第14話:同業者(イザベラ)の探り
カシアン・フォン・ベルンハルト侯爵が自慢げに差し出してきた右腕に、ルチアは触れるか触れないかの絶妙な儚さで手を添えていた。
カシアンは上機嫌だった。手に入れたばかりの可憐な獲物をサロンの貴族たちに見せびらかすように、これ見よがしに胸を反らせ、フロアの中央に掲げられた巨大な油彩画の前へと歩を進める。
「見てごらん、ルチア。これこそが、我がサロンが誇る前世紀の巨匠の傑作――」
「――まあ、カシアン。ずいぶんと愛らしい小鳥を捕まえていらっしゃること」
低く、甘く、それでいて絹の奥に研ぎ澄まされた銀の針を隠したような女の声が、二人の行く手を遮るように滑り込んできた。
カシアンの足がピタリと止まる。
人混みが静かに左右へと分かれ、そこへゆっくりと歩み出てきたのは、紫紺の重厚なシルクドレスを纏った美女――イザベラ・フォン・クランツ伯爵夫人だった。
三十歳。女盛りの熟れた果実のような豊満な肢体をコルセットで限界まで引き締め、露わになった豊かな胸元には、深海を切り取ったかのような巨大なサファイアの首飾りが鎮座している。
切れ長の濡れた瞳は、一見すると艶やかな慈愛をたたえているように見える。だが、その瞳の奥深く――光の届かない網膜の裏側で、冷酷無比な金勘定の天秤が冷ややかに揺れているのを、ルチアの観察眼は見逃さなかった。
(来たわね……。サロンの女王、いいえ――女詐欺師イザベラ)
「イザベラ夫人」
カシアンは眉をわずかに寄せたが、すぐに社交用の甘い笑みを取り繕った。
「紹介しよう。彼女はルチア・フォン・グラナート子爵令嬢だ。今宵、初めて我がサロンを訪れてくれたんだよ。傷心の手負いの百合の花だ、僕が親身になってサロンの芸術をご案内していたところでね」
「グラナート子爵令嬢……ええ、存じ上げておりますわ。モルガン伯爵邸の夜会で、大変な災難に遭われたと伺いましたもの」
イザベラは扇子を畳み、その先端でルチアの胸元を軽く指し示すようにしながら、値踏みするような視線を向けた。
頭の先から爪先まで、一瞬にして全身を舐め回す冷徹なスキャン。
男を釣るためのカシアンの浅薄な視線とはまるで違う。同業者が同業者の懐具合と化けの皮の厚さを測る、百戦錬磨のペテン師特有の眼光だった。
「ですが、カシアン。あいにくですが、その可憐な小鳥さんを少しばかり私にお貸しいただけないかしら? 傷ついた令嬢のお心を癒やすのは、無骨な騎士の言葉よりも、同じ女性同士の温かいお茶の席ですもの」
「え……? しかしイザベラ、僕がこれから彼女に名画の講釈を――」
「カシアン?」
イザベラが微笑みを崩さぬまま、声音の温度だけをふっと氷点下へと落とした。
その一瞬の凄みに圧されたのか、カシアンは気圧されたように言葉を詰まらせた。借金まみれでイザベラの裏資金に依存しているヒモ男にとって、このサロンの女主人に逆らうことなど不可能だったのだ。
「……分かったよ。ルチア、少しの間だけ夫人に付き合ってあげておくれ。終わったら、また僕が迎えに行くからね」
「は、はい……カシアン様……」
ルチアは怯えたように身を縮め、助けを求めるようにカシアンの袖口を見つめてから、恐る恐るイザベラへと視線を戻した。
完璧な、世間知らずの無垢な小鹿の演技。
イザベラは満足げに唇の端を吊り上げ、扇子で手招きをした。
「さあ、こちらへいらっしゃい、ルチア様。奥の静かなお部屋で、特別なお茶をご用意させますわ」
サロンの喧騒を離れ、二重の防音扉をくぐり抜けた先。
