第三十五章
「時々、宮殿で何かひどいことをしておけばよかったのではないかと思うんです」
リニが言った。
テリは、柔らかな布で丁寧に拭いていた矢から顔を上げた。
二人は共用の寝室の窓辺に座っていた。ほかの者たちは家のあちこちに散っている。下ではベラと彼が物資の一覧をめぐって言い合っていた。メイは、鼠狩りが立派な隠密訓練だとノエルに証明しようとしている。シリアンとヘラは、甘い焼き菓子と肉入りパイのどちらが上かを決めようとしていたが、その論争はもうずっと前から、本気の怒りのない悪口の応酬に変わっていた。アイリは台所の近くで、死すべき者の習慣について彼へまた何か質問しているらしく、その声には会話そのものを楽しむ響きがあまりにも多かった。
そしてリニは、父からの手紙を手にしていた。
読むのは一度目ではない。
十度目でもない。
彼女は、すべての行を、行と行の間のすべての間を、王が統治者として書きながら父として考えているすべての場所を、もう覚えていた。
「ひどいこと?」
テリが柔らかく聞き返した。
「はい。私の帰還という話そのものが、二度と持ち上がらないくらいのことです」
リニは歪んだ笑みを浮かべた。
「父上が私をハズレット様に預ける前に、広間を二つくらい吹き飛ばしておくべきでした。あるいは、うっかり評議員を蛙に変えるとか。北回廊の屋根を落とすとか。死人は出さないけれど、十分怖いことを。そうすれば皆、いいえ、あの子は山向こうの魔導士の塔で暮らして、年に一度手紙を書くくらいで十分です、と判断したでしょう」
「わざとなら、あなたにはできなかったでしょう」
「その頃は、できなかったでしょうね。今は……少し分かりません」
テリは矢を置いた。
「怖いから、そう言っているんです」
「もちろん怖いです」
リニは手紙を握りしめた。
「戻りたくありません。あんな形では。宮殿が、危険が少なくなったと判断したから、また取り上げる物みたいに。父上が怪物ではないことは分かっています。分かっています。父上は私を愛しています。でも、その愛の隣にはいつも、王冠、評議会、恐れ、そして『継承者』という言葉が立っているんです。ここでは、私はただ……」
彼女は言葉を止めた。
テリは待った。
「ここでは、リニでいられます」
「はい」
「過去へ戻って、自分に警告できないのが残念です」
テリが、ふと少し眉を寄せた。
理解できなかったからではない。
何か思いがけないものに、考えが引っかかったように。
「実は……原理的には、できるかもしれません」
リニはゆっくり顔を向けた。
「何ですか?」
テリ自身も自分の言葉に驚いているようだった。それでも続けた。
「戻る、という意味ではありません。身体で戻るのでも、手で過去を変えるのでもありません。でも、エルフには夢の話があります。普通にあることではないけれど、まったく珍しいとも言い切れません。時々、誰かが夢の中で、未来の自分を見るんです。あるいは自分自身の声を聞く。夢が、何をすべきか、あるいは何をしてはいけないかを告げるんです」
リニはますます注意深くテリを見た。
「予知夢ですか?」
「少し違います。まるで、自分自身から来るようなものです。神でも、精霊でも、祖先でもありません。未来のあなた自身が、過去のあなたの夢へ来るんです」
「理由も言うんですか?」
テリは首を横に振った。
「いいえ。そこが奇妙です。そういう夢では、ほとんど理由は語られません。何をすべきか、何をしてはいけないかだけです。時には映像。時には一言。時には感覚だけ。理由は伝えられないのかもしれません。あるいは目覚めた後に保てないのかもしれません」
「どうやって、そこへ行くんですか?」
「分かりません」
「でも、できると言いました」
