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プリシラはサボっていた魔法を、再度、一から覚え直すことにした。
いくら面倒でも呪文を一文字でも間違えたら魔法は発動しないし、魔力が無駄に終わることもあるのだ。
それにしても呪文の長さは苦行でしかない…。
前世、夏に帰省した時に母の実家で聞いた仏教のお経に似ていると思った。
父はヘビメタロック歌手で、散々、悪魔とか死神が…とか歌詞に入っていたが、熱心なクリスチャンだった。
そして賛美歌を歌わせると、さすが歌手だと思う歌声だった。よくミサで請われて、讃美歌をピアノやオルガンを弾きながら歌っていたっけ。
プリシラは苦肉の策で呪文を賛美歌に当てはめて、ピアノやリュートを弾きながら練習することにした。
ちなみにリュートは音質が悪く、音量も小さいのでプリシラは職人に頼んで6弦でギターっぽく改良してもらった。
弦の素材も難しく、シルクや植物の繊維など色々試したけど、なんとペルセウスの立髪がなかなか良い音色になった。
なんかモンゴルの馬頭琴みたいだけど、弓で弾かないし尻尾よりなぜか立髪の方が良い音色になった。弦が切れても素材が側にいてくれて助かるわ。
感謝の気持ちを込めてギターモドキで練習する時は、いつもペルセウスの側で練習した。ペルセウスも賛美歌の心地良さを気に入ってくれたのか、練習中は大人しく側にいるようになった。
兄が音楽の練習だと思ってたら、まさか魔法の呪文の練習だと思ってなかったみたいで「斬新だがプリシラらしいな」と言って笑ってくれた。
こんな私のことを理解して協力してくれる今世の家族も、本当に有り難いと感謝したのだった。
プリシラが14歳になる頃、兄は学校卒業後の進路を、父と同じ魔法騎士団に決めた。
祖父は兄と入れ替わりのように引退し、今後は伯爵家の騎士団で領地や近隣の街や村の魔物駆除を受け持つそうだ。
プリシラも剣の腕前とともに弓矢、乗馬もずいぶんと上達し、魔法も見違える程使えるようになった。
やはり呪文を賛美歌に当てはめて覚えたのが良かったようだ。
呪文の意味が分からなくとも、歌の歌詞として覚えるなら苦ではない。ただ魔法の呪文を唱えるというより歌ってしまうから、あまり人には聞かせたくないが、もうすでに初級の回復、バリア、身体強化、魔法強化はバッチリだ。今はスピード強化を覚えている。
可能であれば今後は広範囲魔法や中級魔法、攻撃魔法を学びたい。だがプリシラの魔力量では難しいかもしれないと、父は苦悩の表情を浮かべていた。
「何か方法はないかのぅ?」
祖父も方法を考えてくれていたが、プリシラは魔法の限界を自分で決めたくはなかった。
それに呪文を歌の詩に置き換えて魔法を使うと、心なしか自分の魔力量よりも、多くの魔法を使えている気がするのだ。
その内、プリシラは騎士団が派遣されるような大規模の魔物討伐には参加はできなかったが、自分の領地や近隣の領地で発生する小規模の魔物討伐には参加させてもらえるようになっていた。
少規模で発生する魔物の駆除は自領や近隣と協力してやるのだ。
少規模だったとしても実戦は勉強になる。
特に魔物は外見が動物よりグロテスクなことが多いので、慣れないとその外見に圧倒されて出遅れてしまったりする。
大型の魔物なら尚更だ。
プリシラはまだ前衛には出れないが、支援魔法や回復魔法を後ろからぶっ放している。そうぶっ放しているのだ。
それは一緒に戦う騎士達からの感想である。
戦っていると、後方からプリシラの魔法が「ドカン」という衝撃と共に背中にやってくるらしい。
普通は「ジワっ」とかかるんだそうだ。
でも皆「威力は間違いない」と言ってくれているので、いいんじゃないだろうか?
母は「性格が出てるわねぇ」って面白そうに笑っていた。
それは、どう言うことよ!?