そこは、イザベラが選ばれたVIPの貴族たちと密談を交わすためのプライベートルーム――別名『蜘蛛の巣の奥』だった。
カチャリ、と背後で鍵の回る重い金属音が響く。
室内には豪奢な調度品が所狭しと並んでいた。黒檀の飾り棚、壁一面に張られた金糸のタペストリー、そして中央には、深いワインレッドのビロードが張られたソファ。
イザベラは慣れた所作でソファへと深く腰を下ろすと、専属の無口な給仕に目配せをし、二つの白磁のカップに琥珀色の湯気を立てる紅茶を注がせた。
「どうぞ、お掛けになって。毒など入っておりませんわよ」
「あ……ありがとう、ございます……」
ルチアは遠慮がちに、ソファの端に浅く腰掛けた。
カップを受け取る指先をわざと微かに震わせ、膝の上に置いたショールをぎゅっと握りしめる。
イザベラはその様子を、脚を組み、長い煙管に火を灯しながら冷然と観察していた。紫色の煙が、二人の間にゆったりと棚引いていく。
「さて、ルチア様」
イザベラは煙をふっと吐き出し、三日月のように目を細めた。
「率直にお尋ねいたしますわ。……あなた、何者かしら?」
「え……? な、何者、とおっしゃいますと……?」
「とぼけないでよろしくてよ」
イザベラの声から、先ほどまでの甘やかな響きが完全に削ぎ落とされた。
露わになったのは、裏社会の修羅場をくぐり抜けてきた女衒の、研ぎ澄まされた猜疑心。
「グラナート子爵家が、父親のお人好しのせいで天文学的な負債を抱え、破産寸前であることは社交界の誰もが知っている事実ですわ。先日の夜会で、元婚約者のユリアンを言いくるめて恥をかかせた手際も見事でしたけれど……おかしいと思いませんこと?
実家が泥水をすするほどの極貧であるはずの娘が、なぜこれほど上質な特注のモスリンドレスを纏い、なぜ王立典礼局の高官すら息を呑むような完璧な身のこなしを身につけ、そして何より――なぜ、この敷居の高い私のサロンの正規の紹介状を手に入れられたのかしら?」
イザベラは煙管の吸い口をトントンと灰皿に打ち付け、鋭い視線をルチアの眉間へと突き刺した。
「カシアンのような頭の軽い男は、あなたのその可憐な顔立ちと涙に鼻の下を伸ばして騙せても、私の目は誤魔化せませんわ。……あなた、誰の差し金でこのサロンに潜り込んできたの? 近衛の監査官? それとも、私を失脚させようと企む別の派閥の密偵かしら?」
痛烈な尋問。
並の令嬢であれば、その威圧感に耐えかねて泣き出すか、あるいはボロを出して取り乱す場面だった。
しかし――ルチア・フォン・グラナートの内心の天秤は、一ミリたりとも揺らいでいなかった。
(……ふふ、さすがね。カシアンのような粗大ゴミとは格が違うわ)
ルチアは心の中で冷徹に拍手を送っていた。
イザベラの疑念は極めて論理的であり、詐欺師としての防衛本能が完璧に作動している証拠だった。
だが――防衛本能が鋭い人間ほど、一度「自分の推論が正しい」と思い込んだ瞬間に、強固な確証バイアス(思い込みの罠)に囚われる。
相手が疑っている今この瞬間こそが、最も巨大な虚構をその脳内に植え付けるための絶好のチャンスなのだ。
(さて、エミリアが仕入れてくれた情報の出番ね)
前世の結婚詐欺師・一条玲奈の十八番である『ホットリーディング』の技術が発動する。
ホットリーディングとは、事前に綿密に調べ上げた相手の生い立ち、過去のトラウマ、隠されたコンプレックスの情報を、あたかも今その場で直感的に見抜いたかのように会話の中に自然に織り交ぜる禁断の話術である。
エミリアが王都の下町情報網から掘り起こしてきたイザベラの素性。
