72
「やっぱり子供で合っているのか?」
「ええそうです。ですので殿下のお相手にはなり得ませんよ」
何でイノ君が返答するのかなぁ?
「アーノルド様、でもちゃんと令嬢として接されて下さい。王子として当然の振る舞いではありますが、一応、令嬢は春から殿下の学校の先輩になる方ですから」
「サバ読んで学校に入学したのか?」
「ちゃんと今年、16歳になりますよ。殿下より先に成人しますから!」
何で私、ムキになってんの?
「じゃあ成人したら私の所へお嫁に来るよね?プリシラ」
プリシラは死んだ魚の目になる。
「私の姪っ子は、父親ではなく私のお嫁さんになると言ってくれてますよ」
「なんと!私のプリシラは何でこんなにツンデレに育って…」
もう勝手にやってて…初日から疲れた。
それにしても第二王子殿下は本当に似ている。
私の前世の知人に。彼も黒髪だったし瞳も黒だったけど…ってそう瞳!第二王子殿下は重力属性だっ。この騒ぎですっかり忘れていたけど。
「ウサ耳の帽子」
「え?」
「ウサギの耳の付いた毛糸の帽子を、兄君にお土産にもらいませんでしたか?」
「あ〜!そう言えば今回、持って来た。馬車で寝る時に深く被ると良いって兄上が勧めて下さった」
「早速、お休みになりますか?殿下、どうぞ」
と侍従殿がカバンから、紫のウサ耳帽をお出しになった。
「プリシラも持っているのか?」
イノがもの凄く食い付いた。
「いいえ。カスティエル兄様に第一王子殿下とお揃いですよって渡したら、気に入ってナイトキャップにしています」
「やっぱりコレ、寝る時、かぶるんだ!」
王子が誤解しているけどソッとしとこ。
「令嬢、ご安心を。私も姪に奪われましたし、陛下も王妃様も「自分達には何で無いのか?」と仰られましたので、あの地域にご在住のウサ耳帽発案者のご婦人に追加発注を致しました。それが何と!」
「はい分かりました〜。で、私のは何色になりました?」
「ソレ!あなたのそういう所、良くないですねぇ」
侍従殿が人差し指を立てて「チッチッチ」とやっている。
面倒くさっ。
「はいはい。姪っ子さんなら、きっと一緒にノってくれるんでしょうね〜」
「侍従、プリシラはこれが良いんだよ。で、私のもあるのか?」
「もちろんです!小侯爵様のは灰色ウサギさんですよ」
「ブッ!」プリシラは心の中で吹いた。
「何で灰色?」
「小侯爵様は聖職者であるのに、限りなく黒に近いお人だからです」
「否定はせんが腹が立つな!」
「我が第一王子殿下は真っ黒ウサギさんですよ?」
「なら良いか」
私は腹の色で殿下に黒を渡したつもりはなかったんだけど…。
「じゃあ紫は?」
「アーノルド様の瞳のお色です」
「なら兄上は緑だろう?」
「緑は私が頂戴致しました」
「あぁ。じゃあ令嬢はオレンジか?」
「いいえ。伯爵家の皆様には全員、白ウサギさんでお揃いです」
もう会話に加わらなくても良いだろうか?
私はウサギをかぶらなくても眠れるし、お休み。
私はプイッと窓側に頭を向けて目を閉じる。
「あ!プリシラ」
「フフフ反抗期ですねぇ」
私達がバカな会話をしていても馬車はどんどん目的地に進んでいく。だけど、そう言えば一体どこに行くんだっけ?
私、全く行き先も旅程も聞いてないじゃん!
何で主役が何も知らされてないんだよ?!
ま〜もういいか。結局、知ったところで行くんだし。あとで、どれぐらいで着くのかくらい聞いておこ。
「プリシラ、ランチ休憩だぞ。起きろっ」
「ふぁ〜い。おはよ〜ございま〜す」
「小侯爵、少々、お待ちを」
私はまた侍従殿に顔を吹かれている。
ヨダレ垂らしてないはずだけど。
「おい!侍従、プリシラの寝起きの顔くらい私が拭いてやれるぞ?」
「小侯爵様、これは侍従である私の仕事ですから」
「あん?お前は誰の侍従で来たんだ?」
「もちろん第二王子殿下ですよ」
「なら、ちゃんとナッツの世話をしろ」
「だからアーモンドじゃなくて、アーノルドなんだけど…」
第二王子殿下のナッツ扱い…ちょっと責任を感じる…。