「原理的には、と言いました。そういう夢が起きるなら、未来のあなたは何らかの形で過去の自分の夢へ届いたはずです。そうでなければ、どこから来たのか説明できません」
リニは黙った。
テリは少し気まずそうにした。
「私ができると言っているわけではありません」
「でも、エルフはそういう夢に従うんですか?」
「必ずではありません」
「役に立つんですか?」
テリは寂しそうに微笑んだ。
「それは誰にも分かりません。違う選択をしたらどうなっていたかは、知りようがありませんから。夢が川へ行くなと言って、行かずに生き残ったなら、そこには死があったのかもしれない。けれど何もなくて、ただ良い散歩を逃しただけかもしれない」
リニは窓の外を見た。
庭を。
家を。
もう失うことを恐れ始めている、その生活を。
「もし、試してみたら?」
テリは静かに答えた。
「その時は、私も一緒に試します」
「どうして?」
「一人では、もっと怖いからです」
リニは弱く微笑んだ。
「はい」
「それに、エルフの伝承なら、エルフがそばにいることで何か助けになるかもしれません。少なくとも邪魔にはならないようにします」
二人は、他の者たちより早く共用の寝室に横になった。
中央ではない。そこはメイがすでに未来のために枕の巣を準備していた場所だ。二人は窓に近い方へ寄った。リニは父の手紙をそばに置き、それからしまい、また取り出した。最後には、テリがその手紙を受け取り、丁寧に畳んで棚へ置いた。
「それと一緒では駄目です」
テリが言った。
「そうしないと、夢はあなたのことではなく、恐れのことになります」
リニは頷いた。
二人は隣り合って横になり、手をつないだ。
「何をすればいいんですか?」
リニが尋ねた。
「分かりません」
「素晴らしいですね」
「その頃の自分を思い出してみてください。ハズレット様の前。塔の前。彼の前。いちばんよく訓練していたのは、どこですか?」
「小さな東翼の裏の芝生です。古い白い石の円がありました。空気の魔法を訓練していました。ほかの魔法より、破壊が少なかったから」
「思い出してください」
「何を言えば?」
テリは彼女の手を少し握った。
「たぶん、いちばん大事なことを。全部ではなく。ただ、いちばん大事なことを」
リニは目を閉じた。
芝生。
白い石。
小さな東翼。
いつも強すぎる勢いで飛び出す空気。
内側の力に対して、あまりにも小さかった自分の手。
召使いたちの恐れ。
距離を置いた父。
まだ彼女を連れていっていないハズレット。
そして、あの時知っていれば、という思い。
夢はすぐには来なかった。
最初は、ただ普通の闇だった。
次に断片。下から聞こえるメイの声。ベラの足音。シリアンの笑い声。煙の匂い。手の中にあるテリの温かい指。
その後、突然、草があった。
太陽。
白い石。
リニは目を開けた。
そして、自分が立っていることに気づいた。
横になっていない。
ヴァルドゥス宮殿の小さな東翼の裏にある芝生に立っていた。
空気は夏のもので、軽く、夢とは思えないほどだった。草、日に温められた石、壁沿いの花壇の花の匂いがした。遠くで召使いたちの声が聞こえる。どこかで鳥が鳴いた。訓練用の白い石の円には、日差しが乗っていた。
隣にはテリがいた。
少しだけ半透明だった。
幽霊ではない。
けれど完全な身体でもない。
彼女は大きく目を開けて周囲を見ていた。
「できました」
リニは囁いた。
「そのようです」
「これは過去ですか?」
「あるいは、過去の夢です。分かりません」
白い石の円の中に、少女が立っていた。
十歳くらい、あるいはもう少し幼い。亜麻色の髪は三つ編みにされ、灰色の目は頑固なほど集中している。宮殿用にしては簡素な、訓練用の服。彼女の前には小さな葉が浮かんでいた。彼女はそれを空中に留めようとしていた。
