が広がっていくなか、唇の端に柔らかいものが触れる。


 それがなんなのかも分からないまま――わたしの意識は、静かに眠りの世界へとおちていった。


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