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「ニコラの話だ」
『ニコラ?!』
皆は第一王子殿下の口から、いきなり思ってもみなかった単語が出てきて驚いている。
「ここからの話が主に機密事項だ。皆、心して聞いてくれ。ニコラは今、赤色巨星と言われる状態だ。それは星の寿命間近の状態で、赤く燃えているが太陽ほどの高温ではない。その燃えている状況が星を赤く見せている。そのニコラは随分前から、徐々に膨張を繰り返し、我々の肉眼ではシエラやステラよりも手前にある惑星だと錯覚させる原因にもなっている」
「は?もしかしてニコラってシエラよりも遠くにあるのですか?殿下」
「そうだ。その事すらも我々の中では常識ではなく、ニコラに関する天体観測は更に周辺国家に遅れを取っている状態だ」
「殿下、それって危険な状況なのですか?」
「ああ。それを探る為にルーズベルトには今、我が国の天文学者を伴い、婚約者の国に派遣させている。そして私が川の先の隣国に向かった」
そうか、だからルーズベルト先輩は春休み前からいなくなったんだ。
「それで第一王子殿下、隣国でのニコラに対する見解は?」
「ああ。隣国ではニコラの状態の事よりも、もっと興味深い話を聞けたよ。それは…ニコラと魔物の発生には関連があるという事実だ」
『!』
皆、驚きで、しばらく声が出ないようだ。
私もそういう予感はしていたけど、まさか断定までされるとは思わなかった。
「隣国では居住地を高い塀で囲うだけではない。割と広範囲に渡って屋根を設置している。それは雨の日でも傘をささずに歩けるほどだ。つまりそれで魔物発生が減らせているという事だ」
「どういう事だ?!屋根があるだけで魔物が減らせるって?」
「それは魔物は、屋内には発生しないという法則に基づいているのでは?」
「屋内には発生しない?」
「確かに屋内で発生したり、兆候が現れたりしたというのを聞いた事はないが…」
「そこにも気付いていたんだな、プリシラ」
皆の注目がプリシラに集まる。
「どういう事だ?プリシラ」
父が私を「それは聞いてないぞ?」という目で問い詰めてくる。
これまでニコラの話も、屋内には魔物が発生しない事も家族との話題には出した事はなかったからだ。
兄には一度だけニコラについて聞いた事はあったけど、互いに忙し過ぎて報告できてなかったんだよね。
だけど屋内に魔物が出ないのは、割と常識なのかと思っていたのは違ったようだ。
「お父様、だって悪意は壁も屋根も関係なく発生するのに、なぜ魔物だけが屋内には発生しないのか?とずっと私は疑問に思っていましたから。だからニコラが関係あると聞いて、その理由が腑に落ちたという感じです」
私の返答を聞いて父は驚きの顔から戻れない様子だ。
「ならプリシラ、ニコラがどの様にして魔物発生に影響を与えていると推測する?」
「それは…ニコラが人々の悪意に反応して、魔物を発生させる澱みを生み出しているか、もしくは悪意が、ニコラに力を与えられ魔物発生の澱みにつながっているのか、そのどちらかではと」
「正解だ。隣国もその両方に近い見解だ。どちらにせよ、ニコラが悪意と結び付き魔物発生につながっていると、あちらは言っていた。だから隣国は弱い戦力でも、魔物が発生する場所を限定させる事で、対処することが出来ている」
「おっお待ち下さい、殿下。なぜニコラなのです?ニコラは一番遠い惑星だと今、仰いました。ならシエラ、ステラの可能性は?」
「蝕だ」
「蝕?」
「3つの惑星は我々の星の衛星だから、星を公転する周期があるのは知ってるだろう?」
「はい。それは学校でも学びますから」
「3つの惑星が昇るタイミングは公転周期が違うから、年中、見え方がバラバラだ。だから蝕が起きる。つまりシエラやステラと軌道が重なるタイミングが非常に稀に起こる。二つの星が重なり合うんだ」
「それは聞いた事がありますな。祖母の話になりますがニコラとステラが近付いた時、普段は青く見えるステラが紫に染まると。そして二つが重なってロマンチックなんだと話していたのを、今、思い出しました」
「ああ確かに、その話は年配者の間では知られた話かもしれませんが、蝕など滅多に起こらないので、ほとんど忘れられておりますな?」
「そうだ。だが隣国は歴史の長い国だ。だから、ちゃんとニコラがシエラとステラとの間に起こった蝕の時の記録がある。その蓄積された記録と統計によってシエラとステラは魔物とは関連がないと、あちらは断定していた」
「それは…そんなに我が国の天体調査は遅れを取っていたのですか…」
魔法副師団長もかなりの衝撃を受けられたようだ。