葉は震えた。
次の瞬間、周囲の空気が跳ね、葉はあまりにも鋭く飛んで、茂みに突き刺さった。
少女は拳を握りしめた。
「また」
リニは自分自身を見ていた。
過去の自分を。
まだ森も、山も、メイも、ベラも、テリも、シリアンも、ヘラも、ノエルも、アイリも知らない自分。
彼も知らない自分。
胸が締めつけられた。
「本当に私です」
テリは答えなかった。
彼女は別の方を見ていた。
「リニ」
「何ですか?」
「誰か、ほかにもいます」
芝生の端、木陰に、もう一人の少女が座っていた。
淡い金髪。
痩せて、しなやかで、暗い目を持ち、耳が少しだけ尖っている。見た目は幼いリニとほとんど同じ年頃、あるいは少し上くらい。細い枝を手に持ってしゃがみ、訓練をじっと見ていた。
ノエル。
今のノエルではない。
別のノエル。
幼いノエル。
まだ空っぽではない。
まだ伯爵の刃ではない。
リニは凍りついた。
「ノエル?」
木陰の少女が、聞こえたかのように顔を上げた。
テリが青ざめた。
「私たちが見えるのですか?」
小さなリニも振り向いた。
「誰?」
夢が揺れた。
壊れたわけではない。
けれど薄くなった。
リニは一歩踏み出した。
「怖がらないで」
小さなリニは、まっすぐ彼女を見ていた。
驚いていた。
けれど怯えてはいなかった。
「あなた、私に似ています」
「私はあなたです」
少女は眉をひそめた。
「それは馬鹿げています」
テリが小さく言った。
「はい。間違いなくあなたです」
リニはもう少しで笑いそうになったが、できなかった。
幼いノエルが木陰から立ち上がった。
「これは夢?」
「私たちの夢です」
小さなリニが鋭く言った。
「ノエル、私の後ろに」
ノエルは素直に、しかしそれほど素早くはなく、近くへ歩み寄った。
リニは理解できずに彼女を見ていた。
「あなた……ここで何をしているんですか?」
ノエルは目を細めた。
「ここに住んでいます」
小さなリニが付け加えた。
「彼女の両親は父に仕えています。ノエルは時々、私の訓練を見に来るんです」
テリとリニは顔を見合わせた。
ここで、何かがおかしくなった。
ノエルはエシュタルにいるはずだった。
伯爵のところに。彼に捕らえられた両親のところに。少なくとも、あの破滅へ続くどこかに。
十年前、ヴァルドゥスの宮殿で、幼いリニのそばにいるはずがない。
「リニ」
テリが静かに言った。
「慎重に」
だが時間は少なかった。夢はもう端から震えている。遠くの石のそばの草が輪郭を失い始めていた。
幼いリニは、苛立ちを強めながら大人の自分を見ていた。
「夢なら、何か役に立つことを言ってください」
リニは口を開いた。
言うつもりだった。ハズレットのもとへ行く前に、何かひどいことをしろと。戻されるのを恐れられるようにしろと。問題が生まれる前に、その問題自体を壊せと。
けれど言葉は出なかった。
代わりに、彼女は幼い自分を見た。頑固で、孤独で、誰にも理解されない力を内に抱えすぎた自分を。
そして、彼女に「もっと恐ろしい存在になれ」とは言えないと悟った。
言えなかった。
「私の話を聞いて」
リニは早口で言った。
「あなたは壊れていません」
小さなリニが固まった。
「何?」
「あなたの中にある力が多すぎるだけです。それはあなたの罪ではありません。呪いでもありません。皆は制御を、抑え込むこと、慎重になること、恐れることとして教えようとするでしょう。それだけでは、いつもうまくいくとは限りません」
「では、何が助けになりますか?」
リニが手を少し上げると、地面の小石や木片がいくつか浮かび、手首の周りを回った。
