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王都に到着した日、私は殿下からレポート提出の命令を受けた。
「何でー?!」
「強化魔法のコンビネーション。君の父親と神殿にチクられたくなかったら、先に正式に報告しろ!」
アンビリーバブル!
「今回でちゃんと魔法の効果も分かっただろう?魔力と身体の同時強化。だから呪文と効果と実用性と魔法の安全性をまとめて新学期に提出しろ」
「…えぇ?」
「大丈夫だ。皆には怒られないように伝えてやるから」
かなり不満だ!
そもそも何でコンビネーションを考え付いただけで怒られるんだ?意味が分からん。
「プリシラ、不服そうだが新しい魔法の無許可実験は本来、違法行為だ。成功したから良いってものじゃない。魔法の暴走は人の精神を破壊するんだぞ?」
確かに…魔法学の基本の一章だ。
私はそんな事も忘れて、ただただ魔法の効率だけを考えて、2つの魔法を一度で成功させたからって、その効果に天狗になってたの?
他の属性と違って私の魔法は、ほぼ対人だ。未成年の私は安全性を大人に検証してもらう必要がある。
レポート提出は当然だろう。
「納得したか?じゃあ新学期な。プリシラ、私の予想では…しばらくはあの地域は平和だろう」
殿下はそう仰って私を屋敷に送った後、王宮に戻って行かれた。
それから冬休みの後半には、私の生活もまた日常が戻ってきた。
母や姉も早々に王都に戻って来て、伯爵領も近隣地域も今年の冬は大した魔物も出没せず、皆が無事で平和に過ごせたのだと聞いて安心した。
父や兄も何日も遠征するような討伐任務は無く、国全体で魔物の大量発生や、ズルズル毎日出るような小出しの大発生も起こらなかったそうだ。
やっぱり川の浄化は効果があったのかな〜殿下が仰った通りだった。
そして私はちゃんと父に強化魔法のコンビネーションを報告し、殿下に提出するレポートを作成中だと伝えておいた。
お父様は怒りはしなかったけど、少し呆れたように溜息を吐いた。
だけど、私にもっと呆れたのは姉だった。
「何で誰とも良い仲になってないのよー!!ちゃんとミッション成功させたんでしょ?!」
「ハハハッ、プリシラらしいな。きっと侯爵家では縁談なんて上がらないほど、プリシラがお子様に見えたんだろ?だから、もちろん殿下とも噂にならなかったんだ!」
兄は笑い転げていた。
そんな兄が、私のレポートを読んで顔を青くするのはもう時期だ…。
冬休みが終わって学校の登校初日、私はクラスのホームルームが終わった後、生徒会室に向かおうと手早く荷物をまとめて席を立つ。
殿下にレポートを提出しないといけないからだ。
今日は授業は無くて午前のみだ。
生徒会の仕事も先輩から一年生への引き継ぎ内容に変わるから、もしかしたら今日は誰もいないかな〜。始動は明日からかも。
そしたらどうしよう?レポート提出は明日でも良いかな?
プリシラが考えていると「プリシラ〜迎えに来てやったぞ!」ルーズベルト先輩が、また教室まで迎えに来て下さった。
2人で歩きながらお喋りする。
「先輩、今日も皆さん集まってるんですか?」
「いいや。引き継ぎも明日からだからな。でも今日はお前はレイに用事があるだろ?」
「先輩が殿下の名前を呼ぶの初めて聞いた」
「ああ学校では、あまり呼ばないからな。でも親戚で同じ歳だから元々、仲が良いよ?」
「婚約者さんとも仲が良いんですか?」
「ああ良いよ。政略結婚だからって心配してくれてるのか?プリシラ」
「ちっとも。でも違ったらお互い気の毒だなって…」
「君は正直過ぎるな?王族相手に」
「あ…申し訳ありません。もうこの件には触れないようにします」
「君は…最近まで土属性と間違われるくらい魔力が少なかっただろ?」
「そうですね。今もですけど」
「だけど君はそれを克服した」
「ん〜それは…たまたま聖女の杖を貰ったからですかねぇ」
「そこは誤魔化してくるんだな?」
「はい?何でそうなります?」
「まあいいよ。だけどプリシラ、私も魔力が少ないんだ」
プリシラは思わず歩く足を止める。
「騎士科にいるけど、これまで魔法の授業は最低限にしていた。学校卒業後は文官方面に行くよ。だから最終学年はほとんど王宮に通う事になる」
「あの…そんな話を私が聞いても?」
「王女を妻に迎えることで、私は王族としての魔物討伐を免れたんだよ。国際条約で他国の伴侶を迎える王族は、結婚後、10年は相手を未亡人に出来ない。レイは違う事を言っただろう?自分の身代わりで私が婚約したとか。でも違うよ。レイは私を魔物討伐から守ってくれたんだ」
「何でそんな話を私に?」
「必要だと思ったからだ。レイにはきっと君が必要だろうからね。それは今の時点では恋愛じゃあないぞ?」
「それは良かったです。鳥肌立ちましたから…」
「アハハッやっぱりプリシラは正直だな。ほら着いた。お届け完了だ!じゃあな!」
ルーズベルト先輩はそう言うと、自分はさっさと帰ってしまわれた。
そして私は生徒会室ではなく、殿下のサロンに連れて来られていた。




