第15話 君の人生を、僕が奪わないために
翌日の放課後。
大学の中庭には、春の柔らかな風が吹いていた。
桜の花びらが舞い、ベンチの足元をかすめていく。
そんな穏やかな景色とは裏腹に、俺――黒瀬春馬の心は、朝からずっと落ち着かなかった。
手の中にあるスマートフォンには、つい先ほど届いたメッセージが表示されている。
『図書館の裏にいるよ』
美雪からの連絡だった。
『わかった。今から行く』
短く返信し、俺は図書館の裏手へと向かった。
昨日、蓮から持ちかけられた映像制作プロジェクト。
大学と映像制作会社が共同で進める、学生参加型のショートドラマ企画だ。
出演者はオーディションで選ばれ、合格すればプロのスタッフと一緒に作品を作ることになる。
蓮は、この機会を絶対に逃したくないと言っていた。
そして、俺にも一緒に出演してほしいと。
正直に言えば、俺だって興味がないわけではなかった。
演技を通じて、自分の気持ちを誰かに伝えられるかもしれない。
自分の経験が、誰かの心に届くかもしれない。
そう考えると、胸の奥が少しだけ熱くなった。
けれど、今の俺は美雪の身体で生活している。
この身体で得た評価は、周囲から見れば美雪自身の実績になる。
もし成功したとしても、俺が本当に望んでいる夢に近づけるわけではない。
反対に、失敗すれば、彼女の将来に影響を与えてしまう可能性だってある。
だからこそ、俺一人の判断で決めることはできなかった。
彼女の人生を、俺の都合で変えたくなかったからだ。
図書館の裏手に着くと、美雪はベンチに座っていた。
今の俺と同じ顔をした彼女が、こちらに気づいて手を振る。
「待たせた?」
「ううん。私も今来たところ」
俺たちは並んで腰を下ろした。
少しだけ距離を空けて。
身体が入れ替わってから、何度も顔を合わせている。
それなのに、こうして二人きりで向き合うと、いつも少し不思議な気持ちになる。
目の前にいるのは、間違いなく美雪だ。
けれど、その姿は俺自身のものだった。
自分の顔を通して、彼女の表情を見つめる。
こんな状況にも、少しずつ慣れてきたつもりだった。
それでも、慣れたくないこともある。
自分の気持ちを隠したまま、彼女の人生に関わり続けることだ。
「……映像企画のことなんだけど」
俺が切り出すと、美雪は小さくうなずいた。
「うん。詳しく聞かせて」
「大学と映像制作会社が一緒に進めている企画らしい。学生が出演するショートドラマで、オーディションもあるんだって。蓮から、一緒に出ないかって誘われた」
「あなたも出演するように勧められたんだね」
「そういうこと」
美雪は、しばらく考え込んでいた。
やがて、こちらを向いて尋ねる。
「……春馬は、どうしたいの?」
その問いに、俺はすぐには答えられなかった。
本当は、もう自分の気持ちに気づいていた。
やってみたい。
演技を通じて、自分の中にあるものを表現してみたい。
蓮と一緒に、一つの作品を作り上げてみたい。
そう思っていた。
けれど、それを口にすることが怖かった。
自分の望みを優先すれば、美雪の人生を勝手に使うことになるのではないか。
そんな考えが、どうしても頭から離れなかった。
「……美雪の人生に関わることだから、俺が勝手に決めるべきじゃないと思う」
ようやく口にした言葉は、自分でも驚くほど弱々しかった。
「もし俺が出演して、評価されたら……それは美雪の実績になってしまうかもしれない。逆に失敗したら、君の評判を傷つけるかもしれない」
膝の上で、そっと手を握りしめる。
「だから、君が嫌なら断るよ。君の将来を、俺の勝手な判断で変えたくないんだ」
美雪は何も言わなかった。
春の風が、俺たちの間を静かに通り抜けていく。
やがて彼女は、小さく息を吐いた。
「……春馬は、どうしていつも自分のことを後回しにするの?」
「え……?」
「私のことばかり考えているでしょう?」
美雪は、まっすぐに俺を見つめた。