「小さな形。違う物。一本の流れではなく、たくさんの小さな流れ。嵐をそのまま押さえ込もうとしないで。細い道を五つ作るんです。石、木、鉄、骨、硝子。重さも、密度も、形も違うものを。近くに保つ。力まないで、慣れるんです。呼吸のようになるまで」
小さなリニは、「気をつけろ」ではなく「可能だ」と初めて聞いたかのように、彼女を見ていた。
「誰が、それを教えてくれたんですか?」
その時、大人のリニの声が変わった。
「私の師匠です」
テリが彼女を見た。
リニはもう抑えずに続けた。
「彼ひとりで、世界より重い」
夢がさらに大きく揺れた。
小さなリニが赤くなった。
「師匠?」
「はい」
「世界より?」
「はい」
「私は、その人に会えますか?」
リニは一歩近づいた。
「いつか。あなたは必ずその人に会わなければなりません。怖がらないで。たとえ、その人が奇妙で、見知らぬよそ者のようで、あまりにも普通で、同時にあまりにも不可能に見えても。その人は、義務だからあなたを助けるのではありません。あなたを見るから、助けてくれます」
幼いノエルが突然尋ねた。
「私は?」
リニは彼女へ顔を向けた。
そしてまた、何を言えばいいのか分からなかった。
もしこれが過去で、もし本当にノエルがここにいて、もし両親が父に仕えているのなら。
「あなたも」
リニは言った。
「いつか闇の中にいることになったら、大切な人たちを首輪にしてあなたを縛る者を信じてはいけません。そして、もし彼に会ったら……」
夢に鋭い亀裂が走った。
テリが彼女の手を掴んだ。
「リニ!」
小さなリニが何か叫んでいたが、もう言葉は聞こえなかった。
白い石が溶けるように歪んだ。
芝生が光に引き伸ばされた。
リニはもう一度、いちばん大事なことを言おうとした。宮殿のこと。何かひどいことをしなければならないこと。帰還のこと。父の手紙のこと。
間に合わなかった。
夢は途切れた。
---
彼女は跳ね起きるように目を覚ました。
隣ではテリも勢いよく身を起こしていた。
二人はまだ手をつないでいた。
共用の寝室は暗く、弱い月明かりだけが床に落ちている。メイは枕に顔を埋め、巣の中央で眠っていた。シリアンが寝ぼけながら、蜂蜜の輪菓子について何か呟いた。ヘラは片目を開け、脅威がないと判断してまた閉じた。ノエルは壁際に座っていた。
眠っていなかった。
二人を見ていた。
「何がありましたか?」
彼女が静かに尋ねた。
リニはすぐには答えられなかった。
「あなたが、そこにいました」
ノエルが眉をひそめる。
「どこに?」
「夢の中。過去の中。宮殿に。あなたは小さかった。そこに住んでいると言いました。あなたの両親は私の父に仕えていると」
ノエルは固まった。
とてもゆっくりと。
「私は、ヴァルドゥスの宮殿に行ったことはありません」
テリは目を閉じた。
「では、何かがおかしい」
リニは座ったまま、自分の身体を抱きしめた。
「あるいは、夢は過去ではなかった」
「あるいは、過去が私たちの記憶と違うのかもしれません」
テリが言った。
ノエルは二人を見ていた。その顔には、またあの不安な空白が浮かんでいた。ただし、以前よりは弱い。
「私の両親は、ヴァルドゥス王に仕えてはいません。リアルダン国境の追跡者でした。少なくとも……私はそう覚えています」
リニは静かに言った。
「私には、あれが何だったのか分かりません」
ノエルは立ち上がった。
近づいた。
すぐではないが、近づいた。
「夢の中で、私はあなたのそばにいたのですか?」
「はい」
「あなたは、私に何か言いましたか?」
「もし闇の中にいることになったら、大切な人たちを首輪にしてあなたを縛る者を信じるなと。そして、もし彼に会ったら……」
「彼?」
リニは暗闇の中でも分かるほど赤くなった。
「はい」
ノエルは彼女を見た。
