第三十六章
二度目の野営の夜、彼は一人で野営地を離れた。
遠くではない。
焚き火のそばの声は聞こえるが、もう言葉までは聞き取れないくらい。木々の間に弱い橙色の火の斑点は見えるが、全員の存在を同時に肌で感じ続けなくて済むくらい。
隊商は、小さな湖のそばで止まっていた。なだらかな丘とまばらな森の間に、細長く横たわる湖だった。水は暗く、ほとんど黒かったが、岸の近くでは星をあまりにも澄んで映していて、湖が空へ落ちたのか、空が湖へ落ちたのか分からないほどだった。空気は湿気と草、馬、煙、そして遠い道の匂いがした。
彼は水際に立ち、腕を組んでいた。
考えていた。
あるいは、考えようとしていた。
王の手紙は荷物のどこかにある。それでも、懐に入れた石のように、ほとんど物理的な重さを持って感じられた。リニは一日中、落ち着いていた。ほとんど平静にすら見えた。だが彼には分かっていた。彼女が時々、王都の方角を見ることを。指が杖を握りしめることを。視線が内側へ沈むことを。そこでは、娘が継承者と争い、弟子が王女と争い、女が、かつて宮殿が扱い方を分からずハズレットへ預けた少女と争っている。
彼は、そういう問いが嫌いだった。
地図の上を指で示すようには扱えない。ノエルのように足跡を確かめることもできない。ベラのように盾で受け止め、敵を食い止めることもできない。ヘラのように焼くこともできない。シリアンとしたように、取引で済ませることもできない。愛の女神であるアイリでさえ、肩をすくめ、愛はすべてを知る権利を与えるものではない、と言っただけだった。
そして、腹立たしいことに、正しかった。
背後で草が静かに鳴った。
彼はすぐには振り向かなかった。
「一人でいたかったんだ」
「知っているわ」
アイリの声だった。
彼女は柔らかく、ほとんど音もなく近づいてきた。だが隠れてはいなかった。白い髪には星の光が絡まっている。肩には軽い旅用のマント。喉元は開いていた。青い目は、夜の中で少し暗く見えた。
「なら、どうして来た?」
「あなたが、一人でいることに力を入れすぎているから」
彼はようやく振り向いた。
「どういう意味だ?」
「休むために湖へ来たのではなく、問いの中へさらに深く潜るために来た人みたい、という意味」
「女神が観察しているのか?」
「女も見ているわ」
彼は黙った。
アイリは岸辺まで来て、隣に立ち、星の映る水面を見た。
「綺麗ね」
「空なら何千回も見てきただろう」
「こうではないわ」
「お前はそれをよく言うな」
「本当だからよ。上から世界の美しさを知ることと、草の上に裸足で立ち、水のそばにいることは、違うもの」
彼女はサンダルを脱ぎ、本当に濡れた草を裸足で踏んだ。冷たさに、少しだけ笑みを浮かべる。
「死すべき身体は、いつも自分がここにあることを思い出させるの。冷たさで、温かさで、空腹で、疲れで、欲で、眠気で、肩の痛みで、蜂蜜の味で、他人の視線の重さで」
「気に入っているのか?」
「とても」
「痛みまで?」
「小さなものなら、ええ。大きなものは、意味によるわ」
彼は彼女を見た。
アイリは静かに立っていた。だがその静けさには、以前の遊びだけではないものがあった。遺跡の後で、彼女は変わった。急激にではない。もちろん、従順な死すべき少女になったわけではない。女神は女神のままだった。その視線には、あまりにも多くの他人の心を知る存在の、古い確信が宿っていた。
けれど、そこには今、別のものもあった。
期待。
祈りのようなものではない。
要求でもない。
個人的な期待だった。
「今日はいつもより口数が少なかったな」
彼が言うと、彼女は微笑んだ。
「つまり、気づいたのね」
「そこまで鈍くはない」
「疑い始めていたわ」
「それは遠回しな嫌味か?」
「あまり遠回しではないわね」
彼は息を吐いた。
「アイリ」
「何?」
「俺は、お前をどうすればいいのか分からない」
彼女は彼へ顔を向けた。