彼女はもともと名門貴族の出身ではない。王国の南部に位置する『南方自由都市同盟』の没落した貿易商の娘であり、商売の才覚と美貌を武器に王都へ這い上がり、老齢のクランツ伯爵の後妻の座を射止めた叩き上げの女だった。
だからこそ、彼女は誰よりも「金」に執着し、同時に自らの出自である「南方同盟の商業ネットワーク」に強烈な誇りと未練を抱いている。
ルチアは怯えたように目を伏せ、唇を小さく噛んだ。
そして――恐る恐る、部屋の隅に置かれた豪奢なキャビネットへと視線を泳がせた。
「……素晴らしい、螺鈿細工ですわね」
「……は?」
唐突なルチアの言葉に、イザベラが不審そうに眉をひそめた。
「そちらの黒漆のキャビネット……貝殻の細工の施し方、波の文様の刻み方。王国の宮廷家具の意匠ではございませんわ。……『南方自由都市同盟』の、港湾ギルドの最高峰の職人が手掛けた逸品ですわね」
ピクリ、とイザベラの眉が跳ね上がった。
「あなた……なぜ、南方同盟の工芸品を知っているの?」
「懐かしかったのです」
ルチアは切なげに目を細め、胸元に手を当てて小さく息を吐いた。
その瞳に宿るのは、怯えではなく――深い孤独と、誰にも言えない秘密を共有できる同胞を見つけたかのような、微かな親愛の光。
「私の母方の血筋……表向きは北方の没落貴族とされておりますが、実は、南方同盟の巨大貿易商『ヴァン・デル・ヘイデン家』と浅からぬ繋がりがございまして。子どもの頃、屋敷に届く南方からの荷物には、いつもあのような美しい螺鈿の小箱が入っておりましたの」
「ヴァン・デル・ヘイデン……!?」
イザベラの喉が、微かに鳴った。
南方自由都市同盟において、その名を知らぬ商人など存在しない。複数の港湾と巨大な商船団を牛耳り、王国の国家予算すら凌駕する富を誇る伝説の豪商一族。
ルチアは、イザベラの瞳の奥に「欲」と「好奇心」の火が灯った瞬間を正確に見定めた。
ここからが、心理誘導の第二段階――『バーナム効果』と『確証バイアス』の流し込みだ。
「イザベラ夫人。あなたが私を怪しまれるのは、当然のことですわ。……ですが、密偵などではございません。私がこのサロンを訪れたのは、カシアン様を誑かすためでも、ましてや誰かを貶めるためでもないのです」
ルチアは声を一段落とし、周囲を警戒するように小声で囁いた。
「……逃げ場が、欲しかったのです。誰の目も届かない、安全な場所が」
「逃げ場……?」
「ええ。我がグラナート家が負債を抱えているのは事実です。父がお人好しで騙されたのも事実。ですが……父は、何も知らないのです。我が家に、どれほど途方もない『影の資産』が眠っているのかを」
「影の資産……?」
イザベラが身を乗り出した。煙管の煙が止まり、その切れ長の瞳が爛々と輝き始める。
「半年ほど前、南方同盟の『後見人』――ヴァン・デル・ヘイデン家の直系であり、後継者のいなかった大富豪の老人が他界いたしました。その遺言状において、非公式の信託財産の唯一の受取人として……遠縁にあたる、私個人の名義が指定されたのです」
「な……なんですって……!?」
「その額……金貨、三万枚」
ごくり、と。
静まり返った密室の中で、イザベラが唾を飲み込む生々しい音が響いた。
金貨三万枚――日本円にして、およそ三百億円に匹敵する天文学的な数字。
王国の小規模な州が丸ごと買えてしまうほどの、莫大な富。
「ば、馬鹿な……! そんな大金があなたに!? ならばなぜ、グラナート家は借金に苦しんでいるのよ!?」
「動かせないのです、今はまだ」
ルチアは悔しそうに拳を握りしめ、唇を噛んだ。
