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「プリシラ、私は春休みを前に隣国に川の件を伝えに特使として向かう事になった。新学期に入っても会えない可能性もあるから先に伝えておく」
やっぱり隣国の状況は我が国の魔物発生と関連があったんだ。
でもそれを苦情として伝えても、隣国は人の住む区域を塀で囲む対策しかしないんだろうな。
でも第一王子殿下がわざわざ行くって事は、もっと重要な事があるのだろうか?
「私の弟が春に学校に入学する」
「はい。そうお伺いしましたね」
「彼の魔法属性は重力なんだ」
やっぱりそうか。
「今はこの国や周辺国家で確認が取れているだけでも、この属性は彼一人だ。これまでの存在も公式では片手で足りる人数しか分かっていない。しかも記録も、わずかしかないんだ」
「何かお困り事が?」
「今までは彼が魔法を学ぶ上で私がずっとサポートしてきた。彼が12歳になるくらいまでは、私の風属性でも補える範囲だったんだ」
「もう無理なんですか?」
「魔力量が彼の方が多いのもあるが、属性の違う彼の力を抑え込むには私は倍近くの魔力が必要だった。つまり彼の重力に対抗するのに、私は無重力を風で作り出していたが流石にもう対抗できない」
「それで私なら何ができると?」
「…君はいつも結論を急ごうとするな」
「だって!私にとって、回りくどく言われても、直接的でも厄介ごとには変わりないでしょう?」
「そうだった。君は例え厄介ごとでも、どうせ頼まれたら断れないお人好しだから直接的に言っても同じだったな」
「その結論は、まだ出してないです!」
殿下も侯爵令息と同じだ!
私の人間性につけ込もうとしてる!
「プリシラ、私も具体的にどのように助けてやってくれとは言えないんだ。だけどもし、近くで見ていて気付く事があれば何でも伝えてやってくれ。あと我々はきっと頭が堅いんだ。君の柔軟な頭で魔法の凡庸性が思い付けば提案してやって欲しい」
ま〜それぐらいなら?
「彼の魔法学の先生は神殿の神官に依頼した。君と同じ先生になるはずだ。頼んだよ」
でも無茶振り。しかも先生まで同じじゃ断れない。
きっと授業も同じ時間割になるだろうし。
「あともう1つ」
まだあるの?
「光属性の令嬢が一人入学してくる」
「うちの一族では何も聞いてないですけど、侯爵家の一族ですか?」
「侯爵家、伯爵家とは一切、関係のない元平民の子爵令嬢だ」
「平民から?その方はどれぐらいの魔力を有しているのですか?」
「さあ分からない。だが元は子爵領にある農家の娘だったらしい。彼女は魔法で植物の育成を早める力があるんだ。それを光属性だと認められた」
「植物に特化しているのですか?」
「これまで農家だったから対象が植物だったのだろう。人に対しても魔法が使えるか練習中だと聞いた。だからその令嬢の事も頼むよ」
「殿下、私に背負わせ過ぎじゃないですか?神殿から聞きました?私が預かった魔法書のこと」
「ああ、だから君の実習単位は私の弟と、新入生の光属性の令嬢と、君が会得した魔法の成果で取得できるように交渉しておいたよ」
…それってどう考えても実習に出た方が楽なんじゃ?
プリシラは殿下に文句をたくさん言いたかったが、この後に予定がある事を思い出す。
「そうだ殿下、私この後、天文気象学の先生の所に行く予定なんです。だからもうそろそろ失礼します」
「天文気象学?また何でそこに興味を持った?」
「えっと殿下もご存知かな?天体のニコラについてなんですけど」
「前もニコラがどうとか言ってたか?」
「そう。教科書で分かっている内容だけじゃなくて…天体を構成する物質とか質量とか、天体の年齢?あとそれと周期!過去と現在で私達の住む星の周りを回る周期が変わってないかとか!統計とかないですか?」
「驚いた。君は何にでも興味を持つんだな?」
「図書館の本には、あまり詳しく載ってなくて。授業後に先生に質問したら「それはここでは答えられないから、後で来なさい」って言われたんです」
「もうその時間か?」
「あと20分後くらいです」
「ブルーノ、この後の予定は?」
「今日はまだお時間があります、レイノルド様」
まさか、殿下も来るの?
「あのっ時間があるからって、第一王子殿下まで一緒にお越しにならなくても…」
「ああ、でも何だか一緒に聞いておかないと、いけない気がするんだ」
結局、殿下も一緒に教授の元に向かう事になった。
「気になるなら、ちゃんと殿下にも後で報告するのに」
「ああプリシラ、以前も伝えたが私の事は “レイ” で良い。毎回、第一王子とか長いだろ?だからって殿下って呼ばれるのも嫌だからな」
「そうですか。でも遠慮しときます。このまま第一王子殿下で」
「それは何でだ?」
「別に王族だからとか、一線を引いてるとかじゃ無いですよ。自己防衛です。殿下のファンを敵に回したくないんで」
「そうか。でも何だか腹立つな」
「い?そこは王族スマイルでサラッと躱すとこですよ」
「何で君に王族らしさを諭されないといけない?」
「ほらっ教授の研究室着きましたよ」
プリシラが、そう言いながら扉をノックしている。
レイノルドは思わず小さく溜息を吐く。
プリシラは小柄だからクルクルとよく動くように見えるが、口もよく動く。毎回、自分と言い合いをして、結構な頻度でこっちが誤魔化されている…。
側近達も生徒会メンバーも、すっかりプリシラのこのペースに乗せられている。
そう思いながらレイノルドはプリシラと共に教授の研究室に入る。
「おや?第一王子殿下もご一緒でしたか。もしやニコラに興味を持たれたのは殿下でらっしゃいましたか?」
「いいや。私は伯爵令嬢が興味を示したから、共に興味を持っただけだ。令嬢の質問を横で聞いているだけだから気にせずやってくれ」




