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「ニコラは赤色巨星という状態なのではと」
正確にはその状態にある惑星が赤色巨星だと言うのだと思う。
「それはどういう状態だ?」
「太陽と同じ燃えている惑星が、星の寿命が尽きる前に起こす状態です」
正確には前世でそう習いました。
私の返答に殿下は一度立ち止まり、私の顔を見る、いや表情を見てるのか?
私も殿下の表情を見るけど、多分「何でその事を知っているのか?」と聞きたそうだ。聞かれたら私には誤魔化す術はない。恐らく今世のこの国には、こんな内容を書いている本なんて無いはずだから。
ピンチだな。転生の真実を言うか、誤魔化すか…。
「その情報は…国家機密だ」
「え?!」実は知られているの?プリシラは驚く。
「ルーズベルトの婚約者…彼女の国から婚約の見返りに、もたらされた情報だ。彼女の国も幾度か聖女が神によって召喚されている。一番最近、召喚された聖女は我が国の聖女より最近だ。それでも100年以上前なのだが。その聖女がニコラを見た時に語ったとされるのが赤色巨星と赤色矮星という言葉だ」
そうか聖女が語ったんだ。
でもそれを知っている私がピンチな状況には変わらない…。
「なあプリシラ、実は聖女には神からの神託が下りて来ているのではないか?」
「えっはいっ?!」
神様が存在しているのは分かる。だけど神託なんてもらった事もない…杖の形状が変わったこと以外は。
それに私は聖女の杖は持っているけど聖女ではない!
だけど、だけどこの状況…私が転生者だとカミングアウトする事よりも「その通り!神が言ってたんですよ!」と答える方がマシな状況?
全く分からない、やっぱりピンチじゃん!
「プリシラ、言えない事があるんだな。それか神と約束でも交わしているのか。今は答えは求めないでおく。だが…」
プリシラは目線を上げて再度、殿下の目を見る。
「抱え込むな。君はきっと何かあれば家族に相談するのが優先なのだろうけど、家族にも伝えるのが憚られる内容は私に言ってくれて構わない」
「…それって王家に対する報告ですか?それとも個人的な相談?」
私もバカだな。そんな事を聞くなんて。
殿下に相談するなら、どっちも大した報告だ。
でも、ちょっとくらい抱えている物を吐き出してもいいかなと思ったのかもしれない。
抱えさせた原因の大部分は殿下だし。
「そうか…私に言うと王家への報告になるか。だけど…いや何でもない。じゃあな、プリシラ。次に会う時は、恐らく新学期以降だ」
そう仰って、殿下はご自身の馬車の方まで行かれてしまった。
これは私に見送れってか?
「令嬢、レイノルド様は、きっとあなたに、まず先にご相談頂きたかったのだと思います」
私は「何を?何で?」と思って侍従殿を見る。
「侯爵令息レオナルド様より先にね。では失礼致します」
プリシラが目をパチクリして呆けている間に、彼も殿下と馬車で去って行ってしまった。私は結果的に殿下の馬車を見送ったのだが、ただ唖然と見送っていただけだった。
何で?何で今さら侯爵令息?冬休み以来、会ってもいないのに。
それともアイツ…また私が知らない間に、私の周りで勝手にストーカー行為をやってるの?
私は何となく辺りを見渡してみるが、分かるはずもない。
「フン!」プリシラは短く鼻息を吐くと、自分も帰宅の馬車に乗って屋敷に戻った。
屋敷に戻ると兄もちょうど帰宅して来たところに遭遇した。
「お兄様、お仕事お疲れ様です」
「おう。プリシラ、お前も学校から戻ったばかりか?今は生徒会も引き継ぎの時期か?懐かしいな」
「お兄様、侯爵令息の事は覚えてらっしゃいますか?」
「ん?侯爵令息?」
「そう侯爵家のレオナルド様。氷属性の人」
「ああ。お前が今回、冬休み中に行った国境沿いの領地の侯爵家か」
「彼が、かつてお兄様に討伐参加の依頼をしたとか?」
「あ〜、一度、光魔法使いと一緒に討伐をしてみたいと言われたな。だが私はその頃は中級魔法が、あまり使えなかったはずだ。参加しても使い物にならない魔法使いだったはずだから、断ったんだと思うよ」
やっぱりそうか。
「まあ使えても断っただろうな。本来、個人的な依頼は受けるものではないしな。でも彼は第一王子殿下の側近か友達ではなかったか?私が彼を覚えていたのは殿下といつも共に騎士科で励んでいたからだ」
えっ何だその情報!
「だから今回の依頼も受けたのかと思ってたな。ま〜河川の浄化の検証だったらしいと、後から聞いたのだけど」
私はその情報の方に驚いてしまって、ニコラの事を兄に伝えるのを、すっかり失念してしまったのだった。




