第三十八章
ヴァルドゥスの王都は、彼らを家として迎えなかった。
都市としてさえ、迎えなかった。
機構として迎えた。
高い城壁、広い門、塔に掲げられた紋章、磨かれた鎧の衛兵、街道よりも荷車が滑らかに進む石畳、工房の看板、店、神殿、市場の喧騒、焼き菓子の匂い、馬の汗、高価な香水、そして人間の密集した匂い。
すべてが、アステルより大きく、豊かで、清潔で、張り詰めていた。
アステルは地下迷宮の隣で生きているから、もっとまっすぐに呼吸していた。あそこでは危険は日常で、粗く、分かりやすかった。魔物、依頼、傷、報酬、宿屋、家。
王都は、権力で呼吸していた。
ここでは、人々は武器だけでなく服を見る。顔だけでなく、所作を見る。一つ一つの仕草が何かを意味し得るし、たとえ意味していなくても、意味を読み取られ得る。
リニは第一の荷車に、ひどく背筋を伸ばして座っていた。
伸ばしすぎるほどに。
杖はそばに置かれ、指は落ち着いていた。けれど彼女の中のすべてが別物になっていた。メイでさえそれを感じ取って、冗談を言わなかった。普段なら、他人の緊張を見ると、むしろ指で突きたくなるのに。
「家に帰ってきた?」
アイリが静かに尋ねた。
リニは彼女を見た。
「分かりません」
「悪い答えね」
「正直な答えです」
アイリは頷いた。
「なら、良い答えね」
ヘラは王都の城壁を、ほどほどの軽蔑とともに眺めていた。
「人間は大きな石の箱を作って、大きければ永遠になると思いたがる」
甘いものの袋のそばに座っていたシリアンが、鼻を鳴らした。
「私の世界でもそうよ」
「お前の世界では、少なくとも血で正直に書いてあるだろう」
「いつもではないわ。時には骨で」
ベラがため息をついた。
「お願いですから、門の前でそういう話をしないでください」
ノエルは、彼らが街へ入る前に、もう荷車から消えていた。歩行者と影の間へ溶け、周囲を確かめに行ったのだ。テリは通りを聞いていた。その顔を見れば分かった。音が多すぎる。足音、車輪、声、鈴、扉、屋根の鳥、壁際の衛兵。
メイは匂いを嗅いだ。
「金持ちの匂いがする」
「それはどういう匂いだ?」
彼が尋ねた。
「食べ物が多い。香水が多い。恐怖が多い。嘘が多い」
「とても王都らしい説明だな」
「努力してる」
隊商はまず、宮殿ではなく王都のギルドへ案内された。
それは救いだった。
短い間だけだが。
王都のギルドは、アステルの三倍ほど大きかった。柱のある石造りの建物、内庭、二階、依頼主用の別棟、高ランク用の別受付。そして広間にはあまりにも人が多く、メイは入口で早くも不機嫌そうに耳を動かした。
「うるさすぎる」
「ああ」
「押されたら噛んでいい?」
「駄目だ」
「すごく当然なら?」
「先に聞け」
「退屈な王都」
中央受付には、一人の少女が立っていた。
第一印象では、とても若い。小柄で、黒髪、整った前髪、大きく注意深い目。顔は生き生きして、少し鋭く、訪問者に微笑みながら書類を数え、隣の会話まで聞ける人間の表情をしていた。王都ギルドの制服は完璧に似合っていたが、指が動揺を裏切っていた。彼らを見た瞬間、帳簿のページをめくる速度が速くなりすぎたのだ。どうやら、多くを知っているらしかった。
「私はシモです」
彼女は顔を上げた。
そして、きっかり半秒だけ固まった。
次には仕事用の笑みが戻ったが、目はもうすべてを語っていた。
彼女は彼らを知っていた。
直接ではない。
噂で。
報告で。
話で。
そして、どうやらただ知っているだけではなかった。
憧れていた。
静かに、丁寧に。王都ギルドの受付で叫ぶことは許されないけれど、本当はものすごく叫びたい人間として。
「『死の静寂』の皆様ですか?」
彼女の声は、ほとんど震えなかった。
ほとんど。
「ああ」
彼が答えた。
シモは彼を見た。
次にリニを見た。
気づいた。
当然だ。
だが顔には出さなかった。
次にメイ、ベラ、テリ、シリアン、ヘラ、ノエル、アイリを見た。
