58
「女王…さすが氷の女王だ。激しい中にも美しさを伴っている…」
おい!木こり!いきなり詩人か?
どこにそんなうっとり見惚れる要素がダビデにあった?おぅミケランジェロだ。
「そこのあなた!見る目があるわね?」
「あぁ我が兄は、だから最後まで独身だったのだろうな…」
「まあ!何て事!お姉様の魅力の犠牲者だったのね?」
「フッもう過ぎた事だ。それより君達は斧を武器としているんだろう?君達の魔物を前にして美しく舞う姿も、いつか拝見したいな」
「まあ!もしかしてドアの外に立て掛けてある、あのビッグな斧はあなたの物なの?!」
ポールよ、お前は戦闘中はバーサーカー化するから絶対、見れないだろ?
「プリシラ、そこは冷静に判断するところではない。それよりも今後、どうするかだな。夫人は大人しく部屋からは出て来ないだろうな」
「魔物が出たと情報が入れば、直ぐに出て来ると思いますが」
「父上、だったら戦闘中に魔法をかけるのはどうだ?!」
無茶振りすんな!だけどそれに関しては策はある。
「プリシラが何か策を持っていそうだぞ?令息」
さっきから、殿下の私の思考を読むような発言がムカつくんですけど!!
「殿下、プリシラ嬢を怒らせては!そこは殿下のダメな部分ですよ。だから妹殿下にも最近、鬱陶しがられているんです」
分かる!王女殿下の気持ち分かる!
「王女は11歳だぞ?君もまだその域か?」
「いいえ〜殿下と同じ思春期中ですが?それが何か?」
「そうか。私もまだ思春期中だったのか?クククククッ」
何がそんなにおかしいの?怖〜!!
翌朝、朝食にアイツらは起きて来なかった。
ダビデの部屋の窓を開けろって約束したのに!
もうミケランジェロは長いからダビデでいいかな〜。
「ああプリシラおはよう。昨晩は双子とポール卿が意気投合しちゃって、飲み明かしてたからな〜」
侯爵令息が苦笑いしながら朝食の席に現れた。
セザンヌもいない…まあ彼女もダビデ信者だからな。
だけど余計な客も増えていた。
「プリシラちゃん。おはよう!」
キリコ…どうして朝から人の活力を、減退させるような環境を作るかな…。
「プリシラおはよう。先に朝食を頂いている。機嫌を直せ。小魚のフリッタータが美味いぞ?」
「‥‥‥」
「殿下、昨晩、散々申し上げましたでしょう?令嬢の気持ちには気付いても触れてはなりません」
「そうか、そうだったな。プリシラ、詫びに私のデザートを譲ろう」
「レディにデザートを譲るのは良いご判断です。殿下」
「…要りません」
って言ったけど結局、殿下のパンナコッタを頂いてしまった。
だからって機嫌は直らないぞ!
「さあ、これからどうするかな?プリシラ」
朝食後にまた作戦会議で応接室に集まっている。
「侯爵様、夫人、これからミケランジェロ夫人と二日酔いの奴らの部屋の窓を全開にして来て下さい」
「まあ!この時期は寒いわよ?」
「夫人には「部屋から出す作戦らしい」とソッと侍女からでも伝えてもらえれば、意地でも出て来ないのでは?」
「確かに姉上は出て来ないだろうな。だけどポール卿達は必要ないのでは?」
「どうせ寝てるなら窓全開も気付かないでしょう。まとめて二日酔いも治します」
「なるほど!」
「じゃあ皆、準備だ。プリシラのお手並み拝見と行こう」
プリシラはしっかり厚着して、ギターモドキを抱えて中庭に出る。
手もかじかんでしまわないように、ギリギリまで暖炉で温めた。
寒いのは仕方ないが、回復魔法は直接かける必要はないのだ。
演奏の音が聞こえる範囲なら効果がある。
「なあプリシラ、何を演奏する?俺も伴奏するよ」
「最初は腕慣らしします。なので次の曲から」
「分かったスタンバイしてる」
プリシラはモドキを肩にかけ、イスに座るとポロロ〜ンとモドキを鳴らす。
フム…最初の曲は、昨晩からのイライラとストレスを発散しないとだな。
もちろん前世、父の楽曲の激しいヤツだ。
コレは魔法は全く関係ない。ただ私が気持ちを発散する為だけの曲だ!
父が奏でるギターのスラム奏法が素晴らしいインスト、題名は “ブラザーズSHIP” だ!
あ〜本物のアコギじゃないのが残念過ぎる!
プリシラは立ち上がって、出だしからいきなり「ジャカジャカジャカジャカ」と光速演奏を繰り出す。
そして時々、ボディを叩いてリズムを入れるスラム奏法「ジャンッ!」「パンッ!」と音を繰り出しながら演奏していく。
久しぶりのロックだわ!演奏ラストに父が日本語で「トバッ!サイコウ!」って言っていたの何だったんだろう?
皆「波しぶきが見える!」って言ってたな。
どうでも良いけど、やっぱりこの曲スッキリしたわ。
フ〜「ありがとうぅ」って、よく父が演奏後、右腕を上げて上を見上げてた〜っと自分もマネしてみたら、2階の部屋の窓から顔を出していたダビデと目が合った。
ダビデの奴「ハッ!ヤベッ」って感じで、直ぐに引っ込んだけど、ちゃんと演奏届いてたんだな。
良かったよ。さあ、これから本番だ!