それから、とても静かに言った。
「最後まで聞けなかったのが、残念です」
---
朝、リニはアイリと話した。
すぐにではない。
まず朝食があった。アイリはまた、まだ目覚めきっていない顔で座り、早朝とは死すべき者の予定表の誤りだと皆に納得させようとしていた。次にメイの、納屋のそばの鼠の足跡が怪しいほど活発だという報告があった。その後、ベラが全員にまともな朝食を取らせた。ようやくその後で、リニはアイリを庭の方へ連れ出した。
彼は窓際に立っていて、全部ではないが、十分には聞こえた。
その後、リニが自分で説明してくれた。
アイリは最初、真剣に聞いていた。
いつものからかいはなかった。
リニが、未来から来る夢についてのエルフの伝承に触れた時、女神は鼻を鳴らした。
「ええ、その伝承なら知っているわ」
「本当に働くものなのですか?」
「働くものだと考えたことは一度もないわね」
リニは戸惑った。
「でも、私たちは夢へ入ったんです」
「あなたたちは夢へ入った。それが過去と同じとは限らないわ」
「テリは、エルフにはそういうことがあると言いました」
「エルフは長く生きるし、夢に運命の形を与えるのが好きだから、奇妙な夢を説明する美しい方法をたくさん持っているのよ」
「でも、もし私が自分に制御の方法を伝えたなら……」
そこでアイリは真面目になった。
「そこは面白いわ」
「どうしてですか?」
「もしあなたが本当に、あれほど重要な助言で過去を変えたなら、周囲の何かが変わっていてもおかしくないから。必ずしもすべてではない。でも痕跡はあるはずよ。あなたの力は違う形で伸びたかもしれない。ハズレットは別の教え方をしたかもしれない。父王はもっと早く、制御が可能だと理解したかもしれない。手紙の内容も違ったかもしれない。あなた自身が、幼い頃の奇妙な夢を覚えていてもよかった」
リニは黙った。
「覚えている?」
「いいえ」
「なら、夢は届かなかったか、あなたの過去ではなかったか、あるいはその変化は最初からあなたの歴史の一部だったか。その場合、問題はもっと悪くなるわ」
「悪く?」
「その場合、今のあなたの制御は、未来のあなたがすでに過去のあなたに手がかりを与えたから存在し、未来のあなたが手がかりを与えたのは、その制御が存在したから、ということになる。閉じた糸ね。神々はそういうものを好まない。世界は時々耐えるけれど、とても機嫌が悪くなる」
リニは自分の身体を抱きしめた。
「ノエルは?」
アイリは家の方を見た。
「そこが本当に奇妙ね。夢の中で彼女がヴァルドゥスの宮殿にいて、あなたの記憶にも彼女の記憶にもそんな事実がないなら、その夢には余分な要素が混じっている。あるいは余分ではなく、異物かもしれない。あなたは過去へではなく、過去、願い、恐れ、可能性が混ざった場所へ入ったのかもしれない。もしくは、誰か、あるいは何かが、あなたの試みを鏡として使ったのかもしれない」
「誰が?」
アイリは首を横に振った。
「分からないわ」
「女神でも分からないのですか?」
「愛の女神だからって、あなたたち家族が夜中に生み出す、ありとあらゆる信じがたい悪ふざけの相談役でいる義務はないのよ」
リニはほとんど笑いかけた。
ほとんど。
アイリは少し柔らかく続けた。
「でも、見なかったことにはしない方がいい。あの夢には何かがあった。ただ、それが何なのか分からないだけ」
「周囲は何も変わっていません」
「ええ」
「では、私は過去の自分を助けられなかった」
「そうとも限らないわ。助けは、思った場所とは違うところへ届くこともある」
「どこへ?」
アイリは、彼が立っている窓へ目を向けた。
そしてもちろん、彼が聞いていると分かっていた。