新しい顔を見るたび、目が少しずつ大きくなっていったが、笑みは保っていた。
「ヴェイラン家の隊商と共に到着されたのですね?」
「そうだ。荷は届けた。アイクの盗賊団は壊滅。アイク本人も死亡。依頼の証明もある」
ヘラが無言で包んだ袋を受付台に置いた。
シモはそれを見た。
理解した。
少しだけ青ざめたが、後ずさりはしなかった。
良いギルド職員の訓練だった。
「証明……受理します。少々お待ちください」
彼女は上級職員を呼び、余計な動きなしで袋を渡し、隊商の書類を受け取り、印、記録、署名を照合した。その後、彼らがアイクから回収した書類を開いた。
「これも依頼関連ですか?」
「ああ。つながり、支払い、隊商の記録、後ろ盾の可能性がある」
シモの顔はすぐに真剣になった。
「閉鎖部署へ回します」
それから、耐えきれなかった。
ほんの少しだけ。
「すみません。皆様は本当に……マルブルクにいたのですか?」
メイは即座に笑った。
「うん」
シモは唾を飲み込んだ。
「エシュタルにも?」
ベラが柔らかく答えた。
「はい」
「それで、本当に皆様は……」
彼女は言葉を止めた。
職業意識が憧れに勝った。
「すみません。聞くべきではありませんでした」
シリアンが受付台へ身を寄せた。
「でも、とても聞きたい?」
シモは赤くなった。
「少しだけ」
アイリが彼女へ、温かく、ほとんど祝福のような微笑みを向けた。
「可愛いわ」
シモはさらに赤くなり、すぐ帳簿へ顔を伏せた。
彼は少女を救うことにした。
「依頼を完了し、今後の指示を受けたい。おそらく、宮殿で待たれている」
シモが顔を上げた。
そこで表情が変わった。
「はい。待たれています」
「もう?」
「謁見が予定されています」
「いつだ?」
彼女は紙を見た。
「ただちに」
沈黙。
リニがゆっくり息を吸った。
荷車で、道で、ギルドで積み上がってきたここ数日の緊張が、一瞬で一つの結び目になったのを、彼は感じた。
「ただちに」
彼は繰り返した。
シモは頷いた。
「王の官房から、今朝のうちに指示が来ています。『死の静寂』が到着し、依頼を提出し次第、遅滞なく宮殿へ案内するように、と」
メイが静かに言った。
「気に入らない」
「俺もだ」
彼は答えた。
シモは、もう彼らを憧れの相手として見ていなかった。
噂の英雄たちが今から、噂が政治になる場所へ向かうのだと理解している職員の顔だった。
「提出処理は急ぎます。報酬は後ほど用意されます。出口で、すでに迎えが待っています」
それから少し声を落とし、ほとんど職務外の声で言った。
「ご武運を」
リニは彼女を見た。
「ありがとう、シモ」
自分の名を継承者に呼ばれ、シモはびくりとした。
それから低く礼をした。だが広間でリニの正体を露骨に明かさないよう、礼は正式すぎない程度に留めた。
「ギルドへ、またお戻りください」
受付を通り過ぎる時、メイが彼女に片目をつぶった。
「今度、怖い話をしてあげる」
シモはぱっと輝き、それからすぐまた帳簿の後ろへ隠れた。
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謁見は、早くはなかった。
瞬時だった。
それが、何より不穏だった。
宮殿では、武装し、魔法的にも危険な九人組に対して本来すべきような検査は行われなかった。形式上、武器を預けるよう求められたが、書類と印章を短く確認した後、実際に預けさせられたのはあからさまな重武装だけで、大半の「個人装備」は持ったまま許された。ベラの塔盾は広間の入口に置くことになったが、空の手だからといって彼女が無武装になるわけではない。メイの見える短剣は取り上げられたが、爪は残った。ノエルのナイフもいくつか押収されたが、全部は見つからなかった。リニの杖に触れようとする者はいなかった。
シリアン、ヘラ、アイリは、また別の問題だった。
衛兵たちは、彼女たちから何を取り上げればいいのか分からなかった。
翼か。
角か。
竜の本質か。
神の権能か。
結局、彼女たちは通された。
