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プリシラは先程、殿下にも質問した内容を教授に聞いていく。
前世と違ってロケットなど飛ばしていないし、この世界での天体の研究ってどうなっているんだろう?
流石に天動説ではないのは子供向けの本にも載っている。
自然の力を扱う魔法使いがいる世界なのだ。自然を読むのに長けている人達は意外と科学的で、様々な統計学にも基づいた知識も前世の情報とそう隔たりがないのは凄いと思った。
前世の科学的な部分を魔法で補っているのだ。
だけど天体観測は魔法とは関係ないし、この国では前世のように太陽や月を神として崇めたりもしない。それに近くにある明るい星同士をつないで作る星座というものもない。
ただし星で方角を導く手段は天文気象学にある。
もしこの世界が前世と変わりない世界だったら、きっと自分は天体などに興味を持たなかったはずだ。
だけどあのニコラだけはどうも不気味で仕方がない。
「君はニコラの事が知りたいのか?望遠鏡でニコラを見た事はあるか?」
「望遠鏡なんてあるんですか?」
「確かに望遠鏡は一般的ではないから、珍しいし知らなくても仕方ないな」
と教授は仰る。
「プリシラ、望遠鏡は王宮の気象予測部にもある。天体と天候は一緒に研究されている事が多いからな」
なるほど。だから天文気象学なのね。
「ニコラを望遠鏡で観測すると、赤い炎、高音に燃える地表に包まれているのが分かる」
「えっ?!あの星は燃えているのですか?でも太陽のような熱は感じない…って、もしかして大きく見えているからって手前にある訳ではない?」
「そうだ。ニコラは太陽よりも大きい惑星なんだよ。だからシエラよりも遠い距離にあるのに大きく見えている。実はステラもシエラより遠い」
何て事だ!一番遠くに見えているシエラが一番近くにあるんだ。
つまり肉眼で見える距離は実際と逆なんだ。
衝撃が過ぎる…。
そこは教科書や本に載せておくべき内容なんじゃないの?
「教授、令嬢はニコラの公転周期と我々が存在する惑星との距離の変化を気にしているようだが、それはどうだ?」
私が動揺からの立ち直りが遅いので、殿下が新たな質問を教授にしてくれている。殿下ナイス!
「第一王子殿下は王宮にある気象部門から、報告は受けておられないでしょうか?もしくは陛下で情報が止まっているか、その前の大臣か官僚のところで情報が止まっている可能性もありますな」
「という事は何か変化があるという事だな?」
プリシラは「ハッ」と我に返って意識を教授に集中させる。
「殿下、恐らくニコラは近年質量を増やしております。それは私がニコラに興味を持って観測し始めてから今日まで、約15年ほどの期間の違いを見ても明らかです」
私はその時、驚きの表情で固まっていたと思う。
「令嬢がこれほどまで固まってるいる様子を見ると、それはあまり良い情報ではないな?」
「左様にございます。場合によっては魔物の発生よりも深刻な可能性も。ニコラの今後の変化によっては直近で考えていく必要があると思います。まあ王宮の研究者達の見解は分かりませんが」
「魔物発生とニコラの関係性は?」
「あの惑星がなぜ質量を増やしているのかが分かれば…」
「なるほど。魔物との関係性も全く無いとも言い切れないのだな?」
「はい。ですが関係があるとも断定できません」
「全く…プリシラの勘はどこまでも恐ろしいな」
私を置いて教授と話を勝手に進める殿下が溜息を吐かれる。
「私もこのタイミングでの、殿下のご質問には驚きを感じております。近々、お伝えしたいと思っておりましたので」
疑問を持ったのも質問したのも私なんだけどね。
「教授、あなたは引き続きニコラの観測を続けてくれ。また変化があれば、直接、私に連絡をくれて構わない。ブルーノ!」
「はい、かしこまりました。教授の件は侍従の間でも共有しておきます。もちろん本日の内容は伏せて」
「ああ。プリシラ、他に質問は?」
「ありません」
「なら行くぞ」
何で?って思ったけど、私は殿下と共に帰宅のための馬車乗り場まで歩いている。
「それで君はステラの状況をどう思ってるんだ?」
それが聞きたかったの?でもそれは教授に聞くべき事ではないの?私はその道のプロではないし。
だから「分かりません」と正直に答える。
「なら何であんなに驚いた?あの惑星が燃えていて質量が増えている事に驚愕したのでは?」
ニコラが実は一番遠くにある事にも驚いたけどね。