「もしかすると、『彼ひとりで、世界より重い。』と聞く必要があったのは、過去のあなたではないのかもしれないわね」
リニは耳まで赤くなった。
「アイリ!」
「何? 観察しているのよ」
「声が大きすぎます!」
「学んでいるところよ」
---
結局、王都へは行かなければならなくなった。
手紙が直接の理由ではなかった。
だからこそ、状況はさらに不快だった。
もし王がリニに宮殿へ来るよう直接命じていたなら、反論し、引き延ばし、返答を書き、条件を話し合い、時間を交渉することができた。だが手紙はほのめかしだった。そして依頼は別に来た。
翌日、ルシアが彼らをギルドへ呼んだ。
資料室へ。
もう悪い慣例になりつつあった。
卓の上には王都へ向かう道の地図と、襲撃についての報告書が数枚置かれていた。
カイレンもそこにいた。
「依頼があります」
ギルド長が言った。
メイがすぐ目を細めた。
「普通の? それとも、うちらにとっての普通?」
「あなたたちにとっての普通です」
「悪いね」
カイレンは地図を指した。
「王都街道で、アイクという男の盗賊団が勢力を広げています。最初は小規模な襲撃。その後、隊商。次に失踪者。今は古い石の峡谷の近くの道を実質的に支配しています。普通の部隊では見つけられないか、待ち伏せに遭う。商人たちは、もう軍隊級の護衛を要求しています」
「なぜ軍が出ないのですか?」
ベラが尋ねた。
「形式上、まだ反乱ではなく盗賊団だからです。地元当局が、それは誰の管轄かで揉めているからです。アイクが常に逃げるからです。そして王都の誰かが、『死の静寂』はどのみち王からの手紙を受け取ったのだから、道中の依頼を任せればいいと考えたからです」
リニが静かに言った。
「つまり、つながっているのですね」
カイレンは嘘をつかなかった。
「可能性はあります」
「でも、証明はできない」
「はい」
彼は地図を見た。
「護衛を装うのか?」
ルシアが頷いた。
「荷車は四台。積み荷は高価です。空の囮ではなく、本物です。錬金用の試薬、希少な布、金属のインゴット、王立工房へ運ぶ封印された箱が数個。安い荷ではありません。アイクが知れば食いつくでしょう。食いつかなくても、あなたたちは積み荷を王都まで運び、報酬を受け取ります」
「差出人は?」
「ヴェイラン商会です。ただし依頼は王の官房が確認しています」
シリアンが微笑んだ。
「本物の肉を入れた餌ね」
ヘラが頷いた。
「理にかなっている」
「危険です」
ベラが言った。
「だから、あなた方なのです」
カイレンが答えた。
ノエルは地図を見ていた。
「峡谷はここ、ここ、ここ。盗賊団が地形を知っているなら、襲撃は開けた街道ではありません」
「つまり、お前は荷車には乗らない」
彼が言った。
ノエルは頷いた。
「街道沿いの影を歩きます。時々、前方にも出ます」
テリも続けた。
「私は荷車の屋根か森の中から、音を聞けます」
「第一の荷車には、組全員が乗ることになっています」
ルシアが言った。
「少なくとも公式には。その方が商人たちは安心します。実際には、好きに配置してください」
アイリが手を上げた。
「王都には美味しい甘いものがありますか?」
全員が彼女を見た。
「何?」
女神が尋ねた。
「王都へ行くのでしょう。普通、王都は甘味を誇るものよ」
シリアンが元気になった。
「重要な質問ね」
カイレンは、とてもゆっくり彼を見た。
「愛の女神と元・世界破壊者が、アイク盗賊団討伐依頼の場で甘味について話しています」
「はい」
彼は言った。
「そして、これでも俺たちの中ではいちばん奇妙な出来事ではありません」
「まさにそれが、私を怖がらせます」
依頼は受けた。
王都へ行きたかったからではない。
拒否すれば、王の手紙がさらに重くなるからだ。
