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「言っとくけど、どちらも攻撃じゃなくて初級魔法だからな。最初に覚える初級魔法だ」
と補足されたけど、確かに最初から学ぶ魔法に攻撃魔法は危険だ。子供の頃に覚える魔法だし。
「ただ呪文にして発しなくても簡単に風を操ったりはできる。彼も凍らせたりできるはずだ」
まだボーッと川を見ている侯爵令息に代わって、殿下が説明してくれる。
「私も静電気を起こせるわよ?」
それは…痴漢対策とか嫌な奴を追い払うのに便利そうだ。
「そんなの使い道あるか〜?」
ポールさんが余計なことを言ってきたので、セザンヌが「こうやって使うのよ」と言ってポールさんにソッと触れる。
途端「バチッ」と音がしてポールさんが「痛ぇー!!」って叫んで飛び上がった。
「確かにスゴく使える!」私が褒めると「でしょ?」ってセザンヌが笑った。
いいな〜私もそういう攻撃魔法を使いたいよなぁ。
光魔法って、イマイチ威力も効果もデカ過ぎて微妙なんだよな。まあ無い物ねだりなんだろうけど。
「何か川に変化は感じたか?侯爵令息」
殿下が令息に尋ねたが、彼はあんなに川面を熱心に見ていたのに首を横に振った。
「目立っては分からない。魔物が駆逐されても死体が上がる訳じゃないし。水の透明度もそう変わらないと思う」
そう魔物は悪意の塊なので倒しても死体は残らず消滅するだけだ。
死体の後片付けが要らないと言えばその通りなのだが、ここでファンタジーなら魔物が魔石なったり、ドロップアイテムがあるはずなのだが、この世界の魔物は倒しても何の旨味もない。
だけど倒さないと人間に害を与えるのだ。そう人間にだけだ。
もうちょっと倒すメリット欲しいよね。
ただこの世界にも魔石はある。
まあ宝石や鉄鉱石、石炭のような鉱物扱いで主に魔道具に使われる。簡単に言うと魔道具は電化製品や家電と一緒だ。
主に魔石が産出される鉱山を持つ領地に、魔道具工場もたくさんあって、そこで魔道具も作られる。鉄などもそうだ。
ちなみに伯爵家の領地は平地にあるので、半分以上の領民が薬草農家だ。
どの土地でも領民の魔法は普段の暮らしや領地の仕事に使われる。もちろん領民から魔物討伐などの戦闘職に就きたい者にも道はある。それこそ大歓迎だ。
領地の騎士や兵士などは領民からなる者がほとんどだ。
「そうか。墓地の時のように目に見えて効果は分からないか。まあいい。一旦、戻って君の姉上の戻りを待つか?」
殿下と侯爵令息が話し合っていると、侯爵家から使いの騎士が馬を飛ばして、侯爵からの伝言を伝えて来た。
ここではない侯爵領の川の上流で魔物が出たと!
「殿下、俺は今から急いで向かいますから!」
と飛び出す令息に、殿下の待ったの声が掛かる。
「待て!令息、はやる気持ちは分かる。だが今はプリシラがいる。君が戦いたかった布陣が組めるぞ」
途端、令息の顔が輝く。
この状況で?!
結局、私も討伐に駆り出される事になり、今は馬車に揺られている。馬車には殿下と彼の侍従とセザンヌが一緒だ。
侯爵家の騎士団とポールさんと令息は馬で一緒に現場に向かっている。
殿下は馬車の中で、もの凄く戦術や布陣を考えているようだ。
彼の集中力が伝わってきて、声をかけることも躊躇われる雰囲気だ。まあ、そもそも声なんて掛けないけどさ。
でもセザンヌも初の討伐にとても緊張している様子だ。
この子は「緊張を解いてあげないといけないな」とプリシラはセザンヌの手を握って声を掛ける。
「大丈夫だよ。セザンヌは前衛には出ないはずだし、私の側にいて」
「プリシラ…でもミケランジェロお姉様達がいないから不安で」
えっ?!心配はそっちなの?
侯爵令息では不安だってこと?殿下だって居るのに。
心なしか殿下の眉もピクって動いたぞ?
殿下の侍従殿が「プッ」と吹き出した。
侍従殿!笑って大丈夫?!でも侍従殿も普通に戦えそうだ。
彼もいつだって腰に剣を携帯しているし、侍従殿は侯爵家の三男だと旅の間に伺った。
そんな人に私まで世話を焼かれてしまって!と思っていたら「一番上の兄のところの姪っ子の世話で慣れてますので」と言われてしまった。
どうりで私の世話も手際が良いはずだ。
彼の5歳の姪っ子と私は同じ枠だったのだ。




