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「やあプリシラ、早速、レポートを見せてくれるか?」
「殿下、ルーズベルト先輩は帰っちゃいましたけど良いんですか?」
「ああ、彼にはプリシラに生徒会室ではなく、ここに居ると伝えてくれと伝言を頼んだだけだからな」
伝言どころか、ここまでお届けもされちゃいましたけどね。
プリシラはそう思いながら、カバンの中からレポートを取り出して殿下に渡す。
「少し読む時間をもらっても良いか?」
「はい。大丈夫です」
「ああブルーノ、プリシラにお茶を出してやってくれ」
ブルーノさんは殿下と一緒に侯爵領に行った侍従殿だ。
「どうぞプリシラ嬢」
「ありがとうございます。侍従殿」
「ああプリシラ嬢、実はウサギの帽子は姪っ子に取られてしまいましたよ」
「それは残念。でも5歳の姪っ子さんの方が似合いそう」
「そうですねぇ。彼女の方が美しいエメラルドの瞳をしていますから。きっと似合いますね」
「…侍従殿、ご自身の魔力が少ないせいで悩んだり、絶望したり卑屈になったりした事ってありますか?」
「おっと、いきなり重い質問ですねぇ?」
「申し訳ありません。図々しい質問で」
「でも、あなたもそのような経験をなさったのでしょう?だから不思議と嫌な質問では無いですね」
「でも私は恵まれていましたから。特に家族に」
それと前世の記憶にだ。
「あなたのご家族は皆、人間的に出来た方々ばかりですね。光属性を維持するだけでも、家門には相当なプレッシャーでしょう。それなのに寛大だ」
プリシラは頷く。
「うちもそういう意味では寛大でした。父には「魔力が無ければ別のことで身を立てよ」と言われましたよ。それに、うちの家門は文官が多いものですから、領地は必要があれば大金を出して傭兵団を雇うこともあります。あまり武力や魔法に重きを置いていないのも幸いでした」
そうか、色んな家があるんだなとプリシラは思う。
「プリシラ、魔物討伐だけでは国は回らないぞ。国中で魔物が発生するから、それを討伐する者がどうしても目立つだけだ。特に魔法騎士の家系では魔力が至高だと錯覚しがちだ。それを防ぐ為にレオナルドの家も芸術に力を入れている。彼もピアノが得意だろう?」
殿下はそう仰って再び、レポートを読み始める。
殿下の集中力って一体どうなってんの?
「プリシラ、レポート内容は全体的によくまとまっている。この推敲もなかなか興味深い。それで、前回に無い魔法の検証結果はどうやって出した?」
「私の愛馬と兄が協力して…兄は自分を検証に使えと…」
「待てプリシラ、仮に君の愛馬は良いだろう。だが君の兄は優秀で貴重な光魔法騎士だ。本人の意思だとしても許し難いな。今後、君の家族は愛馬以外、検証をする側は構わないが、される側は禁止だ!分かったな?」
「…はぃ分かりました」
もう家族全員で、試しちゃった事は絶対秘密だな…。
「今のところ伯爵家全員の健康状態に影響は無いな?」
はっ!やっぱりバレてるぅ!
「ありません!」
「研究熱心なのは良いが、研究者とは本当に周りが見えていないな。しかも全員が…ったく同じ羽の鳥は集まるとは、よく言ったものだ」
類友って言われたー!まあ否定はできない。
「このレポートは写しを取って、陛下と魔法師団と神殿にも提出する。その後、各機関とも話し合って検証依頼も来るだろう。それまでは検証禁止だ!」
「!」殿下は検証禁止と仰った。
つまり検証をしてしまった魔法に関しては、禁止とは言われていない。
だから使用自体が禁止じゃないって事だ!
「殿下、承知致しました。ありがとうございます」
プリシラは礼をして、ホクホクで屋敷に戻る。
両親にも兄も報告しよう!だって中級までなら家族も使える。
これまで考え抜いて使っていた補助の魔法が、まとめてかけられるだけでも負担は半減だ!これで戦闘効率も良くなるし、とりあえず結果としては上出来じゃん!
皆、喜んでくれるよね?




