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皆で和気あいあいと食後のティータイムをしていると、また「バーン!」と食堂にいきなり入室して来る人がいた。
「ちょっと!一体どういう事よ!」
「ミケランジェロ!場を弁えなさい。第一王子殿下がご同席中なのよ」
「はぁ?王子殿下?」
入室してきたご婦人はクルッと振り返ると、「ハッ」と殿下に気付き、胸に手を当て騎士の礼を取られた。
「辺境伯令息夫人、ご実家にお邪魔しているよ。君の実家だ。楽にしてくれ」
殿下のお言葉でご婦人は顔を上げ、正式に挨拶なさったが、直ぐに本題に入られる。
「殿下、あれは第一王子殿下のなさった事でらっしゃいますの?」
「ミケランジェロ、何があったんだ?まずは何があったのか言いなさい」
侯爵がそう言うと「実は川に…」
『川に?』
「大量のホタルが飛んでおりますの」
我々は顔を見合わせて急いで川に向かう。
馬車をぶっ飛ばして川に到着すると、プリシラが今朝、ライトアローを放った川に大量のホタルが飛んでいた。
「今は冬だぞ…」侯爵が呟く。
「美しいが気の毒だな。この寒さでは墓地の草花のように今日までの命だろう」
殿下も呟いた。
しかし川は幻想的な景色で、川沿いの漁村からも沢山の人々が見に来ていた。
「なぜ、こんな事に…」
辺境伯令息夫人が呟く。
「侯爵、悪いが川の上流と下流の地域にも人を送って同様の光景が見られたか確認を取ってくれないか?」
「かしこまりました。殿下」
「辺境伯令息夫人、説明は帰ってからしよう」
明日には死んでしまうだろうホタル達の織りなす光景が、刹那的であまりにも美しくて皆で一時、見入ってしまう。
プリシラが空を見上げると大きな天体が三つ。
一番遠くの星は前世の月とよく似ている。それがシエラ、二番目に遠い星は青い。それがステラ。
一番手前の星はニコラ、赤い星。
この世界の人は赤いニコラが大好きだが、プリシラは見慣れないこの赤い星が少々苦手、というか不気味に感じる。
「殿下、ニコラって少し不気味じゃないですか?」
つい横にいた殿下に言ってしまう。
「今、ホタルより、そっちが気になるのか?」
「スミマセン忘れて下さい。ホタルを見上げてたら、たまたまニコラが目に入ったから、つい」
「そうか…」
殿下はそう呟かれただけだった。
彼はホタルの方が気になるのだろう。
それは当然だ。どう考えてもホタルの方が異常だしね。
それから再び、皆で侯爵邸に戻ると、恐らく夫人の討伐に付き合っていたと思われる双子の姉妹が入口で待っていた。
「ミケランジェロお姉様!」
「モナ!リザ!」
「ミケランジェロお姉様、あのホタルの原因は分かりましたの?」
なんと、まさかのモナリザ!だけどミケランジェロと一緒に居てもいいの!?
「やっぱりレオナルドと結婚するべきなのでは?」とどうでも良いことを考えながらプリシラも促されて屋敷内に入る。
そして次は姉妹も加わって、侯爵家の応接室は満員御礼で殿下の説明が始まった。
「何ですって!あの季節外れのホタルの大群が、そこのお嬢ちゃんの仕業だと言うの?」
仕業?仕業言うなよ。私は頼まれてライトアローしただけだ。
そこの殿下と、そこのお前の弟にな!!
「あっ姉上、そんな風に言わないでくれ!川の浄化は俺が頼んだんだよ。だから殿下もプリシラもその為に侯爵領まで来てくれたんだ!」
「そうよミケランジェロ。プリシラさんならあなたの体の事も…治せるかもしれないって」
「余計なお世話だわ!」
「ミケランジェロお姉様!治るなら治療魔法をお受けになって!」
「そうよ。お姉様!」
ダビデ夫人は下を向いて歯を食いしばっているご様子だ。
あ、ダビデじゃなくてミケランジェロ夫人だった。
ダビデ像は彼の作品だったか…。
ミケランジェロ夫人は「勝手な事をしないで!」と言って応接室を乱暴に出て行ってしまった。とんだ天邪鬼夫人だな。
「プリシラ嬢、済まないな。娘は昨年の冬から色々あり過ぎて、気持ちがずっと落ち着かないんだ」
侯爵様に頭を下げられる。
「本当にごめんなさいね。でもお願いだから少し待って欲しいのよ」
「私達もお姉様を必ず説得するから!お願いします」
侯爵夫人にも双子の姉妹にも頭を下げられてしまった。
私は別に学校の新学期までに戻れればいいけど、でも殿下のご予定はどうなんだろう?
彼は唯一、魔物討伐に出れる王族だから、冬の間、討伐に呼ばれたら行かないといけない人では…?
「プリシラ、こんな時の為にルーズベルトを王都に置いて来たんだ」
殿下?私の思考を読んだの?!
「君の考えなんて表情で直ぐ分かる」
「じゃあ今、どっちの形のクッキーを先に食べようとしていたかも分かりますか!」
「君が負けず嫌いを発症して、ヤケクソでクッキーを持ち出した事は分かるぞ?」
「‥‥‥」悔しい。