「南方同盟の信託法は厳格を極めます。親族間の遺産分配を巡る法廷闘争、そして莫大な国外相続税の免除手続き……それらがすべて完了し、王都中央為替座の正規信託口座への名義書き換えが終わるまでは、一銅貨たりとも手をつけることができない信託条項が組まれているのです。
もし、父にこのことを話せば、あのお人好しのことですから、親戚や近隣の貴族たちに言いふらし、手続きが終わる前に群がるハイエナどもに権利を奪われてしまう……! だから私は、誰にも言えず、一人で手続きの完了を待つしかなかったのです」
ルチアはバッグから、一枚の折り畳まれた薄い羊皮紙をそっと取り出した。
それは、為替ディーラーのセレーナ・ハイドが事前に用意してくれた、王都中央為替座の『大口信託口座開設準備票』の控えだった。
口座番号、王立為替座の正規印、そして『名義人:ルチア・フォン・グラナート』の文字。
もちろん、口座の中身はまだ空っぽであり、セレーナが身元確認のために形式上開設したダミー口座に過ぎない。だが――中央為替座の最高ランクの印章が押されたその書類は、金融のプロであるイザベラの目から見ても、本物以外の何物にも見えなかった。
「あと二ヶ月……。あと二ヶ月で、すべての名義書き換えが完了し、金貨三万枚が私の手元へと自由になります。ですが……手元の現金が、どうしても足りないのです。弁護士への着手金、為替座への保証金……それらを用立てるために、私は身の回りのものを質に入れ、こうして夜会に出て、信頼できる『本物の支援者』を探すしかありませんでしたの……」
ルチアは瞳に大粒の涙を溜め、縋るようにイザベラを見上げた。
「イザベラ夫人。あなたのサロンの調度品を見た瞬間、私、直感いたしましたの。この方なら、南方同盟のビジネスの厳しさを知っていらっしゃる。この方なら……私のこの孤独な戦いを、理解してくださるのではないかと……!」
部屋を支配したのは、息の詰まるような沈黙だった。
イザベラは手にした書類の控えを穴が開くほど凝視していた。
為替座の刻印。南方の信託文面。
そして――目の前で涙を流す、世間知らずで、莫大な遺産を目前にして手元の小銭に困窮している、うら若い子爵令嬢。
(……なんてこと)
イザベラの脳内で、ドーパミンが津波のように溢れ出していた。
点と点が、彼女の都合の良いように勝手に線となって繋がっていく。
なぜ、この娘が質素でありながら完璧なドレスを着ていたのか? ――大富豪の遺産相続人としての気品と、手元の現金の少なさが同居していたからだ。
なぜ、モルガン邸で元婚約者をあっさりと切り捨てたのか? ――金貨三万枚を手にする女にとって、子爵家の跡取りごとき端した金にも満たない存在だったからだ。
そして、なぜ、このサロンに現れたのか? ――遺産を受け取るまでの数ヶ月間を凌ぐための、まとまった現金の融通先を求めていたからだ!
(この娘……ただの貧乏貴族なんかじゃない……!
金貨三万枚の黄金の山を背負った――社交界史上、最高の金蔓だわ……!!)
イザベラの胸の内で、強欲の炎が紅蓮の勢いで燃え盛った。
カシアンを使って、この世間知らずの小娘を完全に骨抜きにする。
甘い言葉で籠絡し、「遺産相続の手続き費用」という名目で法外な金利の借用書を書かせ、美術品の共同購入で手持ちの権利を担保に差し押さえ――最終的には、金貨三万枚の信託受取権そのものを、カシアンとの婚姻契約を通じて丸ごと我が物にしてやる。
そうすれば、ロベルト公爵に裏金を上納する必要すらなくなる。自分自身が、この国の経済を裏から牛耳る真の女王になれるのだ!
