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「プリシラ〜いいねぇ。鞭を握る姿もラブリーだ。しっかり二人に学んで帰って来るんだよ。では私は帰路の準備をするから後は宜しく頼むよ」
イノはそう言って自分はさっさと消えて行った。
殿下と侍従殿は修練場の端のベンチに腰掛け見学者状態だ。
「小侯爵様に頼まれてしまったから仕方がないわね。今日は使い方を大まかに教えてあげるわ。それで明日からは私達の練習に加わりなさい」
「はあっ?!」
「この後も、ちゃんと自習をするのよ。じゃないと明日の練習で母にボコボコにされるわよ?」
そこまで…。
私は、ここではお客さんのはずだったのに…なんだかおかしい。
殿下!そう第二王子殿下!彼の魔法を一緒に練習しなくちゃいけないはずでは?と思って殿下を見るが「私の魔法は王都に戻ってからでもいいよ」と気弱な事を言っている。
「左様でございますね。きっと令嬢の鞭を握るお姿の方が、第一王子殿下もお喜びになるはずです」
侍従殿の言葉に、殿下と私より反応したのはモネだ。
「本当ですの?!第一王子殿下は鞭を振るう女性の姿がお好きかしら?」
それは変態か?って聞いているのに近い気がするけど。
セザンヌはすでに殿下にその姿を見せているから知っている。多分、特別好きな訳ではないって事を。だけど知らんぷりで黙っている。
この従姉妹同士は決して仲が良い訳じゃないんだな。
きっとかつては二人で侯爵令息あたりを、競って狙っていたのだろう。もしかして今もかな?
それからプリシラは鞭の扱いを学ぶ。
最初は距離の取り方だ。鞭が自分に当たらないように距離感を肌に刻みながら鞭の振り方を学ぶ。
当たれば痛い。まさに肌に刻む学習だ。
昔、いや前世の縄跳びで「鞭だ!」って言って遊んで、自分に当たって痛い思いをした時のことを思い出す。
しばし距離感を体験した後、今度は目標物に当てる練習だ。
近い物から遠い物へ、大きい物から小さい物へ、そして動く物に当てる事ができるようになれば、命中率を磨いていくだけらしい。
命中率が上がれば次は対象物に鞭を巻き付けたり、絡めたりする練習だ。これは遠くの物を鞭で取る事ができ、また鞭を巻き付けることで、対象物や対象者を拘束することもできるそうだ。
そう言えばセザンヌは、鞭をポールさんに巻き付けて微電流を流してバーサーカー状態から覚醒させていたっけ。
私が鞭を巻き付けることが出来るようになっても、セザンヌとは属性が違うしな〜。これまで試した武器の中で、一番使わない気もする。
でも斧や槍と違って、常に携帯はできるか?
最終的に武器として持つのも気乗りしないのに、なぜか筋がいいと褒められた。
実は鞭の操作って意外と難しそうで簡単だった。
プリシラはすでに目標物に鞭を当てるのは100発100中になってしまった。
元々、運動神経も動体視力も良いからコツを掴めば習得も早い。
「ブルーノ、練習を始めてまだ1時間くらいなのに、鞭って実は扱いが簡単なのか?」
「殿下、それは違います。ですが令嬢はきっと鞭のセンスがおありなのでしょう。なるほど!プリシラ嬢は、きっと意中の殿方のハートを鞭で捕まえられるのでしょう!」
「…鞭じゃなくても良くないか?だけど伯爵令嬢は悔しそうだな」
「左様でございますね。まあそれ以外にもプリシラ嬢の周りには、この国の結婚したい男性、上位ランキングの9割が側にいらっしゃいますから、妬まれるのは仕方がないでしょう」
「残りの1割は?」
「まだ現れていないルーキーですよ」
「1割って少なくないか?でも楽しそうだな?」
「殿下も他人事ではありませんよ?」
「俺は…私はまだ分かんない。恋愛とか」
「そうですね。恋とはいきなり訪れる、もしくは落ちるものだそうですよ?」
「そうか。でもまだ先でいい。まずは魔法を早く使いこなして、成人までに討伐に出れるようにしたい」
「左様でございますね」
その晩は伯爵家の晩餐に呼ばれていたが、プリシラは疲れ切って参加しなかった。どうせドレスとかも持って来てないし。
明日の朝の鍛錬は、砦の騎士団のほうに参加させてもらおう。
もう鞭はいいや、お腹いっぱいだ。




