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「辺境伯の娘なのに、淑女科なんだな…?」
「ポールさん、それは仕方ないよ。戦闘は向き不向きもあるし個人の希望だってあるでしょ」
「こんなお子様まで武器を握っているのにか?」
ポール!テメェさっきはダーリン言うてたヤロ?!
「まあプリシラは見た目も性別も関係なく、歩く時限爆破魔法に似ている」
「はあっ殿下ぁ??」
「行った先々で爆発を起こしているからな」
全員頷くな!!
今回もその爆発とやらを期待しているクセに、一体どの口が!
「そんな事、言って良いんですかね〜侯爵令息が私にやってもらいたい事って、川の浄化が本命じゃあないですよね〜?」
「それは…国境の川の浄化だったら、侯爵領だけじゃないし国も許してくれるかな?って思ったんだ。それに…」
「それに今年も昨年同様の魔物の発生が起こるかもしれないと、侯爵令息は思ったんだろう?」
ちょっと待って殿下!そんな状況が予想されるのに国が許可して、私も殿下もこの地域に送り込まれたってこと?!
「プリシラ、だから川の浄化を試して、今後の魔物の発生状況を調べたいんだ。昨年の冬の魔物の長期間発生は隣国からの魔物と悪意の垂れ流しが原因なのかどうか、我々は理由を突き止めたい」
殿下が私の表情を察して仰った。
「どうして最初から、ちゃんと目的を説明してくれなかったのですか?」
私がやるのに私が知らないなんて、おかしいじゃないか!
「君は最初、個人的に侯爵令息の依頼に応じるつもりだっただろ?」
殿下の質問に「確かにそうだ」と頷く。
「だから君は当初の目的通りに令息を助ければ良い。我々はそれに便乗して調べたい事を確認するだけだ。その事に関して君に言う必要は無いだろ?」
何て事だ!その通りだ!さすが王子…言いくるめられちゃったぜ。
だったら、もう開き直るしかない。
「侯爵領に到着した後の行動について、整理しときたいと思います」
「ああ、そうだな」殿下も頷く。
「まずは川の浄化「なあ、ちょっと待ってくれ!話の腰を折って悪い。だが今回は真面目な話だ」
「ポール卿、関係のない話だったら家主でも摘み出すぞ?」
殿下の目が真剣だ。
「ああ、もちろんだ。侯爵家の奇行子に質問なんだ。確か侯爵家は代々、氷属性が多いだろ?」
「そうだな。今も母と叔父の家族の一部以外は全員、氷属性だ」
「この地域での昨年の討伐時に噂で聞いたんだが、侯爵家は川と陸地の両方の魔物討伐は大変だからと、川を一旦、凍結させたと聞いたんだ」
「あぁ…それは失敗したんだ。失策だったんだよ。川を凍らせれば確かに一時期はその部分からは魔物は出現しない。だけど対岸から魔物が氷の上を渡って来れる。しかも川を解氷した瞬間に川の魔物が溢れたんだ。それで姉上が…」
「フタをしただけだった上に、対岸の魔物まで招いたという事か」
「そうか悪いな。ずっとソレが気になってたんだ。俺の話は以上だ。もう話の腰は折らない」
「令息、今の侯爵領と川の状況はどうなってる?また魔物は断続的に発生し始めているのか?」
「こっちに向かう前の情報だと、昨年よりは少ないがボチボチ発生はしているそうだ。でも…」
でも?
「姉上がストレス発散で、一人で全部やっつけて回ってるって…」
「氷の女王が?」
「お姉様は塞ぎがちだったんじゃなかったの?」
「ああ、だからストレスを魔物にぶつけ始めたって言ってた」
「令息!情報はちゃんと最新版を伝えること!」
「はぃ」
まあ彼の姉君の行動は、そんなに重要ではないんだけど。
翌朝、我々は侯爵領に向かう為、馬車に荷物を載せてると、ポールさんも騎士の服に旅の装いでやって来た。
しかも彼の背丈を越えて、体からもはみ出す程のデッカい斧を背負っている。イメージとしては死神が持つ鎌のような感じだ。
「よう!殿下も皆もおはよう」
「ポールさん?一体どうしたの?」
「ああ俺も皆と一緒に侯爵領に行こうと思って」
「あなたが?でも子爵様は?子爵領は大丈夫なんですか?」
侯爵令息も心配そうに言う。
「子爵領は大丈夫じゃよ」
その時、子爵様も屋敷から出て来られた。
「殿下、孫が役に立つか分かりませんが、コイツも連れて行って下さい。侯爵領にまた魔物が出始めるなら討伐の足しにはなるでしょう」
「子爵領はいいのか?」
「ワシが役に立たん間、侯爵家には随分、助けられた。だから今回少しでも我々が役に立ちたいのだ」
「そうだぞ。それに子爵領の討伐は俺が王都から戻って来たあと、あらかたやっておいた。あとは爺様とうちの騎士団だけでなんとかなる」
だけど子爵様は高齢だし、ご家族を相次いで失われて気力も失くしてらしたんじゃないの?
「嬢ちゃんのお陰だな!」
はいっ?!
「嬢ちゃんが昨日、歌ってただろう?」
プリシラが驚きの表情で固まっていると「正直、ワシも聞いた時は信じられなかった。歌や音楽で孫の怪我が治ったなんてな。だが、こうしてワシも回復した。また斧を振れるくらいにな!」
ガハハハと子爵様が笑う。
この人の武器も斧なんだ…。
それからポールさんも加わって、私達は再び侯爵領に向かったのだった。




