82
「ふ〜ん、スミレ色ならフリルが多くても着れるかも」
「でしょう!フリルもオーガンジーのグラデーションで青紫が入るから甘くなり過ぎず、あなたでも幼過ぎずに見えるわよ」
「セザンヌ〜!凄い!センスがとても良いじゃん」
「フフ、ありがとう。でも伯爵家の騎士服もオシャレなのよね〜」
「そう。よく褒められるの」
「なあ!本当に紫にするのか?!」
「スミレ色ですよ。だって可愛いし」
「プリシラは緑とも相性が良いと思うぞ?」
「第一王子殿下の色なんて絶対イヤですよ」
「何で紫はいいんだよ?!」
「本当にそのスミレ色のドレスは令嬢にお似合いですよ。残念ながら私の姪っ子には紫は似合いません。なので、緑は姪っ子のお土産に選びましょう」
「まあ!お嬢様、スミレ色のドレスが、とてもよくお似合いで。やはり令嬢はそちらの令息のコレなんでしょ?」
ルノワール!小指を立てるのはやめなさい!
ドレスと靴や小物を選んだ後は、街中のスィーツを食べ歩きする。第二王子殿下はそういう行為は初めてなのだろう。キョロキョロと興味深げに周囲を見ている。
「アーモンド、街歩きは初めてですか?」
「ああ。兄上となら何度か一緒した事はあるけど、自由に歩き回った事はない。俺は属性が…」
「?」
「令嬢、ナッツ様のお小さい頃は感情の変化で、魔力が暴走される事が度々ありました。それで兄君がフォローの為に側におられる事が多かったのでございます」
そうか〜重力魔法だから万が一、暴走すると危ないのか。
「暴走すると具体的にはどのような事態に?」
「物を無重力にして飛散させたり、逆に重力を付加して物を潰したり…それが人や生き物だったりすると危ないだろう?」
「なるほど。今は大丈夫なのですか?」
「王族の教育でも普段から感情の抑制や、あまり動じないように学ばされるからな。それにだいぶ魔力も安定してきたんだ」
「へえ、それは良かったです」
「でも安心はできないぞ?自分でも用心はしているけど、何が起こるか分からないから、危険だと思ったら直ぐに逃げろよ?」
「そうですか。でも多分、私は大丈夫ですよ?」
「え?何でだ?!」
「だって私、魔法による暴走ならディスペル出来ますもん」
「はっ?ディスペル?」
「そう光魔法の一つです。魔法の無効化ですよ。魔力や魔法を暴走させる人って、魔力が多過ぎる人がほとんどだから、そんなにいないですけど、そうなった時の魔法なので、私達は割と早いうちからディスペルは学びます」
「そんな魔法が?」
「そう!だから殿下は私と一緒にいたら安心ですよ。さあ街歩きを楽しみましょうよ」
「えっあっうん」
「良かったですねぇ。ナッツ様」
侍従殿までナッツ扱いは良いのか?
第二王子殿下は、王族でもやはりまだ14歳だ。伯爵領の街中は王都よりもかなり規模が小さいはずだが、目をキラキラさせて楽しそうにお店を見たり、珍しい物を食べたりしている。
可愛いな〜。プリシラは前世の弟を思い出す。
私の二つ下の弟…ちょうど第二王子殿下と同じ歳だったんだ!仲の良い姉弟だった。弟はピアノやギターよりもサックスが得意でトランペットなどの管楽器にも興味を持っていた。
第二王子殿下は容姿はアーモンドに似ているが、雰囲気は弟とかぶる。
セザンヌとギャーギャー言いながら、クレープの具を考える殿下の姿を微笑ましく見ていると侍従殿が仰った。
「レイノルド様が、アーノルド様をあなたに託された意味が分かりました」
「私の意思は丸っ切り無視でしたけどね」
「令嬢、なぜ紫のドレスを?」
「…モネが紫のドレスを選んだと、セザンヌが聞き出しました」
「それは…」
「伯爵家の意図は分かりません。モネの独断かもしれませんし」
「確実な情報ですか?」
「セザンヌがモネの侍女に探りを入れたのと、ルノワール夫人からも聞き出していたので、ほぼ間違いないかと」
「そうですか。でも、もし違ったらどうします?」
「セザンヌが私に、緑色のリボンを髪に結んでくれる事になっています」
「私が姪っ子に買ったのと同じヤツですね!」
侍従は何だかそっちを嬉しそうに言ってくる。
やっぱり彼も、どこかおかしな人だ。