馬鹿げた判断だった。
そして、唯一可能な判断だった。
ヴァルドゥス王は、小謁見の間で待っていた。
人を建築で押し潰すような巨大な儀礼用の広間ではない。小さい。だがそれでも、ここが家でも、ギルドでも、宿屋でもないと思い知らせるには十分な広さだった。磨かれた石、紋章、重い幕、二列の衛兵、壁際の顧問たち、豪奢さではなく国家の中心として置かれた、高い彫刻入りの玉座。
王は、最初に会った時より年老いて見えた。
あるいは、疲労が目立つようになっただけかもしれない。
背の高い男。こめかみに灰色の混じった髪、厳格な顔、リニと同じ目。ただしもっと重く、深く、締めつけられている。戦鎧は着ていない。だが玉座も彼の鎧の一部であるかのように座っていた。
そばの少し低い位置には王妃が立っていた。
青白く、美しく、柔らかな顔立ち。だがその目は、希望と義務と、息子を産めない不可能の間で長く生きてきた女の疲れを宿していた。彼女がリニを見る目で分かった。手紙を書いたのは王だ。だが、待っていたのは彼だけではなかった。
リニが一歩前へ出た。
少女としてではなく。
継承者として。
だが、最後には耐えきれず、礼法が求めるより少しだけ深く頭を下げた。
「父上」
王が立った。
一瞬、その顔から王が消えた。
ただの父親になった。
「リニ」
彼は近づこうとしたようだった。
近づかなかった。
玉座、広間、顧問たち、そして何年もの恐れが、足より早く二人の間に立った。
「元気そうだ」
「元気です」
「お前の成果は聞いている」
「私も、お手紙を受け取りました」
間。
準備もなく、彼らはすぐ本題へ入った。
王は彼へ視線を移した。
「我が娘を、予想より早く王都へ連れてきたな」
「アイクの一味を討つ依頼が、こちらの道へ続いていました」
「都合のいい偶然だ」
「とても」
壁際の顧問たちが身構えた。
王は含みを理解したが、広げなかった。
「盗賊団は壊滅したのか?」
「はい。アイクの首はギルドへ提出済みです。捕虜は解放しました。書類も渡しています。つながりの情報があるかもしれません」
王は壁際の一人へ短く頷いた。
その者が記録を取った。
「よい」
それから視線はまたリニへ戻った。
「娘よ。話さねばならぬ」
「はい」
「お前の制御は大きく向上した」
「はい」
「ハズレットは死んだ。だが彼の役割は……」
「ハズレット様だけではありません」
リニが遮った。
王が黙った。
広間が冷えた。
「何だと?」
リニは杖を握った。
「ハズレット様は始まりをくださいました。私を救い、彼を見つけ、知識、道、義務をくださいました。でも、今の制御はハズレット様から得たものではありません」
王はゆっくり彼を見た。
「この師匠からか?」
「はい」
「そして、そなたらの組から」
「私の家族からです」
リニは言った。
その言葉は、予想以上に重く広間へ落ちた。
何人かの顧問が顔を見合わせた。
王妃が目を伏せた。
王は身を固くした。
「家族とは、血と王冠だ」
リニの顔が青ざめた。
「違います」
「リニ」
「違います、父上。血と王冠は義務です。時には愛でもあります。時には檻です。でも家族とは、森へ、地下迷宮へ、戦いへ、恐怖へ、私の力の中へ、私を迎えに来てくれた人たちです。私を継承者や脅威としてだけ見ない人たちです」
「お前は継承者だ」
「知っています」
「唯一の継承者だ」
「知っています!」
声が割れた。
リニ自身も驚いたが、退かなかった。
「私はそれを一生知っていました。召使いたちがそばを通るのを恐れた時も、父上が私を見ながら、娘なのか災厄なのか決めかねていた時も、宮殿が私をそばに置けず、ハズレット様へ預けた時も!」
王は青ざめた。
怒りではない。
突き刺さったからだ。
「私は、お前を生かすために預けた。他の者を生かすために。お前が学ぶために」
「そして今は、十分に学んでまた都合よくなったから、取り戻したいのですか?」
「都合よく?」
王の声が硬くなった。
