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第一王子殿下は今年学校の1年生でプリシラより一つ年上だ。
失礼にならないように、そっとお2人の容姿を拝見すると国王陛下も第一王子殿下も黒髪だった。これは聖女様が黒髪だったことが名残として残っていて、王家は代々黒髪が多いのだという。
受け継ぐ属性は様々だそうだ。
我が家や侯爵家のように、代々の属性を維持していないのは、聖女様が異世界人で魔力を持たず、杖で魔法を使っていたからだというのを父から事前に聞いていた。
やっぱり異世界転移だった。
でも子供には光属性が産まれたんだ!それは不思議。
初代聖女様と王太子、後の国王との間には、お子様は4人いらっしゃったそうだが、光属性は長女殿下と次女殿下のお二人だけだったそうだ。
その後の王家にも光属性は生まれておらず、侯爵家と伯爵家だけがやはり光属性を代々受け継いでいるだけのようだ。
国王陛下が祖父の挨拶に頷きながらも「今日は公式の場ではないから堅苦しいものは一切必要ない」と仰って、いきなり私に向かって「聖女の杖を見せてくれるか?」と尋ねてこられた。
私は杖が、聖女様の伝記の杖と形状が少し変わってしまった事に、内心、冷や冷やものだったが、私が杖を差し出すと魔法師団長が受け取り、陛下と一緒にマジマジと杖を観察し始めた。
「確かに伝記の杖の図柄とは少し違うな。色も変わっているようだ。それに杖と言うよりは〜」
と2人で、ごにょごにょ話している。
王子殿下も2人の横で杖を観察なさっている。
「プリシラ、早速だが魔法を使用してもらえるか?魔法はぜひ回復魔法がいいな。昨晩は徹夜で仕事をしてみたぞ。余も王子も」
と陛下は殿下の方を見て口の端を上げる。
‥‥殿下は巻き込まれ事故に遭ったんだ?
お可哀想にと私は杖を受け取ると、指と手首を使いクルッと杖を回す。そうすると杖が伸びてバトンになる。
「おぉ」という歓声をバックに、そのままゆっくり杖を回しながら右腕も大きく回転させ、同時に呪文も唱える。
呪文の元歌は、前世父の持ち歌“死神のキッス”だ。
安心して欲しい。元歌が何であれ、これは回復中級魔法だ。
プリシラは初級魔法の呪文は全て、讃美歌に当てはめているが、レパートリーが尽きたので、中級魔法からは全て父の楽曲だ。
ヘビメタだけど…。
始めの出だしの「死神が何処より来たりぃ〜」の部分がこの呪文にピッタリで、途中で父の元妻のバックコーラスが「キャー!!」と悲鳴を入れるんだけど、父はその彼女の悲鳴に惚れて結婚したらしい。
あぁ…またどうでも良いことを考えちゃった。
だが呪文を無事に完成させ、魔法陣を2人に向けて「トゥッ!」とぶつける。
実際は言ってないよ。かかった時間は1分ほど。
2人にぶつけた魔法陣が「ドカン」と弾けて、2人が自身を確認している。
陛下が「左手のペンを刺した後が消えたぞ!」って叫んだ。
「わぁ地味」ってちょっと思ったけど、回復感は感じてもらえたのだろうか?
実は陛下は昨晩は眠過ぎてペンを刺しながら仕事をしたらしい。
いやまさか、今日のためにそんな事を?
第一王子殿下は「すごい魔力も回復した」と呟いた。
うん良かった。中級魔法は杖を得るまで、私にはできなかった魔法だ。
本当なら無詠唱でできる初級以下の、簡易回復魔法でも十分だったかもしれないけど、より効果を感じて欲しかったのだ。
「父上!白髪が無くなっています」
と殿下がおっしゃった。
黒髪は白髪が目立つよね?
それを聞いて国王陛下は応接室にある洗面室に駆け込んだ。
そして、たっぷり1分後に「いやぁ素晴らしい!」と髪を掻き揚げながらキラキラスマイルで戻ってきた。
陛下はまだ30代のはず、ご苦労が多いのですね?
まだ抜け毛の方は大丈夫なようで安心だ!と思っていると、陛下は私がどこを見ているのか気付いたようで「その時はまた頼むよ」と笑顔で仰った。
「おっと危ねぇ」と目を逸らすと、その先には殿下がいて今度はそっちと目が合った。
殿下の瞳は綺麗な緑色だった。良かった目の下のクマはバッチリ取れてるね!
それにしても殿下は風属性なんだろうか?
殿下を見つめるのも無礼だろうと、直ぐに目線を下げてお2人に礼を取る。
国王陛下からは「杖はそのまま私が持っていても良い」と許可を頂いた。
お返ししても、私しか使えないかもしれないもんね。




