84
「ではセザンヌ、殿下達一向は隣国から王女殿下とご一緒に戻られるかもしれないって事ですか?」
「伯爵や夫人がそう言っているのを、侍女の立ち話から聞いただけだから確実ではないけどね」
「きっと彼らも事実を知らないんじゃないか?私も同じような質問を伯爵に受けた。だが砦に来た連絡では「間もなく帰国と、貴人伴う」との短い文章だけだったそうだ」
「では、やはり身分の高い誰かを同行しているというのは間違いないのですね」
「左様ですね。ですが私がセザンヌ嬢から聞いた話や、伯爵家内での情報を集約した上で推測するなら」
「するなら?」
「令嬢方、殿下も、あくまでこれは私の推測ですよ?」
「分かった」私達はウンウンと頷く。
「これまでも伯爵領には買い物に訪れる高位貴族がいた。しかし今回は、ちょうど我が国の殿下や騎士団が戻るのに合わせて便乗して来訪されると考えられます」
「でもこちらは王族でしょう?って事は」
「そうです。相手もそれに近い身分の方でしょう」
「だから王女では?という話になっているって事か」
「そう言う事ですね」
「第二王子殿下、あちらの王族には王子や王女は何人いるとか分かっているのですか?」
「あちらは王子も王女も二人ずつと情報で聞いているわ」
「何でセザンヌが知ってるの?」
「この国に買い物に来た貴族に、換金の時に聞き出すのよ。あちらの国の情報は換金の手間賃みたいなものね」
なるほど!
「プリシラ、この伯爵領は隣国の情報を聞き出す為の主要な要所にもなっているんだ。悪いがその事も国の機密情報だ」
「分かりました。私も絶対、他言致しません」
「頼むよ」
「でも来訪するのが王女殿下なら、もしかすると買い物が目的ではないのでは?って話なんでしょ?」
「そうよプリシラ!」
「王女の年齢によっては縁談の可能性もある?」
「一番上の王女殿下は第二壁内都市を治める貴族に嫁いだそうだ。第一王子はすでに既婚者だ。第二王女殿下が17歳、第二王子が15歳だ」
「もしや第二王子も?」
「それは分からないわ。ただ、もし第二王女殿下の目的が、我が国の第一王子殿下との縁談なら、モネが紫を着る理由にはなるでしょ?」
「第二王子殿下、狙われてますよ?」
「まだ何の確証もない話だろ?」
「でも色んな可能性を想定しておくべきでは?」
「でも君がスミレ色のドレスで対抗してくれるんだろ?」
「ちょっと!私頼みですか?!」
「うん。兄上も仰っていた「プリシラは、いつも言い訳に丁度いいって」最初は何の意味だか分からなかったけど、最近、そうか!って思うようになった」
どういう事じゃい!
「まあアーノルド様はパーティの間、令嬢のドレスの後ろに隠れてらっしゃれば宜しいでしょう」
「ありがとな、プリシラ!」
私は、まだ何の許可も出してないが!
そんな話をしていた、翌日の早朝〜
「プリシラ!ちょっと殿下も!」
砦の騎士達と演習場内の走り込みをしていると、セザンヌが手招きしているのに気付いた。
「どうしたの?セザンヌ、殿下達の到着は明後日でしょう?」
「それが、やっぱり王子と王女が来ているらしいの!夜中に伯爵家の先鋒が知らせを持ってきたの」
「そうなんだ〜じゃあモネが勝手に頑張ればいいよね?セザンヌも頑張りたいの?」
「私はいいわ。隣国なんて行きたくないし。それにポールさんの子爵領にもレストランを出す事になったのよ。だから今回の件が終わったら、かなり忙しくなるわ」
「そうなんだ!セザンヌの家のレストランは何でも美味しいから、きっと子爵領でも成功するよ」
「ありがとう。それよりねプリシラ、やっぱり伯爵家でパーティを開くわよ。王子と王女が来るんだもの。しかも今回は公式ではないけど、お忍びでもないわ。だからいくら第一王子殿下が派手な催し物が嫌いでも、歓迎しないといけないのよ」
「そうか〜じゃあドレスを買っといて正解だった。ありがとうね。セザンヌ」
「もうプリシラったら、そんな事よりもダンスは大丈夫?」
「え?ダンス?」
「そうよ、だって舞踏会なのよ?」
「ああ…第二王子殿下は大丈夫ですか?」
「ああ、もちろん」
「なら大丈夫」
「本当に?!」
「セザンヌ嬢、あなたはご存知なくて当然ですが、プリシラ嬢は殿下方と同じダンス教師に師事なさっておいででしたよ?」
「はぁ〜?!」