「私の将来を心配してくれるのは、うれしいよ。でも、あなた自身がどうしたいのか、全然話してくれない」
「それは……」
「私は、あなたの本当の気持ちが知りたいの」
静かな声だった。
責めているわけではない。
それでも、その言葉は俺の胸の奥に深く刺さった。
俺は今まで、何度こうして自分の気持ちを飲み込んできたのだろう。
誰かを困らせたくない。
誰かに迷惑をかけたくない。
そんな理由を並べて、自分の望みを後回しにしてきた。
相手のことを考えているつもりで、本当は、自分の気持ちを伝えることから逃げていたのかもしれない。
美雪にだって、そうだった。
高校時代から、俺は彼女に本当の気持ちを伝えられなかった。
好きだった。
大切だった。
それでも、嫌われるのが怖くて、傷つくのが怖くて、言葉にできないことがたくさんあった。
今もまた、同じことを繰り返そうとしている。
そう思ったら、少しだけ情けなくなった。
「……やってみたい」
俺は、ゆっくりと口を開いた。
「演技を通じて、自分の気持ちを伝えられるのは、きっと楽しいと思う。蓮と一緒に何かを作れるのも、うれしい」
美雪は、黙って聞いていた。
「それに……昨日の稽古で、少しだけわかった気がしたんだ。自分の中にある感情を言葉にすることが、誰かに届くこともあるんだって」
あのときのことを思い出す。
台本にない言葉を口にしてしまった瞬間。
高校時代の記憶がよみがえり、抑えきれなくなった感情。
あれが本当に演技と呼べるものだったのか、今でもわからない。
それでも、蓮は俺の演技を認めてくれた。
そのことが、思っていた以上にうれしかった。
「でも、君の身体で得たチャンスを、俺が自分のものみたいに扱うのは違うと思うんだ」
俺は、美雪の目を見つめた。
「……それが怖かった」
言い終えた瞬間、胸の奥が少しだけ軽くなった。
自分の気持ちを、ようやく言葉にできた気がした。
美雪はしばらく俺を見つめていた。
そして、ふっと表情を和らげた。
「……そっか」
彼女は、膝の上に置いていた手をそっと握った。
「じゃあ、私も本音を言うね」
「うん」
「私は、あなたに挑戦してほしい」
思いがけない言葉に、俺は目を見開いた。
「……いいの?」
「うん。ただし、約束してほしいことがある」
美雪は、少しだけ真剣な顔になった。
「私の名前で何かを決めるときは、必ず私に相談して。出演するかどうかも、どんな役を演じるかも。私の身体で生活しているからって、私の人生を全部背負おうとしないで」
「……わかった」
「それから、あなた自身の気持ちも、ちゃんと教えてほしい」
美雪は、照れくさそうに笑った。
「私だって、あなたのことをもっと知りたいから」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった。
美雪は、俺の人生を代わりに決めようとはしなかった。
ただ、俺自身がどうしたいのかを聞こうとしてくれた。
そのことが、何よりもうれしかった。
「ありがとう、美雪」
「お礼を言うのは、まだ早いよ。オーディションに受かるかどうかもわからないんだから」
「確かに……」
「それに、もし落ちたら、私が慰めてあげる」
「いや、できれば受かりたいんだけど!」
思わず声が大きくなった。
美雪がくすっと笑う。
俺もつられて笑った。
身体が入れ替わってから、俺たちは何度も困難に直面してきた。
相手の生活に戸惑い、知らなかった一面に驚き、ときには自分の気持ちさえ見失いそうになった。
それでも、こうして言葉を交わせば、少しずつ前に進めるのかもしれない。
相手の人生を奪わないために。
自分の人生も、諦めないために。
俺は、そう思った。
* * *
その日の夜。
美雪は、春馬の身体で小さな机に向かっていた。
机の上には、昨日見つけた黒いノートが置かれている。
『明日、君が笑えるように』
そのタイトルを見つめるたび、胸の奥が不思議と温かくなった。
美雪は、そっとページを開いた。