「とても人間らしい言葉ね」
「神々にはもっといい言葉があるのか?」
「神々はたいてい逆よ。死すべき者が頼んでもいないのに、自分たちは死すべき者をどうすればいいのか分かっている、と思っている」
「お前は?」
「私は来て、こうなると言った」
「ああ」
「厚かましく」
「ああ」
「無遠慮に」
「ああ」
「怒った?」
彼は考えた。
「いや。どちらかと言えば、戸惑った」
「招いていなかったから」
「ああ」
アイリは頷いた。
「あなたが『家族』と言わなかった時、それを理解したわ」
彼は身を固くした。
「あれは意識していた」
「知っている」
「それで?」
「正しかった」
予想外だった。
「本当に?」
「ええ。もしあなたがすぐ私を家族と呼んでいたら、その言葉は思っていたより安いのだと判断していたでしょう。でも安くない。もう見えているわ」
彼女は一歩近づいた。
「でも、あなたは残酷ね」
「何が?」
アイリはまっすぐ彼の目を見た。
「愛の女神を、愛なしで放っておくなんて」
彼はすぐには答えを見つけられなかった。
彼女は微笑んだ。だがその笑みは、もうからかいではなく、開かれたものだった。
「特に、あなた自身が私に触れた後ではね。私を力でも、神殿でも、祈りの中の名でもなく、あなたのリニを救った、ただのいい娘だと扱った後では」
「考えていなかった」
「知っているわ」
「だからこそ、か」
「だからこそよ」
彼女はさらに近づいた。
二人の間には、もう一歩にも満たない距離しかなかった。
「私は愛を知っている」
アイリは静かに言った。
「知っていた。見てきた。導いた。祝福した。時には呪いもした。笑った。誰かの心を通して泣いた。でも、あなたのそばにいると、それがひどく具体的になるの」
「ひどく?」
「ええ。自分のものにしたくなる枕。朝の粥。あなたの疲れた顔。メイが肉を盗むのに、あなたが気づかないふりをすること。リニが、あなたを北と南の両方みたいに見ること。あなたがノエルをいい娘だと呼ぶと、彼女が影ではなくなること。あなたが私に『ふさわしければ』と言って、私は一日中、ふさわしくなりたいのかもしれないと考えていたこと」
彼女は手を伸ばし、彼の胸に触れた。
軽く。
神の権能ではなく。
死すべき身体を持つ女の指で。
「これは、愛の女神にとって、とても不快な発見よ」
「職業的な誇りへの打撃みたいだな」
「ひどい打撃だわ」
彼は小さく笑った。
アイリが顔を上げた。
「それでも、私はここにいる」
「見えている」
「本当に?」
「ああ」
「なら、観察はもう十分よ」
彼女は自分から彼を抱きしめた。
急ではない。
だが迷いはなかった。
温かな身体を押しつけ、爪先立ちになり、口づけた。
最初、彼はまだ踏みとどまっていた。
ほんの一瞬。
たぶん、二瞬。
頭の中で、すべてが同時に燃え上がった。女神。組。家族。危険。結果。アイリは自分で来た。彼は家族とは言っていない。この先どうなる。何が正しい。何が理性的か。
それから、彼女の唇が本物になった。
象徴ではない。
問いでもない。
神の罠でもない。
ただ唇だった。
温かく、生きていて、求めてきて、彼女自身もどうやら初めて結末を知らないことに少し震えていた。
そして彼は耐えられなかった。
抱き返した。
アイリは口づけの中で息を吐いた。まるで、勝利ではなく、返事を待っていたのだと言うように。
二人は湖のそばの草の上へ沈んだ。
星の下で。
暗い空の反映が、弱い風に震える水際で。
彼はもう、王の手紙も、リニの夢も、不可能な過去の中のノエルも、アイクの待ち伏せも、自分のそばにすでに八人の女がいることも考えなかった。その一人一人が、別々の伝説の中心になり得ることも。
その夜は、アイリだけがいた。
神殿の女神ではない。
天上の力ではない。
観察者でもない。
