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翌日の早朝にイノ達は王都に戻るそうだ。
大神官様がホーリーの成果の報告を首を長くして待っているそうで、早く戻らないといけないらしい。
それを聞いて伯爵様が「夕飯はぜひ我が家で」とご招待下さった。
だがランチは伯爵領の、やはり名物の川魚料理を食べたいという事になってレストランに行くことになった。
私と第二王子殿下、侍従殿とイノ、彼に同行した2名の神官とでレストランに向かおうとしたところ、いきなり伯爵家の令嬢が現れた。
「皆様、私がお勧めのレストランにご案内致しますわ」
やっぱり来るよね?…とは思ったけど、連れて行ってもらったレストランのお料理はとても美味しい。
プリシラはなるべく、彼女の視界に入らないよう気配を消して、ご飯を黙々と食べている。
彼女のターゲットの殿下もイノも、敢えて私には話し掛けない。
多分、これからもこの場所に残る私の為に気を遣ってくれているんだ。
しかし…このレストランの味には覚えがある。
確か侯爵領のレストランでも頂いた…と思っていると、食事を終えた頃、個室のドアがノックされる。
「コレって、もしかして?」
私は侍従殿を見ると、侍従殿も「フフッ」と口の端を上げて笑った。
やっぱり!
この場の主導権があるイノが「入れ」と言うと、男爵が着飾った娘と一緒に現れた。
「この店のオーナーでございます。第二王子殿下と次期大神官様に我が店をご利用頂いていると聞き、急ぎ挨拶に伺いました」
「ああ。わざわざご苦労だったな。とても美味な料理の数々であった。店の支配人と料理長にも、そなたから礼を言っておいてくれ。下がって良い!」
やっぱりイノも男爵に余計な言葉を言わせないんだな。
だけど令嬢が顔を上げて私に微笑む。
「プリシラ!久しぶり」
「やっぱりセザンヌ!相変わらずで、笑いを堪えるのが大変だった」
「プリシラの知り合いか?」
イノも第二王子殿下も、突如セザンヌに興味を示した。
その様子に男爵の顔は輝くが、伯爵令嬢はセザンヌをけん制する。
「あなた如きが、発言を許されてなくてよ?」
「モネったら相変わらずなのね。あなたも早く気付けばいいのに。戦えない女はスタートラインに立つのも遅れるのよ?」
『ブッ』吹いたのは私ではない。
この場の独身男性達だ。
だけど伯爵令嬢の名前は“モネ”か。
やっぱり川沿いは芸術家が集まるようだ。伯爵の名前ももしやピカソとかだったりして?
そう言えば川の名前って何だろう?まさかセーヌ川なんじゃ?
「君も騎士なのか?」
モネを無視して、第二王子殿下がセザンヌにお尋ねになる。
「第二王子殿下、私のこの姿は仮の姿ですわ。私は騎士でも魔法師でもありませんが、雷属性で鞭を扱いますの」
『鞭!』殿下もイノも反応した。
イノは何となく鞭が好きそうな気がするけど。
「君はこの辺りに住んでいるのか?」
「住まいは隣の侯爵領ですが、こちらへは馬を飛ばせば数時間で参れますわ」
「そうか!ならプリシラにも鞭を仕込んでもらえないか?」
何で私?!
「まあ!次期大神官様のお願いでしたら、ぜひお役に立ちたいですわ」
「君もついでに習ったらどうだ?」
殿下が面白そうに便乗してモネに言う。
「あらっモネも鞭を使いますのよ」
男性陣は「おぉ何と!」と驚いているが、私も驚きだ。
「セザンヌ、バラしたわね?まあ、でももう良いわ。私とセザンヌは従姉妹同士ですの。父の姉がそこの男爵に嫁ぎましたの。そして我が伯爵家の女性陣は代々、鞭を振いますの」
「その伝統、悪くないぞ!」
イノがウンウンと頷きながら言っている。
どーして男どもは鞭が好きなんだ?誰か教えて欲しい。
レストランから戻る時、なぜかセザンヌも一緒に来た。
そして昼食後は殿下と魔法の練習をする予定のはずが、なぜか伯爵家の修練場でプリシラは鞭を握らされている。
しかも先生が二人もいる。
モネとセザンヌ、フランスを代表する二人の巨匠に挟まれている状態だ。
何でそうなった?!