主人公の設定。
物語のあらすじ。
書きかけの台詞。
何度も書き直された文章。
どれも、まだ完成にはほど遠かった。
けれど、その一つ一つから、春馬が何を伝えたいのかが伝わってくる気がした。
『俺には、君の苦しみを全部なくすことはできない。でも、君が一人で苦しんでいるとき、隣に座ることならできる』
美雪は、その一文を何度も読み返した。
「……あなたらしいね」
思わず、そんな言葉がこぼれた。
春馬は、誰かの問題をすべて解決できるほど強い人間ではない。
自分のことでさえ、思いどおりにならないことがある。
それでも、誰かが困っていれば手を差し伸べようとする。
相手の苦しみをすべて理解できなくても、そばにいようとする。
彼は、きっとそういう人なのだ。
美雪は、ノートから目を離し、机の引き出しを開けた。
中には、使い込まれた古いペンが入っていた。
軸には小さな傷があり、長く使われてきたことがわかる。
それでも、丁寧に手入れされていた。
美雪はペンを手に取り、しばらく眺めた。
春馬の物語に、何かを書き足してあげたい。
そんな気持ちが、ほんの少しだけ湧き上がった。
けれど、すぐに思い直した。
これは、春馬の物語だ。
彼が悩み、考え、時間をかけて紡いでいくもの。
自分が勝手に手を加えていいものではない。
彼の夢を代わりに叶えることと、彼が自分の力で夢を追いかけられるよう支えることは、きっと違う。
美雪はペンを引き出しに戻した。
そして、ノートの続きをめくろうとしたときだった。
最後のページに、ほかとは少し違う、小さな文字があることに気づいた。
『いつか、自分の物語を誰かに読んでもらいたい』
その下には、さらに小さな文字が続いていた。
『できれば、あの人にも』
美雪の指が止まった。
「……あの人?」
誰のことだろう。
そう考えた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
高校時代。
春馬が好きだった人。
それは、自分だった。
美雪は、ノートを見つめたまま、しばらく動けなかった。
彼は、自分に気持ちを伝えてくれた。
そして、自分は、その気持ちに応えることができなかった。
あの頃の自分には、自分のことで精いっぱいだった。
周囲の期待に応えること。
自分に求められているものを、きちんとこなすこと。
そんなことばかり考えていた。
春馬が何を感じ、何を考え、どんな未来を望んでいたのか。
そこまで知ろうとしていただろうか。
彼の優しさに甘えていただけではなかっただろうか。
今さら、答えの出ない問いばかりが浮かんでくる。
「……ごめんね、春馬」
小さくつぶやいた声が、静かな部屋に溶けていった。
謝ったところで、過去は変えられない。
あの頃の彼の気持ちを、なかったことにはできない。
それでも、今からできることはあるはずだった。
彼の夢を知ること。
彼の言葉に、きちんと耳を傾けること。
そして、彼が自分の人生を諦めずに歩いていけるよう、そばで支えること。
美雪は、ノートをそっと閉じた。
「いつか……あなたの物語を読ませてね」
その願いは、まだ春馬には伝えていない。
けれど、いつか自分の口から伝えたいと思った。
今度こそ、彼の気持ちから目をそらさないために。
* * *
翌日。
演劇サークルの部室は、いつもより落ち着かない空気に包まれていた。
部員たちが集まる中、代表が手にした資料を掲げる。
「よし、これで出演希望者の募集は終了だ!」
ざわめいていた部室が、少しだけ静かになった。
「昨日の説明でも伝えたとおり、今日が応募の締め切りだ。来週から順番にオーディションを行う。希望者は、指定された台本の一部を演じてもらうから、しっかり準備しておくように!」
その言葉を聞いて、俺は鞄の中に入れていた応募用紙を取り出した。
昨日、美雪と話し合ったことを思い出す。
自分の気持ちを隠さないこと。
相手の人生を、勝手に決めないこと。