死すべき身体を奇跡のように開いていき、崇拝ではなく返事を求める女だった。彼女は大胆なほど確信に満ちていたかと思えば、単純な感覚に思いがけず戸惑った。笑いは震えに変わり、囁きは口づけに変わり、他人の欲を知り慣れた習性は、自分自身の欲があまりに新しく、強く、生々しいものだったことの前で崩れていった。
星が湖に映っていた。
草は湿っていた。
彼女の白い髪が、彼の腕の中に広がっていた。
そして、やがて彼女が隣に座り、自分の呼吸と、彼の心音と、水辺の夜の音に耳を澄ませながら、ほとんど驚いたように言った。
「だから、死すべき者はおかしくなるのね」
「愛で?」
「愛が身体に収まってしまうことに」
彼は彼女の髪に指を通した。
今度は、意識して。
アイリは目を閉じた。
「今は言わないで」
彼には、何のことか分かった。
「分かった」
「言葉なしで、先に覚えたいの」
彼は黙って彼女を引き寄せた。
そしてしばらくの間、本当に言葉はなくなった。
---
三日目の道のりは、ほとんどそれまでと同じだった。
ほとんど。
荷車は軋む。
馬は鼻を鳴らす。
商会の護衛たちは、「死の静寂」の隣を進むことに怯えていないふりをし、第一の荷車にいる女たちを見すぎていないふりをしていた。
ノエルは前方や側面へ出て、短い報告を持って戻ってくる。
テリは道を聞いている。
ベラは休憩のたび、荷の固定具を確認する。
リニは杖をそばに置いているが、少し落ち着いて見えた。
メイはヘラから干し肉を一切れ盗み、竜式の所有権についての講義を受けかけた。
シリアンは甘いものを食べながら、アイリを新しい面白い菓子のような目で見ていた。
そしてアイリは。
アイリは変わっていた。
外見ではない。
外見は変わらず、白髪と青い目、整いすぎた顔立ち、神の力がなくとも人を振り向かせる歩き方を持つ美女だった。
だが内側で、何かが動いていた。
彼女は、誰彼かまわずからかうことが少なくなった。
彼を見る目は、研究者のものではなくなった。すでに触れてしまい、もうただの観察だと装えない者の目だった。
時々、指が自然と髪に触れる。遺跡の後の時と同じ場所に。
時々、自分だけの何かに微笑む。
時々、彼がリニと地図について話し、ベラと隊形について話している時、アイリは聞いているが口を挟まない。ただ、そばにいる。
もちろん、全員がすべて察した。
朝一番に見抜いたのはメイだった。
彼女はアイリを見て、彼を見て、もう一度アイリを見て、それから大きな声で言った。
「湖、綺麗だった?」
リニは、その質問と無関係なのに、一瞬で赤くなった。
ベラは重いため息をついた。
テリは笑みを隠した。
ノエルは横を向いたが、耳がわずかに動いた。
シリアンは目を輝かせた。
「なるほど。女神は、かなり近くで観察したのね」
ヘラが鼻を鳴らした。
「ようやく少し静かになった」
アイリはただ微笑んだ。
照れなかった。
だが、いつものように大胆な返しもしなかった。
それはどんな言葉より雄弁だった。
彼はメイを見た。
「始めるな」
「もう始めた」
「終われ」
「無理。家族の義務」
「お前は本当にどうしようもないな」
「役に立つ」
アイリが静かに言った。
「ええ。役に立つわ」
メイが目を細めた。
「あなたもこれから、そう言うの?」
「たぶん」
「ふうん。認める」
昼頃には冗談は落ち着いたが、感覚は残った。
彼らの奇妙な家族の内側に、もう一本の糸が張られた。
まだ完全には名づけられていない。
だが、もう本物だった。
---
待ち伏せは、夕方近くに感じ取った。
見つけたのではない。
まず、感じた。
道は、地図にあった石の峡谷地帯へ入った。左右に不規則な斜面が立ち、茂みと低い木に覆われている。ところどころ、灰色の岩が地面から突き出していて、弓兵には都合がよさそうだった。街道は狭まり、荷車は一列になり、速度は自然に落ちた。
ノエルが音もなく第一の荷車のそばに現れた。
それ自体が、すでに悪い兆候だった。
「前方に人がいます」