「お前は玉座を宿屋の椅子か何かのように語る。ヴァルドゥスには継承者が必要だ。評議会はお前を見ねばならぬ。宮廷は、お前が消えたわけではないと知らねばならぬ。隣接する諸家は、血筋が途切れていないと理解せねばならぬ。権力は、一人の娘の感情だけで保てるものではない。たとえその娘が、私の娘であってもだ」
「では、私の人生は?」
「お前の人生は、お前だけのものではない」
「そこです!」
リニはほとんど叫んだ。
「私は初めて、それが私のものになる場所を見つけたんです!」
彼は一歩前へ出た。
まだ介入はしない。
だが準備はした。
メイはもう拳を握っていた。
ベラは動かなかったが、肩が張り詰めたのが分かった。
テリは痛ましげにリニを見ていた。
ノエルは衛兵を測っていた。
シリアンは、すでに危険すぎる笑みを浮かべていた。
ヘラは玉座を見ていた。どれほど熱を入れれば溶けるか考えているようだったが、今はまだ抑えている。
アイリは、誰より静かだった。
王の声も高くなった。
「お前は、一年の自由を与えられた子供が、国家は待つべきだと決めたような口を利く!」
「私は、自分の家と愛を捨てたくない人間として話しています!」
それは響いた。
隠さずに。
覆いをかけずに。
王は鋭く彼を見た。
広間の誰かが息を呑んだ。
「愛」
王が言った。
その口から出た言葉は、ほとんど告発のようだった。
「はい」
リニは言った。
「愛です」
「自分より人生の長い男に。よそ者で、冒険者で、女たちに囲まれ、その中には……」
「お気をつけください」
彼が言った。
静かに。
だが、広間には聞こえた。
王が顔を向けた。
「私の広間で、私を脅すのか?」
「今は、これ以上その言葉を続けると、侮辱されるべきでない者たちを侮辱することになると警告しているだけです」
「彼女たちは、我が娘とその義務の間に立っている」
メイが一歩出た。
「私たちはリニの隣に立ってる」
衛兵が動いた。
ベラがわずかに手を上げ、メイを止めた。
リニはもう震えていた。
王もだ。
二人とも話していた。
そして互いの言葉を聞いていなかった。
彼には、それがほとんど目に見えるほど分かった。
リニは「私から家を奪わないで」と言っている。
王は「私は継承者であることを拒む」と聞いている。
王は「王国は未来なしでは生きられない」と言っている。
リニは「お前はまた人間ではなく、役割だ」と聞いている。
そして言葉を重ねるたび、二人は遠ざかっていった。
叫びへ。
痛みへ。
古い傷へ。
そこで、アイリが割って入った。
「なんて愚かなこと」
声は大きくなかった。
けれど広間は静まった。
彼女が叫んだからではない。
その声に、突然、従いたくなる何かが響いたからだ。
アイリは前へ出た。
白い髪、青い目、旅装。冠もなく、光もなく、神殿もない。
それでもその瞬間、彼女はこの広間より大きかった。
王は彼女を見た。
「そなたは?」
「アイリ」
彼女は言った。
「今はそれで十分よ」
王は目を細めた。
そこで、彼が変わった。
もしかすると、密偵がすでに彼女の正体について閉じた情報を運んでいたのかもしれない。
あるいは、ただそれを感じ取れるほど鋭かっただけかもしれない。
アイリは王と王妃を見た。
それから、あまりにも予想外のことを言ったので、シリアンでさえ笑みを消した。
「王都で愛の女神を敬うことを、あれほど堂々とやめるような真似をしなければ、あなたたちは、もしかすると不妊でここまで苦しまずに済んだかもしれないわ」
沈黙が変わった。
危険なものへ。
王妃が青ざめた。
王は固まった。
顧問たちは、それを冒涜だと怒るべきか迷っていた。なぜなら、それが本当に冒涜なのか確信が持てなかったからだ。
アイリは落ち着いて続けた。
「あなたたちの神殿には金は十分にある。蝋燭も十分。正しい言葉も十分。でも、本当の祈りは少ない。政治的に必要な継承者を求める願いが多すぎる。その子を宿すはずの女への愛が少なすぎる。義務としてではなく、生きた結びつきとしての欲が少なすぎる」