そして、失敗を恐れて挑戦することまで諦めないこと。
どれも、簡単そうで難しい。
けれど、今の俺には、もう迷っているだけの時間はなかった。
「美雪!」
隣にいた蓮が、期待に満ちた顔でこちらを向いた。
「応募するんだよな?」
「うん。挑戦してみることにした」
「本当か!?」
蓮の表情が、一気に明るくなった。
「よっしゃあ! 一緒に頑張ろうぜ!」
「まだ受かると決まったわけじゃないよ」
「そんなの、やってみなきゃわからないだろ!」
蓮は、いつもの調子で笑った。
「それに、挑戦しなかったら、受かる可能性だってゼロのままだしな!」
「……確かに」
思わず笑みがこぼれた。
蓮の言葉は、いつだって単純だ。
けれど、ときどき、その単純さに救われる。
俺は応募用紙に目を落とした。
名前を書く欄には、当然のように『才園寺美雪』と記されている。
俺の本当の名前ではない。
この名前で呼ばれるたび、自分が今どこにいるのかを思い知らされる。
それでも、今はこの名前で挑戦するしかない。
美雪は、俺に挑戦してほしいと言ってくれた。
その言葉を、俺は自分に都合よく解釈したくなかった。
だからこそ、これからも大切なことは彼女と相談しながら決めていこう。
この挑戦がどういう結果になったとしても、二人で選んだ道だと胸を張れるように。
俺は応募用紙を代表に差し出した。
「よろしくお願いします」
「はい、受け取りました。オーディションの日程は、決まり次第連絡するからね」
「わかりました」
手続きを終え、部室を出ようとしたときだった。
「美雪!」
蓮に呼び止められた。
「絶対、一緒にいい作品を作ろうな!」
振り返ると、蓮はまっすぐな笑顔を向けていた。
その顔を見て、俺は自然と笑っていた。
「うん。頑張ろう」
今度は、迷わずに答えることができた。
* * *
その日の帰り道。
大学の門を出たところで、俺はふと足を止めた。
道路の向こう側に、一台の黒い高級車が停まっていたからだ。
車のそばには、スーツ姿の男性が立っていた。
男性はスマートフォンを耳に当て、誰かと話している。
「……ああ。例の企画だが、学生側の出演者については、こちらでも確認しておこう」
低く、落ち着いた声だった。
通り過ぎようとした俺の足が、自然と止まった。
「特に、才園寺家の娘には注目している。あの子の将来は、こちらの計画にも関わってくるからな」
――才園寺家。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。
美雪の家のことだ。
どうして、この男性が彼女のことを知っているのだろう。
しかも、ただの知り合いという雰囲気ではなかった。
あの子の将来。
こちらの計画。
まるで、美雪の人生が何かの計画の一部であるかのような言い方だった。
男性は電話を切ると、車のドアに手をかけた。
その横顔が見えた瞬間、俺は息をのんだ。
「……え?」
以前、美雪が見せてくれた父親の写真。
その人物に、どこか似ている気がした。
いや、まだ断定はできない。
顔を見間違えた可能性だってある。
それでも、一度気になってしまうと、頭から離れなかった。
男性は車に乗り込み、そのまま走り去っていった。
俺は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
映像制作プロジェクト。
蓮の父親が関わっているという話。
才園寺家の娘に注目しているという、あの男性の言葉。
偶然にしては、気になることが多すぎる。
もし、この企画が単なる学生向けのチャンスではなかったら。
もし、美雪の父親が、何か特別な意図を持って関わっているのだとしたら。
俺たちが知らないところで、何かが動いているのかもしれない。
スマートフォンを取り出し、美雪に連絡しようとした。
けれど、指が止まった。
まだ、何もわかっていない。
顔が似ているというだけで、彼女を不安にさせるわけにはいかなかった。