そしてアイクの盗賊団が、本当に街道を妨げていたからだ。
もし誰かが、現実の問題を利用して彼らを王都の方へ押しやろうとしているのだとしても、それはその問題を無視していい理由にはならなかった。
---
隊商は二日後の朝に出発した。
荷車は四台。
頑丈で、幌つきで、車軸も強化されている。それぞれに御者と、商会の護衛が一人ずつ。さらにヴェイラン商会から騎馬の斥候が二人ついていたが、見たところ、本物の待ち伏せより街道に慣れている者たちだった。
第一の荷車は、彼らに割り当てられた。
公式には護衛用。
実際には、商会の代表が、この女たちを別々の場所に座らせたら、どこからが危険でどこまでが安全か自分では把握できないと判断したからだった。
彼は前寄りに座った。
隣には杖を持ったリニ。
ベラは後ろの出口に近いところ。盾は、一動作で飛び出せる位置に立てかけてある。
メイはそもそも座っておらず、跳びかかる直前の獣のように半分横たわっていた。
テリは後ろの小窓に近い場所を取り、道の音を聞いていた。
ノエルは出発から一時間ほどで左手の林へ消えた。残したのは短い合図だけだった。見えている、進む、という意味の。
シリアンは荷車の陰に座り、すぐ甘いものを取り出した。
ヘラは、荷車の軋みそのものが自分を侮辱しているかのような顔で乗っていた。
アイリは彼の向かいに座った。
そして見ていた。
道ではない。
彼を。
ずっとではない。
だが、単なる観察にしては少し多すぎる頻度で。
彼はもちろん、ほとんど気づいていなかった。
地図、経路、あり得る待ち伏せ、王の手紙、リニ、アイク盗賊団、そして積み荷と一緒に三つほどの潜在的な災厄をどう王都まで運ぶかで頭がいっぱいだったからだ。
その代わり、ほかの者たちは気づいていた。
最初にメイが気づいた。
次にシリアン。
その次にテリ。
ベラはおそらくかなり早く気づいていたが、何も言わなかった。
ヘラは気づき、それを当然のことと判断した。
ノエルは短い休憩のたびに姿を現し、アイリを見て、彼を見て、メイを見て、どうやら素早く力関係を理解した。
リニは、軽い、優しい不安とともに気づいた。
アイリは、彼へ単純なことをますます頻繁に尋ねるようになった。
「なぜ、あなたは端に近いところに座るの?」
「最初に出るためだ」
「なぜベラではないの?」
「ベラは最初に出るのではなく、正しく出るべきだからだ」
ベラが頷いた。
「はい」
「なぜ道は一本なのに、地図を確認するの?」
「待ち伏せは、道が『一本』しかない場所を好むからだ」
「なぜ、昨夜も眠らなかったの?」
彼は顔を上げた。
「眠った」
メイが鼻を鳴らした。
「嘘」
アイリは微笑んだ。
「知っているわ」
「なら、なぜ聞く?」
「あなたが何と答えるのか聞くため」
シリアンが静かに言った。
「彼女は、勝手に知るのではなく、問いかけて返事を受け取ることを覚えているのね」
ヘラが付け加えた。
「女神が死すべき者になりすぎている」
アイリは二人を見た。
「羨ましい?」
シリアンは蜂蜜の菓子を食べた。
「いいえ。観察しているだけ」
ヘラは窓の外へ顔を向けた。
「竜は羨まない」
ちょうど開けた道の短い区間で荷車のそばに現れたノエルへ、メイが小声で囁いた。
「竜は、威厳たっぷりに嘘をつく」
ノエルはほとんど微笑んだ。
アイリには聞こえていた。
もちろん。
だが答えなかった。
彼女はまた彼を見た。
隊商が進めば進むほど、その視線の中には神の好奇心ではなく、もっと単純だからこそ危険な何かが増えていった。
彼以外の全員が、それを見ていた。
そして彼は前方の街道を見つめ、アイクがどこに待ち伏せを仕掛けるかを考えていた。
王都への道は、まだ始まったばかりだった。




