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今日はこのまま子爵邸でお世話になる事になったので、夕食時に聞いてみる。
「侯爵令息、よくさっき私が弾いていた曲を伴奏できましたねぇ?」
「ああ。だってよく病院でリクエストされて弾いてただろ?俺も良い歌だって思ってた」
って!えっどうして?!
「彼は君を独自で調べてたって言ってただろう?だから病院でも君を見張っていたんだろう」
と殿下が仰った。
「はあっ?そうなの?」
と思いながら令息を見ると、彼は誤魔化すようにニッコリ笑って「俺のことは“レオ”って呼んでくれない?」って言ってきた。
絶対ヤダ!レイもレオも紛らわしいし!イノまでいるし!
「俺もよく、プリシラにリクエストしてたんだ!」
ポールさんの発言で、上手く名前の話題が逸れた。
ポールさんグッジョブ!
ポールさんは明るく話してくれるが、彼の話は衝撃的だった。
彼が下半身付随になった事故は、お兄様と魔物討伐をしている時だったそうだ。子爵家の騎士達と魔物討伐最中に崖から転落しかかってお兄様が彼を守ろうとして一緒に転落したそうだ。
それでお兄様はお亡くなりになり、彼は下半身が動かなくなって治療の為に王都の病院に搬送されたらしい。
彼の半身は再起不可能と病院で診断されて、何度も自殺を考えたそうだ。だがお兄様に救われた命を無駄に出来ない!と苦しんでいたのだと仰った。しかも恋人とも別れてしまったそうで、マジでドン底!
それがあの夏のタイミングだったのだという。
ちょっとシンミリしたので気を取り直して聞いてみる。
侯爵家を訪問する前に聞いておきたかったのもある。
「侯爵令息はご兄弟っていらっしゃるのですか?」
「ああそうか。領に来てもらう前に家族構成を言っておかないとな。でも食後でもいいか?」
話が長くなるのかしら?
とりあえず私達は食事の後に、また子爵家の応接室に移動する事になった。
「ねえどうして、あなたも居るんですか?そりゃ子爵家の応接室ですけど、でもあなたには関係なくないですか?」
ちゃっかり我々の中に参加していたポールさんに、侯爵令息が突っ込んでいる。
「なあ君、夏の間、病院に介護助手のボランティアに来てただろう?俺、君にお風呂に入るの手伝ってもらった気がする。なあ違うか?」
「えっ確かに…プリシラを探る為に介護助手で潜り込みましたけど…」
侯爵令息、そこまでしてたんだ…。
「そうだろう!俺、君にお礼を言いたかったんだ。高位貴族の魔法騎士候補だろう?なのにそんなエリートが、こんなボランティアに来てくれたなんてさっ」
確かにボランティアは素晴らしいが動機がイマイチだぞ?
「動機はいただけないが無報酬労働は賞賛に値する。プリシラに対するストーカー行為は許してやろう」
何で殿下が許すの?
「助かった〜ちゃんと1ヶ月間、やり抜いて良かったよ」
そんなに頑張ったんだ!殿下も驚いている。
「だろう!他のヤツもお前を褒めてたよ。嫌な顔もせず何でもやってたって。でも途中で変装がバレて、女性スタッフにモテてたから、後半、嫌われかかってたぞ?オマエ」
「それは!ヤバかったな〜」
イケメンは微妙な苦労をするんだな。
「でも俺はお前が好きだったぞ!さあ話せよ。お前の家族の事を。俺より悲惨な話は無いだろう?」
「そうだな…」
おい話すんか?乗せられてるぞ、侯爵令息!
ポールさんスゲェな。
侯爵家はご両親とお姉様と彼の4人家族だそうだ。
それにお父様の弟の叔父様がご家族と王都の屋敷にお住まいで、叔父様は王都の家を守る傍ら、ピアノの調律師でもあるそうだ。
この国では家を継がない男兄弟は、王宮で働いたり婿に出る事もあるが、家に残って領主の代わりに領地や王都の屋敷を守ったりするのは当たり前のことだ。
魔物が発生する世界だから親族同士は助け合う。
それに身分もそのまま家門を名乗ることができる。
高位貴族ほど領地も広いから、そうやって助け合うようになっているようだ。
女性貴族も同じで、嫁に出る意外に家を継ぐ身分でなくとも、婿を取って実家に残ることもある。
侯爵令息の家は特に問題は無いように思えるけど、何を躊躇う話があるのだろうか?と疑問に思う。
「俺の姉は一昨年、隣の領地の辺境伯に嫁いだんだ。元からこの辺りの魔物討伐には協力し合っていたし、親戚のように付き合ってきたから姉も当然のように辺境伯家に嫁いだんだ」
「お前の姉ちゃん知ってるぞ!この辺りの男は全員知ってるはずだ!すんごい美女だ!氷の女王だろ?」
またスケート選手キタ。
「ポール卿、話の腰を折るな」
「ああっスマン殿下。でもまさか女王が浮気されたとかじゃないよなっ?!」
ポールよ、殿下の忠告を聞いていたか?
「あ?あぁいや大丈夫だ」
「そうかぁ良かったよ。天国の兄貴も浮かばれるよ」
何で兄貴?
「話を戻せ、侯爵令息!」殿下、冷静だ。