それに、蓮の父親が関係しているのなら、まずは蓮本人に聞いてみるべきかもしれない。
明日、少し話を聞いてみよう。
そう決めて、俺はスマートフォンをポケットにしまった。
夕暮れの空は、ゆっくりと暗くなり始めていた。
俺たちは、お互いの人生を知ろうとしている。
知らなかった過去を知り、隠していた夢を知り、少しずつ相手の本当の気持ちに触れようとしている。
それなのに、まだ知らないことが、こんなにも残っている。
美雪の家族について。
この映像制作プロジェクトの本当の目的について。
そして、俺たちの知らないところで動いている何かについて。
考えれば考えるほど、胸の奥に小さな不安が広がっていった。
それでも、目をそらすわけにはいかない。
美雪の人生を大切にしたいと思うなら、彼女が置かれている状況からも目をそらしてはいけないのだから。
俺は、もう一度だけ、黒い車が走り去った方向を振り返った。
そこには、いつもと変わらない夕暮れの街並みが広がっているだけだった。
けれど、何かが確実に変わり始めている。
そんな予感が、いつまでも胸の奥に残っていた。
* * *
その頃。
翔也は、自分の部屋でスマートフォンを見つめていた。
画面には、以前届いた一通のメッセージが表示されている。
送り主の名前を見るたび、胸の奥が落ち着かなくなった。
「……どうして、今になって」
小さくつぶやき、画面を閉じようとする。
けれど、指が止まった。
陽真には、まだ話していない。
美雪に伝えるべきかどうかも、決められずにいた。
このメッセージを見せれば、何かが変わってしまうかもしれない。
今まで保たれていた関係が、元には戻らなくなる可能性だってある。
それでも、このまま何もなかったことにはできない気がしていた。
翔也は、もう一度メッセージを読み返した。
何度読んでも、そこに書かれた言葉は変わらない。
変わらないのは、画面の中の文字だけだった。
それを知った自分の気持ちは、もう以前と同じではいられなかった。
「……いつ話すべきなんだろうな」
誰に向けるでもなく、そうつぶやく。
そして、画面を見つめたまま、もう一度だけ名前を口にした。
「陽真……お前、これを知ったらどうするんだろうな」
返事をする人はいない。
ただ、静かな部屋の中で、スマートフォンの光だけが彼の顔を照らしていた。
この秘密が、いつまでも隠されたままでいられるとは思えなかった。
いつか明らかになる真実は、陽真と美雪、そして翔也自身の関係を大きく変えることになるのかもしれない。
それでも、今はまだ決められなかった。
話すべきなのか。
もう少し待つべきなのか。
翔也は答えを出せないまま、スマートフォンを伏せた。
* * *
誰かの人生を大切にすることは、その人の代わりに選択することではない。
相手の気持ちを聞き、自分の気持ちも伝え、ときには迷いながら、一緒に答えを探していくこと。
春馬と美雪は、まだその方法を学び始めたばかりだった。
相手のすべてを理解できているわけではない。
知らない過去も、言えなかった気持ちも、これから向き合わなければならない問題も残っている。
それでも、二人は少しずつ変わり始めていた。
自分の気持ちを伝えること。
相手の言葉に耳を傾けること。
そして、相手を思いやるあまり、自分自身の願いまで諦めないこと。
その一歩は、小さなものかもしれない。
けれど、どんな未来も、最初の一歩から始まるのだ。
春馬が選んだ挑戦は、これからどんな結果につながるのだろう。
映像制作プロジェクトに隠された思惑とは何なのか。
そして、翔也が胸にしまっている秘密は、いつ明らかになるのか。
まだ、誰にもわからない。
ただ一つ確かなのは、三人の人生が、少しずつ新しい方向へ動き始めているということだった。
その先に何が待っているのか。
春馬も、美雪も、翔也も、まだ知らない。
それでも、明日はやってくる。
そして、選択のときは、少しずつ近づいていた。
第15話 終