彼女は言った。
「匂いが多い。新しい足跡。弓兵が両側に。左斜面の方が近い。右は高い」
リニは目を閉じ、杖に触れた。
「魔法があります。二人。弱い戦闘魔導士か、呪術師かもしれません。一人は右。一人は中央のどこか」
テリが静かに付け加えた。
「金属音が聞こえます。前方に七人。後ろにもっといるかもしれません。呼吸が重い。一人、大柄です」
ノエル。
「全員ではありません。十五人くらい。もう少し多いかも。遮断役か、様子見です」
彼は頷いた。
荷車は進み続けた。
早く止まってはいけない。盗賊たちが気づかれたと知れば、待ち伏せは混乱した戦闘に崩れ、荷と御者に危険が及ぶ。
「ノエル、左斜面。静かに」
彼女は消えた。
「リニ、右の弓兵。音も光もなしで」
「はい、師匠」
「テリ、リニを援護。右に残った者がいたら落とせ」
テリは頷いた。
「メイ、右へ飛び出す準備。ベラは停止時に第一線。ヘラは俺と中央。シリは荷車の下の影、馬を狙わせるな。アイリは……」
彼は彼女を見た。
アイリは微笑んだ。
「観察?」
「今は」
「いいわ」
シリアンが静かに言った。
「観察者にしては満足しすぎているわね」
「今日はすべてに満足しているの」
アイリは答えた。
メイが吹き出した。
彼は聞かなかったふりをした。
右の高い斜面で、空気がかすかに揺れた。
リニの仕事は見事だった。
閃光はない。
雷鳴もない。
小さな空気の刃。喉への細い一撃。テリは荷車の幌の細い隙間から、ほとんど音もなく二本の矢を放った。一本は右の茂みへ。もう一本はさらに高い場所へ。そこでは誰かが動きかけていた。
左は、それすらなかった。
ノエルがただ消えた。
そして左斜面が静かになった。
第一の荷車が道をふさぐ一団に近づいた時、盗賊たちはまだ、自分たちの弓兵がもういないことに気づいていなかった。
七人が街道を横切るように立っていた。
前にいるのは、斧を持った大男。
幅広く、髭を生やし、頭を剃り、耳に輪をつけている。斧は両手持ちで、粗いが実用的だった。胸には金属板を打った革鎧。その横に六人。剣、槍、弩、一人は杖持ち。
彼らの後ろには、道をふさぐ丸太が倒されていた。
頭目が手を上げた。
第一の荷車の御者が手綱を引いた。
「さて」
大男が言った。
「ここまでだな」
声は大きく、自信に満ち、すでに結末を見て楽しんでいる人間のものだった。
彼が最初に荷車から降りた。
続いてベラ。
それからメイ。
ヘラ。
リニとテリも続いたが、出口のそばに残り、魔法と矢をすぐ撃てる位置にいた。
シリアンは影のように下りた。
アイリは最後に出た。
そして頭目は、当然、彼ではなく女たちを見た。
貪るように。
粗く。
あまりにも見慣れた目で。
「おお」
男が言った。
「今日は運がいい」
メイが低く唸った。
ヘラは怠そうな嫌悪を浮かべて彼を見た。
シリアンは微笑んだ。
リニの目が冷たくなる。
アイリの笑みが消えた。
盗賊の頭目は地面に唾を吐いた。
「荷と女どもを置いていけ。そうすりゃ、お前たちは帰してやる。生きたままな。賢くしてりゃ、裸にもしないでおいてやるかもしれん」
彼は一瞬、目を閉じた。
恐怖ではない。
疲れだった。
なぜ毎回なのか。
なぜ必ずなのか。
なぜ、斧を持った男は、目の前に力、魔法、盾、武器、自信、そして八人の女がいるのを見ても、最初に彼女たちを獲物だと考えるのか。
メイが言った。
「私がいい?」
アイリが一歩前へ出た。
「いいえ」
全員が彼女を見た。
頭目さえも。
愛の女神は、旅用のマントをまとい、白い髪を肩に流し、青い目に以前の柔らかさを消して、静かに立っていた。
「これは私が受け持つわ」
頭目は笑った。
「お前が? 白い美人さん、武器も持ってないじゃねえか」
「ええ」
「で、手で俺をどうにかするってか?」
アイリは自分の手を見た。
「ええ」
シリアンが静かに言った。
「もう気に入ったわ」
彼は言うのがやっとだった。