王妃がゆっくり顔を上げた。
その目には、羞恥、痛み、そして名づけることすら恐れている希望の間のものがあった。
王が掠れた声で言った。
「自分が何を言っているか、分かっているのか?」
アイリは微笑んだ。
「大半の者よりは」
「そなたは……」
「キパイリネに祈りなさい。正しく。評議会にでも、王朝にでも、空の玉座にでもなく。夫と妻として。祈りが本物なら、願いが国家だけでなく互いに向いているなら、それが問題を解くかもしれない」
彼女はリニを見た。
「そして将来、玉座の問題も」
リニは動かなかった。
理解していた。
全員が理解した。
王に息子が生まれれば、リニは唯一の継承者ではなくなる。
すぐ自由になるわけではない。
完全にでもない。
けれど、今すぐ宮殿へ戻るべきという問題の鋭さは失われる。評議会には別の血筋への希望が生まれる。王には、娘と国家をこれほど残酷に選ばずに済む余地が生まれる。
「保証できるように言うのだな」
王が言った。
アイリは首を横に振った。
「愛は保証ではないわ。女神にとってさえ。でも、冷たい計算より、真実の祈りの方が返事を得やすい」
王は彼女を長く見ていた。
とても長く。
それからゆっくり王妃へ顔を向けた。
そしてその時、謁見が始まって以来初めて、広間に国家ではなく、夫婦が見えた。
疲れた夫婦。
希望と失望をくぐり抜けてきた夫婦。
あまりにも多くの医師、顧問、儀式、計算、そして義務が寝台のそばに立ち、呼吸を邪魔した夜を重ねてきた夫婦。
王妃は、ほとんど分からないほど小さく頷いた。
顧問へではない。
広間へでもない。
彼へ。
王は目を閉じた。
開いた時、声はもう別物になっていた。
「リニ」
彼女がびくりとした。
「一年、待とう」
リニはすぐには理解できなかった。
「父上……」
「一年だ。お前は自分の組と師匠のもとに残る。訓練を続ける。力の制御と活動について報告を送る。一年後、また話す」
彼は間を置いた。
「何も変わらなければ」
その一言は、全員へ向けて言われた。
だが意味は明らかだった。
継承者が現れなければ。
祈りが結果を出さなければ。
王妃が身ごもらなければ。
リニは唾を飲み込んだ。
「ありがとうございます」
王は重い目で彼女を見た。
「お前を義務から解放するわけではない」
「分かっています」
「そして、彼に渡すわけでもない」
王は彼へ視線を移した。
「どうやら、お前が本当に強く、そして落ち着いていく場所へ置いておくのだ」
リニは目を閉じた。
「ありがとうございます、父上」
王は玉座に座り直した。
疲れていた。
とても。
「謁見は終わりだ。アイクの一味討伐の報酬と、アイクの首に懸けられた賞金は、ギルドを通じて渡される。彼から見つかった書類は調査する。王都を出るまで、望むなら宮殿に客間を用意する」
「ギルドに泊まります」
彼は言った。
王は、ほとんど笑いかけた。
「そうだろうと思った」
その時、王妃が突然一歩前へ出た。
彼の方ではない。
アイリの方へ。
彼女は深く頭を下げた。
「冒険者の女」に対する王妃の礼としては、深すぎるほどに。
「祈りが真実でなければならないのなら」
王妃は静かに言った。
「努力します」
アイリは柔らかく彼女の手に触れた。
「息子のために努力しないで。かつて心で選んだ男の隣にいる女であることを思い出しなさい。あとは、来るなら来るわ」
王妃は目を閉じた。
そして頷いた。
---
広間の扉を出てすぐには、誰も破裂しなかった。
最初は皆、黙って歩いていた。
その後、メイが鋭く息を吐いた。
「何だったの、あれ?」
「謁見だ」
彼が答えた。
「違う。あれ。祈りの話。息子の話。女神の話。一年の話」
シリアンがアイリへ顔を向けた。
「本当にできるの?」
アイリは微笑んだ。
そして歩き続けた。
「アイリ」
リニが言った。
「はい?」
「本気だったのですか?」
「何が?」
「とぼけないでください」
アイリは無邪気な顔で彼女を見た。
