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「ジェイン殿、ジュリアン殿、ようこそ我が国へ。私はこの国の第二王子でアーノルドです。こちらは光魔法使いのプリシラ嬢です」
殿下に紹介されたら、もう開き直って挨拶するしかない。
プリシラはしっかり令嬢の仮面を貼り付けて、ドレスを摘んで腰を落とす。
「宜しくね。あら?あなた方、二人は婚約者同士なの?」
王女殿下のご質問も、ごもっともだがそれは違う!でも今はそっちの勘違いウェルカムだ!
「姉上、違うよ。先程の伯爵令嬢も紫のドレスだったじゃないか!きっと僕らの歓迎だよ」
そう!歓迎って事で。
「でも紫なのは、あなただけだし…」
実は王女殿下は黄緑に近い緑色の髪だ。
なんでなんで二人とも、うちの王子達の瞳の色の髪色なの?!まあそんな事、どうでもいいのだけどさ。
とりあえず、この場を秒で離脱したいぜ!と思って伯爵家陣営の方にふと目をやると、モネが私を睨んでいる。その隣でセザンヌが気まずそうな顔だ。
そりゃそうだ。まさかモネの狙いが、こっちの王子だとは思わなかったもんね。私は、はたして何度、モネに睨まれたんだろう?
だが、ここはもう心を決め、開き直るしかない!
私は紫が好きだ。なぜなら私に紫は似合うからだ。
理由は他に無い。それしかない!
パーティが始まって最初のワルツも始まる。
最初は主催者の伯爵夫妻と、一番身分の高い人だから第一王子殿下と第二王女殿下が踊る。
その後は誰もが参加できるが、プリシラはこの場を抜け出そうとコッソリ後退りしたところで「ガシッ」と誰かに捕まえられる。
「あなたを逃すな!と第一王子殿下からのご命令です。悪く思わないで下さい」
「じっ侍従殿…何で?」
「恐らくこの後のダンスの流れの為かと」
「はい?」それはどういう事?
「でもお二人ともお似合いですね〜王女殿下の黄緑の髪が第一王子殿下とマッチしていて」
それは本当だ。でも王女殿下は謎の鮮やかなピンク色のドレスだ…。黄緑にピンクってどういう趣味?
しかも王女殿下は髪が短い。
短いと言っても前世で言うボブヘアだ。だけどちょうど肩にかかるくらいの長さなので、この国の常識で言うなら「短い」だ。
そしてメガネなんだよね。美人だと思うけど、気取らない気さくなお姉さんって感じの人だ。
確かに父から見たなら普通の令嬢かもしれないが、令息から見たら不思議な令嬢だろう。
でもジュリアン殿下は装いに違和感は無い。紫の髪に合った濃紺の礼服に、金の刺繍や縁取りが彼の紫の髪にマッチしている。
モネさんのドレスも、まさに紫とゴールドだ。
私のドレスは基本、紫だが青紫を使って、段々と青に近くグラデーションになっている。だから、まるっと二人の第二王子殿下の色という訳でもない。
プリシラが戦々恐々とワルツを見ていると、曲が終わって次のダンスの前奏が始まる。
だけど…いきなりコレなの?という音楽が流れる。
「このダンスは我が国のワルツよりも、隣国にとって代表的なダンスだ」
と第一王子殿下が仰る。
するとジュリアン殿下が、モネを誘った!
きっとモネが殿下にご挨拶した時に、殿下にダンスを一曲お願いしたのだろうけど…でもモネは、目を見開いたまま首を振ってしまった。
つまり彼女はコレを踊れないのだ。
その瞬間「ドンッ」とプリシラが前に押された。
侍従!やりやがったな?
しかし国賓の誘いを断らせる訳にはいかない。
そう…だから私が行かないといけないのだ。私はモネの前に立ちはだかる。
モネ…重ね重ね悪いな。もういくらでも睨んでくれ。
「この曲は私が担当なんです!」
とジュリアン殿下に申し上げると、モネも高速で何度も「うんうん」と頷いている。首、大丈夫?
ジュリアン殿下は気にした様子はなく、ニッコリ笑って私の手を取ってフロアの中心に向かう。
ダンスフロアには私達の他に第一王子殿下、ジェイン殿下のペアも残っている。
このダンスは高速でステップを踏み、回転も加えながら男女ペアで最初は踊るが、途中で相手を何度か入れ替える。踊りの振り付けは男女全く同じだが、ターンだけは男性が回す。
だが困るのはペアが同性同士になった時だ。
どっちが回すのか?瞬時の判断がいるが、大体、背の高い方が相手を回す。
まあ私は誰と踊っても回される側だ。
こういう時は小さいからお得だ。
でも油断できない。
この踊りは、どんどんスピードが速くなりエスカレートする。
次は男性のコサックダンスのように伸びてくる足の動きに合わせて、女性は足を踏まないように高速ステップで躱すのだ。
相手が短足だと嬉しいが、王子二人は長身で足が長い。本当にダンスの振り付けか?って先生に聞き直した事がある。
その後、男性は前世の体操のあん馬競技のように足を回す動きに変えるので、女性はジャンプで足を躱す。
もうこの時点で男女互いに心臓が飛び出してもおかしくない。
だがラストは音楽に合わせて男性が女性を何度か持ち上げる。これはただの上下運動なので技術は要らないが、高く持ち上げると会場が盛り上がる。
女性側もタイミングを合わせてジャンプすると、更に高く上がるので、男性とのタイミングが非常に重要だ。
このダンスは本来、大勢でやるので、この時点で既に最初のパートナーは変わっているから練習も難しく、高難易ダンスとされるのだ。
一体、誰が考えたんだ?と思っていたら、お宅のお家芸なの?
プリシラがゲンナリしていると「我が国ではコレを踊れないと社交界から爪弾きに遭うんだ」とジュリアン殿下が仰った。
正直、このダンスを極めるより魔物を倒せよ!とプリシラは思った。