「一人は生かしておけ!」
その直後、戦いは始まる前にほとんど終わっていた。
アイリは頭目へ向かって歩いた。
走らない。
ただ歩いた。
男は斧を振りかぶった。大きく、強く、怖がった者を一撃で両断することに慣れた動きだった。ただし今回は殺すのではなく、気絶させるつもりらしい。アイリは、普通の意味では避けさえしなかった。彼の動きには、そもそも彼女がいる場所へ届く権利がないかのように、彼女は横にいた。
指が彼の手首に触れた。
斧が落ちた。
二度目の接触は、胸だった。
オーガの時とは違う。
もっと柔らかい。
それでも大男は膝をついた。顔は空白になり、次に衝撃を受け、最後にはほとんど恍惚としていた。
「あなたは女たちを奪おうとした」
アイリが静かに言った。
「欲するということが何かも知らずに」
男は彼女を見上げた。
そして泣いた。
痛みではない。
彼女が彼の心へ直接入れた何かのせいだった。あまりにも多い欲、恥、渇望、愛。彼がいつか、自分の中で歪ませ、欲望と暴力へ変えてしまったのかもしれないもの。
それから彼女は彼の額に掌を置いた。
男は顔から土へ倒れた。
他の者たちは、まともに反応する暇すらなかった。
ベラが一人を盾で打ち、その男は丸太へ吹き飛んだ。
メイは銀色の影のように二人の間を抜けた。一人は武器と指を失い、二人目は喉を失った。
ヘラが拳で地面を打つと、中央の魔導士の前に熱の壁が燃え上がった。男は叫び、杖を落とし、すぐに胸へ魔力を受けた。
テリは弩使いを射抜いた。
リニは槍持ちを空気で縛り、地面へ叩きつけ、息もできないほど押さえ込んだ。
シリアンは二人を影で捕まえ、彼を見て、命令を思い出し、二人の首を折る代わりに、一人を顔から地面へ、もう一人を岩へ投げつけた。
ヘラは、彼が生け捕りを叫んだのを聞いていたので、最後の盗賊へ上げた手を止め、ほとんど残念そうに息を吐き、ただ手刀をこめかみに叩き込んだ。
男は倒れた。
「生きている」
ヘラが言った。
「一人は、と頼んだな」
彼は道を見回した。
終わっていた。
呼吸数回分。生きている者は一人より多かった。各自が命令をそれぞれに解釈したからだ。
十五人。弓兵。魔導士。中央の遮断隊。それらが、御者たちがまともに怯える暇もないほど早く砕かれていた。
商会の護衛の一人が、土地のものらしい印を胸の前で切った。
メイがアイリを見た。
「殺してないの?」
アイリは頭目の上に立っていた。
男はまだ息をしていた。
悪い息ではあったが。
「ええ」
「何をしたの?」
「嘘のない自分の欲を見せたの」
シリアンが近づき、身体を眺めた。
「残酷ね」
「認めるの?」
「確認しているの」
頭目は明らかにアイクではなかった。
あまりにも粗い。あまりにも直線的。あまりにも前線に出すぎている。手下だ。強い戦士。待ち伏せ隊長かもしれない。だが、あれほど膨れ上がった盗賊団を街道から押し退けられないほど保っている男ではない。
「別の者が必要だ」
彼は言った。
「こいつは、話せる状態じゃないかもしれない」
ヘラが気絶した男を指した。
「こいつは生きている」
シリアンが微笑んだ。
「私が話させてもいいわ」
ヘラも微笑んだ。
「私でもいい。人間は骨の中に熱を感じると、早口になる」
捕虜は、ちょうどその言葉を聞くには完璧なタイミングで意識を取り戻しかけた。
目が見開かれた。
身をよじったが、ベラが彼の手のそばへ足を置いた。手の上ではない。そばに。だが意味は十分伝わった。
「アイクはどこだ?」
彼は尋ねた。
捕虜は血を吐いた。
「知らねえ」
シリアンが隣へしゃがんだ。
「退屈な嘘ね」
ヘラが首を傾けた。
「とても」
「私は指から始めてもいいわ」
シリアンが言った。
「指はありきたりだ」
ヘラが言った。
「歯を内側から熱する方がいい」
捕虜が青ざめた。
メイが興味深そうに言った。
「そんなことできるの?」
「できる」
ヘラが答えた。