「私は愛の女神よ。愛について助言した。それだけで十分に本気ではないかしら?」
ヘラが目を細めた。
「王と王妃に世継ぎを授ける手助けをするのか?」
アイリは彼女を見た。
「祈りが真実なら、女神は聞くかもしれないわ」
「答えになっていない答えだ」
「ええ」
「神々め」
「竜だって曖昧に語るのが好きでしょう」
「竜は少なくとも、金が欲しい時は正直だ」
「神は誠実さを欲しがる。それぞれね」
メイがうめいた。
「言わない気だ」
ベラが静かに言った。
「でも、王は信じました」
「ああ」
彼が答えた。
「なぜですか?」
彼は閉じられた広間の扉を振り返った。
「信じたかったからだ。そしておそらく、彼女が何者かを理解したからだ」
アイリは少しだけ笑みを深めた。
だが何も言わなかった。
リニは彼の隣を歩いていた。解放されたわけではないが、空気を与えられた人間の顔だった。
一年。
永遠ではない。
解決でもない。
だが一年だ。
家での一年。
家族との一年。
訓練の一年。
次の会話までの一年。
時には猶予も勝利になる。
その後、彼女は母と話したいと願い出た。待つことになったのは、ほぼ一時間。戻ってきた時、リニの目は少し赤かったが、明らかに落ち着いていた。
ギルドへ戻る道は、少し混乱していた。
シモは入口の時点で彼らを見つけ、受付台の奥で跳ねるように立ち上がった。
「皆様……大丈夫でしたか?」
メイが親指を立てた。
「王は死ななかった」
シモは青ざめた。
「それは……良いことですか?」
「概ねな」
彼が答えた。
シモは、深掘りしない方がいいと判断したらしかった。
彼らは依頼完了の確認を受け取り、必要な帳簿に署名し、護衛依頼の一時完了印をもらい、宮殿の客間は断った。シモは、憧れの部分と職業人としての部分が必死に戦い、今のところ憧れが負けている目で彼らを見送った。
「死の静寂……」
彼女はほとんど音にならない声で囁いた。
テリがそれを聞き、彼女へ微笑んだ。
シモは危うく羽ペンを落としかけた。
夕方、彼らは外門まで軽い護衛つきで王都を出た。その先は自分たちだけだった。ヴェイランの隊商は王都に残り、荷は届けられ、仕事は終わっている。彼らはアステルへ戻ることになる。
家へ。
その言葉は今、特にはっきり響いた。
帰り道は軽かった。
危険が少なかったからではない。
リニが、また息をしていたからだ。
彼女は彼のそばを進み、ときどきただ黙って彼の手に触れた。彼がここにいることを確かめるように。
メイはいつもより多く冗談を言った。
ベラは大きく笑いはしなかったが、肩が緩んでいた。
テリは安心した目でリニを見ていた。
ノエルは道の端を保っていたが、必要以上に頻繁に戻ってきた。彼女もまた、あまり長く共同の温かさから外れたくないようだった。
シリアンは王妃に息子が生まれるのかをアイリから聞き出そうとしたが、女神はそのたびに話を甘いものへ逸らした。
ヘラはどうでもいいふりをしていたが、一度だけ言った。
「一年は良い猶予だ。一年あれば、多くを固められる」
彼は頷いた。
「ああ」
「あるいは壊せる」
「ヘラ」
「竜として言った。いつか来るかもしれないと分かっているなら、固める方がいい」
アイリは彼の少し後ろに座っていた。
普段より静かだった。
時々、自分だけで微笑んでいた。
時々、リニを見ていた。
時々、彼を。
そして視線が合うたび、その目には焚き火のそばで選んだあの言葉があった。
愛しい人。
いつも口にするわけではない。
だが今は、その言葉そのものが彼らと一緒に歩いているようだった。
---
家に着いたのは夕方だった。
アステルは王都よりも単純に彼らを迎えた。
粗く。
近しく。
街のざわめき、見慣れた通り、遠くに見えるギルドの看板、市場の焼き肉の匂い、屋根、壁、外れへ続く道。それらすべてが、もう彼らの帰還の線になっていた。
家はそこにあった。
木戸は閉まっている。
扉にはルシアの新しい書き置きがあった。
> 鼠、活発。