「……まあ、まあまあまあ!」
イザベラは吸いかけの煙管を乱暴に灰皿へ押し付けると、先ほどまでの冷徹な表情を嘘のように消し去り、満面の笑みを浮かべてルチアの隣へと滑り込んできた。
その豊満な両腕で、ルチアの華奢な体を抱きしめるように抱え込む。
濃厚な薔薇とサファイアの冷たさが、ルチアの肌に押し付けられた。
「可哀想に……! そんな重い秘密を、お一人で抱えていらっしゃったのね、ルチア様! ええ、分かりますわ、痛いほど分かります! 男たちなんて、金の匂いを嗅ぎつければ群がってくる獣ばかり。信用できるはずがありませんものね!」
「イ、イザベラ夫人……?」
「安心なさい、愛しいルチア。今日からこのイザベラが、あなたの母となり、姉となり、後ろ盾となって差し上げますわ」
イザベラはルチアの白磁の手を両手で包み込み、熱烈な視線を注いだ。
その瞳の奥にあるのは、慈愛などではない。黄金の豚をまるごと飲み込もうとする、大蛇の歓喜。
「手続きに必要な資金のことなら、いくらでも力になって差し上げます。それに……あのように素晴らしい遺産を手に入れられるあなたには、それに相応しい『本物の美術品』と、あなたの心を真に理解してくれる『高潔な殿方』が必要ですわ」
「本物の、美術品……高潔な、殿方……?」
ルチアが純真無垢な瞳を瞬かせると、イザベラは蠱惑的な笑みを深めた。
「ええ。カシアン侯爵をご存じでしょう? あの方の家柄、そして騎士としての高潔さは、社交界でも折り紙付きですわ。……近々、我がサロンで、選ばれた貴族だけをお招きする『秘密のオークション』が開催されますの。目玉は、前世紀の巨匠が遺した幻の傑作『聖母の嘆き』……。あのような至高の絵画こそ、あなたのような気品ある令嬢の床の間にこそ相応しいわ」
「まあ……『聖母の嘆き』……」
「カシアンも、その絵画に強い関心を示していらっしゃいますのよ。ふふ……きっとあの方なら、あなたのために喜んで力を尽くしてくださるはずですわ」
罠のピースが、向こう詰めで勝手にハマっていく。
ルチアは感動に打ち震えるように胸元を押さえ、涙ぐんで微笑んだ。
「ありがとう、ございます……! イザベラ夫人、私……あなたのような素晴らしい方に出会えて、本当に幸せですわ……!」
「いいのですよ、ルチア。うふふ……仲良くいたしましょうね?」
抱きしめ合う二人の美女。
傍目には、心を通わせたサロンの女王と薄幸の令嬢の麗しい光景。
だが――イザベラの肩越しに伏せられたルチアの紫紺の瞳は、絶対零度の冷酷さを湛えていた。
(釣れたわね、哀れな蜘蛛の女王)
ルチアは心の中で、誰にも聞こえない嘲笑の刃を研ぎ澄ませていた。
相手を騙すのに、複雑な嘘など必要ない。
相手が最も欲しがり、最も信じたいと渇望している「都合の良い欲望」を、ほんの少し目の前にぶら下げてやるだけでいいのだ。
そうすれば、相手は自らの強欲という名のエンジンを全開にして、勝手にこちらが敷いた破滅のレールの上を暴走し始める。
「同業者を騙すコツは簡単ですわ。――相手の『自分だけは絶対に騙されない』という傲慢さを、そのまま極上の餌にすること」
密室を出るルチアの背中に、獲物を手に入れたと確信してほくそ笑むイザベラの視線が突き刺さっていた。
さあ――次は、あの甘ったるい放蕩侯爵に、全財産を賭けた破滅の競売へと飛び込んでもらう番だった。