「やめて」
アイリが言った。
全員が彼女を見た。
彼女は捕虜の前へ歩き、しゃがんだ。
「愛で足りるところに、残酷は要らないわ」
シリアンが目を回した。
「今から、吐き気がするほど綺麗なことが起こるわね」
アイリは捕虜を見た。
ただ見た。
そして彼らは初めて、彼女の神性を、オーガを一瞬で殺す力としてでも、盗賊の頭目への奇妙な一撃としてでもなく、最も恐ろしく剥き出しになった愛として見た。
光はない。
雷もない。
輝く翼もない。
ただ視線。
声。
存在。
「あなたの名前は?」
彼女が尋ねた。
捕虜は瞬いた。
「ラスト」
「ラスト、あなたは疲れているのね」
「はい……」
彼は自分が答えたことに、自分で驚いた。
アイリは微笑んだ。
「アイクが怖かった?」
「はい」
「話せば罰されるのが怖かった?」
「はい」
「今は、私を助けたい?」
捕虜は、世界が彼女の顔にまで狭まったような目で見ていた。
「はい」
「彼のところへ案内したい?」
「はい」
「いい子ね」
彼は幸せのあまり泣きそうになった。
メイが静かに口笛を吹いた。
ベラが緊張した。
リニは明らかに不安そうに見ていた。
テリは弓を握る手に力を込めた。
ノエルは完全に動かなくなった。
シリアンは笑うのをやめた。
ヘラがゆっくり息を吸った。
捕虜は自分で立ち上がった。手は震え、顔は血で汚れ、足もほとんど保っていなかった。それでも、アイリを崇拝にも似た準備のできた目で見ていた。それは美しく、同時に恐ろしかった。
恐怖ではない。
痛みでもない。
壊れたのでもない。
愛。
あるいは、愛の顔をした何か。
彼はどこへでも彼らを案内するだろう。誰でも売るだろう。彼女が望めば死ぬだろう。這ってでも彼女の前へ進み、彼女が満足するなら道を舐めて清めることすらしそうだった。
アイリは立ち上がった。
「彼が案内するわ」
シリアンが静かに言った。
「私の拷問の方が、もしかすると慈悲深かったかもしれないわね」
アイリは彼女へ顔を向けた。
「彼は苦しんでいないわ」
「だからよ」
その言葉は、思った以上に重く宙に残った。
彼は捕虜を見た。
アイリを見た。
自分の者たちを見た。
そうだ。
効率的だった。
清らかだった。
血もない。
悲鳴もない。
煙も、熱された歯もない。
それなのに、恐ろしくないわけではなかった。
おそらく、より恐ろしかった。
痛みは人に憎しみを残す。恐怖は抵抗の余地を残す。だがこれは、望まないという可能性そのものを奪っていた。
アイリは彼の視線に気づいた。
「私は彼を壊していないわ」
「違う」
彼は言った。
「でも?」
「後で話そう」
彼女は頷いた。
傷ついた様子はなかった。
また真剣になっていた。
「いいわ」
ラストはもう、彼女のわずかな合図を待っていた。
「案内して」
アイリが言った。
「はい、奥様」
彼は前へ歩き出した。
彼らがついてこられるよう、速くはない。
だが、その忠誠は、まるで愛の女神を自分の盗賊団の隠れ家へ案内することを、一生夢見ていたかのようだった。
ノエルが最初の影として後を追った。
メイが続いた。
彼は素早く指示を出した。負傷した盗賊たちを縛り、彼らの帰りを待たせる。
御者たちは黙っていた。
今見たものの後で、誰も口答えしなかった。
石の間の細い道を捕虜について進み始めた時、シリアンが彼の横に並び、小さな声で言った。
「これで、魔族がなぜ神々を嫌うか分かり始めた?」
「分かり始めた」
「私たちは少なくとも、痛みを与える時は正直よ」
反対側からヘラが付け加えた。
「竜は少なくとも、恐怖で奪うとき正直だ」
アイリは前方を歩いていた。
捕虜の隣に。
夕暮れの光を受けた白い髪。
軽い足取り。
そして、影でさえ明るすぎるように感じさせる力。
彼は彼女を見て、理解した。湖の夜は答えをくれなかった。
新しい問いを増やしただけだった。
だが今、前方にはアイクの一味がいた。




