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「昨年の冬だ。侯爵領も含むこの地域一帯で、ポール卿の兄君もお亡くなりになるくらい魔物の大発生があった」
「兆候は?神殿は大規模討伐としか言ってなかった!」
「プリシラ、兆候は無かった。それに結果的に大発生だったと春になって分かったんだ」
「そうだ。昨年の初冬から新春にかけて約3ヶ月もの間、小規模程度の数で魔物が長期間出現し続けたんだ。それはそれは毎日…いつ終わるのか?って言うぐらい毎日出続けて。そのせいでこの辺りでは皆が疲れ切っていた」
「他からの…王宮からの応援は…」
「他の地域も同じような状態になる恐れがあったから、しばらくは様子見で他の地域からの応援はなかなか出せなかったんだよ。できるのは応援の物資をこの地に送る事だけだった」
その時はプリシラも領地にいて祖父らと討伐をしていた。それに学校の入学前でもあったから全く状況を知らなかった。
「学校生の最終学年の卒業が見えてきて、彼らに王都の守りの抜けた分は任せられるという話になって、やっと騎士団と、魔法師団を応援に出せたんだ」
「だけど応援が来たのは発生終焉の1ヶ月前だった。それでも助かったんだけど、うちは姉が…姉上が犠牲になった」
殿下の侍従殿がとっさにポールさんの口を塞いだ!
グッジョブ侍従殿!
「姉は亡くなった訳ではないよ?」
暴れそうなポールさんの目を見て令息が一応、補足する。
ポールさんはそれを聞いて大人しくなったが、何で皆がお前に気を使わなきゃいけないんだよ!
「先の話を続けろ奇行子!」
いやポール、お前のせいだろ!
「姉は亡くなってはいないが、魔物の毒に侵されたんだ」
「陸地の魔物と違って、水辺の魔物には毒を吐く魔物が多くいるんだ。その魔物の毒に侵された」
「解毒は?」
「間に合ったから命は取り留めた。だけど完全には治らなくて後遺症で子供を持てない体になってしまったんだ」
再び侍従殿がとっさに良い動きをした。
だけど、この国では貴族女性が嫁ぎ先で子供を持てなくても、そこまで深刻な問題にはならない。
後継問題はその為に兄弟が残ってたり親族が補ったりするからだ。
「辺境伯家の家族構成は?」
殿下がお尋ねになる。
「姉は嫡男に嫁いだんだが、義兄には妹がいる。あとは辺境伯ご夫妻の奥方の弟夫婦が、随分前から辺境伯家に身を寄せている。それで…その弟夫婦が自分達の娘を義兄に勧めてきてるんだ」
「離婚を迫っているって事?」
「まだそこまでじゃない。義兄も結婚したばかりで姉との離縁を断っているし。だけど向こうは離婚はしなくてもいいから子供だけでも授かれって強引らしい。姉も原因は自分だからと、強く出れないのもあって最近では塞ぎがちだって…」
もしかして彼は川の浄化よりも、お姉様に魔法を施して欲しいんじゃないだろうか?
「ダーリン!当然、侯爵領に助けに行くよな?」
ポールさんが私を真剣に見つめながら言う。
誰がお前のダーリンじゃい!
「じゃないと!俺の兄貴まで成仏できんだろう!」
何でさっきから兄貴が関係あるの?!
「ポール卿の兄君は氷の女王に懸想されていたのか?」
「そうだ!だから独身を貫いていた!兄は…兄貴は…自分は子爵家だからと女王に遠慮なさっていた。だけど、こんな目に遭ってらっしゃるなんて!辺境伯〜!兄貴はきっとお前ん家に化けて出るぞ!」
そしたらライトアローしてやる。
きっと懐中電灯でも十分だ。
「侯爵令息、辺境伯夫人の弟夫婦の子息は娘だけか?」
「そうだ双子の娘が二人‥‥‥」
「なるほどな。ダーリン!氷の奇行子も救ってやれ」
ポール…変なところで勘がいいな。
つまり次は双子の相手に侯爵令息が上がったってことか。
「だけどそっちは自分で断れるだろ?ってか断ったんだろ?」
「そうだ。断ったけど…違う縁談が…」
「あぁ〜。もしかして今度は辺境伯の妹の方か〜」
「ダメなのか?」
「ダメじゃないけど!俺はまだ16歳だ。学校卒業後に直ぐって言われたけど18歳で身を固めるのか?」
この国の平均結婚年齢は男性が20歳〜25歳で、女性は18歳〜23歳頃が多い。確かに18歳で結婚は早い気がする。
「お相手の女性は?」
「年上だよ。俺より1歳年上で昨年、淑女科を卒業した。この縁談が上がる前は、プリシラの兄のカスティエル先輩に振られたって言ってたぞ」
「はあ?!」何だかカオスだ…。