> 納屋の罠は文明への脅威として解除済み。
> ほかは無事。
> ル
メイが憤慨した。
「文明への脅威? 良い罠だったのに!」
納屋の足跡を調べたノエルが、静かに言った。
「良すぎました」
「裏切り者」
ベラが扉を開けた。
リニが最初に入り、敷居で止まった。
最初の時のようにではない。
客人としてでもない。
帰ってきた者として。
「ただいま」
彼女は言った。
そして今度、その声に恐れはほとんどなかった。
家はすぐに音で満ちた。
メイは鼠防衛を確認しに行った。
ベラは台所へ向かった。
テリは窓を開けた。
ノエルはマントを脱ぎ、もう自分の場所へ掛けた。
シリアンは甘いものの戸棚へ向かった。
ヘラは炉を確かめた。
リニは杖を壁際に置き、ようやく座ることを自分に許した。
アイリは扉のところに残った。
完全に外ではない。
だが、内側でもない。
彼女が現れた後の最初の夜のように。
彼は気づいた。
全員が気づいたが、誰も割って入らなかった。
彼は彼女へ近づいた。
アイリは彼を見た。
笑みはなかった。
そして尋ねもしなかった。
「お前は、たぶん自分で思っている以上にリニのためにした」
彼は言った。
「分かっているわ」
「王のためにも」
「たぶん」
「家族のためにも」
そこで彼女は固まった。
その言葉は偶然ではなかった。
何気なくでもなかった。
彼は手を上げ、彼女の頭に掌を置いた。
アイリは目を閉じた。
だが、すぐには閉じなかった。まず彼を見た。彼が何をしているのか理解しているかを、確かめるように。
理解していた。
「いい娘だ」
彼は静かに言った。
「おかえり。家へ。家族へ」
アイリは息を吸った。
とてもゆっくり。
あの湖の時のように。
遺跡で最初に触れられた時のように。
ただし今は、もっと深かった。
彼女は役割を奪わなかったからだ。
譲歩を勝ち取ったのではないからだ。
力で取らなかったからだ。
女神としての権能で押し通したわけではなかったからだ。
招き入れられたのだ。
最初にリニが近づき、アイリの手を取った。
「おかえりなさい」
メイが女神の肩を叩いた。
「これであんたも、うちの問題だね」
シリアンが微笑んだ。
「そして、うちの武器」
ヘラが訂正した。
「そして、うちの責任だ」
ベラが柔らかく言った。
「食卓の席も広げないといけませんね」
テリが付け加えた。
「巣も」
ノエルが静かに言った。
「まだ場所はあります」
アイリは目を開けた。
その目に涙が光っていた。
他人の涙を千年もの間知ってきた愛の女神は、自分の涙をどう扱えばいいのか、すぐには分からないようだった。
やがて彼女は笑った。
静かに。
信じられないように。
「あなたたち、家族に女神を受け入れたって分かっているの?」
メイが鼻を鳴らした。
「魔族と竜も受け入れたんだよ。調子に乗らないで」
ヘラが頷いた。
「それは本当だ」
シリアンが付け足した。
「それに、あなたは寝坊助だもの」
アイリは指で涙を拭い、彼を見た。
「愛しい人」
「ああ」
「これで、もう本当に」
彼は彼女の髪から手を離した。
「ああ。これで本当に」
窓の外では、アステルが暗くなっていった。
王都では、もしかすると王と王妃が、長い時間を経て初めて、継承者だけではなく、互いのために祈っているかもしれない。
宮殿では、顧問たちがもう推測を組み立てているに違いない。
ギルドでは、シモが職務上の規則を破らない範囲で、死の静寂を間近で見たと誰かに話そうとしているかもしれない。
ルシアは明日、報告を取りに来て、愛の女神がもうただの観察者ではないことを知るだろう。
そして家は、さらに狭くなった。
さらに危険になった。
さらに温かくなった。
メイの笑い、ベラのため息、リニの静かな声、テリの矢の音、ノエルの足音、シリアンの甘いもの、ヘラの火、アイリの濡れた目。
その間で、彼はふと理解した。問いが減ったわけではない。
だが、いちばん大事な問いへの答えはもうあった。
家族は、また増えた。




