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一行は侯爵領内に入ったが、ちょうどお昼時を迎えた為、令息お勧めの街中のレストランで、侯爵領名物の川魚料理をいただく事になった。
川魚と言っても河川が広いので淡水魚と言った方がいい程、臭みも無く美味しいお魚ばかりだった。
「ポール卿の斧は随分大きいのだな?」
「私も思いました。ポールさんも子爵様もそこまで大柄という訳でもないのに、そんな大きな斧を振り回すなんて想像がつかないです」
「ああそうか?まあ、だけどこの斧を背負っていると、知らない者にはよく驚かれるよ。だがうちの子爵領は代々、林業を生業にしてるんだ。だから昔から子爵領の男達は皆、斧をふるうんだ」
「プリシラも殿下も、もし戦闘が始まってポール卿が近くにいたら気を付けた方がいい。子爵家は皆、バーサーカーだ。彼の子爵家は代々、木こりのクセにオッカナイんだよ」
令息の説明に殿下も驚きの表情だ。
「ハハハッ、木こりを舐めちゃあダメだぜぇ」
ポールさんが不敵に笑う。
バーサーカーの木こり…絵面的にも相当オッカナイ。
皆で食後のコーヒーを飲みながら談笑していると、我々が食事をしていた個室の扉がノックされる。
「レストランのオーナーでございます。第一王子殿下と侯爵令息に挨拶に参りました」と声が聞こえた。
プリシラが令息を見ると、令息が顔を顰めている。
「殿下、このレストランは味に間違いはないのですが…オーナーの男爵は…きっと彼は娘も伴っていると思います」
レストランの支配人と料理長は最初に挨拶に来たが、直ぐにオーナーにも連絡をしたのだろう。だから食後に来たんだ…。
「そうか。入ってくれ」
殿下が扉に向かってそう言うと「失礼致します」と令息に言われた通り、オーナーと一緒に令嬢も一人入って来て共にお辞儀をする。
令嬢は華やかなドレスにバッチリメイクだった。
普段から侯爵令息を狙っていそうだな。
侯爵令息って実は狩られる側なのか?皆が狙ってるしな。
男爵家では流石に王家は無理だよなぁ。でも、あわよくば!って感じなんだろうな〜。
「オーナー、ここの料理は大変、美味かった。料理長と支配人にも宜しく言っといてくれ。そして普段から川を魔物から守っている領主に感謝をするといい。我々ももう出発する。ご苦労だったな」
殿下は、そのようにお言葉をかけられ「行って良い!」と手で合図された。
オーナーは「ハハー」とお辞儀をして、娘はキョトンとしたまま父親に連れて行かれてしまった。
可哀想に、娘のこの場の為のおめかしは一瞬で無用になってしまったな。
「アイツらに余計な発言を一言も言わせないなんて、殿下って凄いな?」
「いつもは違うのか?」
「ああ多分…侯爵家は最初の挨拶で、いつも失敗するんだろうな〜」
「令息、ああいうのは発言の隙を与えたらダメだ」
「さっきの娘、スゲェ着飾ってたな。しかしあの娘は戦闘要員ではないな?やっぱ嫁候補はいくら美人でも戦えないとな?」
「そうだな」
そう!この価値観が案外多いんだよ〜この世界って。
そのクセ、ケガして看護してもらった非戦闘員と結ばれるパターンが多い。嘘吐きって思うけど領主は特に、魔物から領地も領民も守らないといけないから、この思考はある意味仕方がない。
だから男爵は娘に戦闘服を着せて「娘も討伐にお連れ下さい」なら、まだ可能性があったのにな。と思っていたら…何と先程の令嬢が戦闘服を着込んで、手に鞭を握って表に立っていた。
「私も討伐にお連れ下さい」
…令嬢ったら実はバッチリ戦闘要員だったのね。
ポールさんは令嬢の上か下まで見回し、目を細めて「痺れるな…」と一言。
侯爵令息も目を見張ってらっしゃる。
もしかして令嬢のこの戦闘モードは初披露だったのか?
やっぱり一人、冷静な殿下が「討伐に関する発言以外をしないなら許す」と仰って、急遽、令嬢も加わる事となり侯爵邸を目指す。
プリシラの気分はすっかり桃太郎だ。
桃太郎はもちろん殿下だ。きび団子(侯爵令息)のお陰で、サルとキジが加わって鬼退治だ!
私は多分…犬ポジか…いや私がサルで令息は犬で、令嬢がキジ。
ポールさんは金太郎だ。
マサカリ担いでいるしな。もしかして違う話が混じったかもしれないが、前世の話だしもう忘れた。




