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「プリシラ、今日、陛下から直々に、お前に対して勅命が下りた。内容は学校の冬休み中に侯爵領に赴き、国境となる河川に魔法を施すようにとのことだ」
「‥‥‥」
「正式な勅命だ。第一王子殿下もご存知だった。お前にも心当たりはあるんだろう?」
「お父様…」
私は父から勅命を聞いた後、夕飯もほとんど食べずに真っ暗な部屋で一人、部屋の隅の方に座り込んでいた。
「お前、何で落ち込んでんの?知り合いを助けるんだろ?お前なら喜んで行くんだと思ってた。それにまた好きに魔法をぶっ放して実験できるんだぞ?」
兄に部屋の灯りをいきなり点けられて、眩しさに目を細めながら抗議する。
「お兄様!」
兄だけじゃなく、父まで一緒に私の部屋まで来ているのが見えた。
「何だ、落ち込んでんじゃなくて怒ってんのか?オマエ…」
「お兄様、お父様も!私が王都に残るのは王都の防衛の為だったの?聖女の杖を持っているから?」
「はぁ?そんな訳ないだろ。お前はまだ未成年なんだし」
「そうだぞプリシラ。国はお前の存在を当てにして防衛に取り組んではいないぞ」
「でも、だって殿下や生徒会の役員達は皆そう思っているみたいだったし。それに聖女の杖は、もう私の個人的な目的では使えないだろうって!」
「そんな事、言われたのか?」
「そうだよ。だから侯爵領への派遣だって、私は本当は個人的に協力しようと思ってたのに。殿下が勝手に国の許可が無ければ行かせないって」
「そうか。プリシラ」
「プリシラ、お前は頭良さそうで案外、バカなんだな?」
「はあ?!」
「キャス!やめなさい」
「プリシラ、第一王子殿下はお前が行くだろうと分かってらっしゃったから、わざわざ勅命になさったんだ」
「じゃあ杖の事は?」
「杖はお前の物だろ?お前以外の誰が使えるんだ。むしろお前の個人的采配でしか使えないだろう?他人の命令で使ったとして、お前の意思なくして発動すると思うか?」
「そっそれは…分っかんない…」
「プリシラ、勅命と一緒だよ。杖の事も国の許可が必要だと、聖女の杖の存在が今後、周囲に明るみになった時、最初に言っておく事はお前を守る為でもある。お前に個人的な頼みを殺到させない為にな」
「国が窓口?」
「そんなもんかな」
「それだけじゃないぞプリシラ、もし侯爵領で川の浄化に成功してみろ?浄化の依頼どころか縁談が殺到するかもしれない」
「はぁーっ!!」
「そうだぞ。だからお前は王家に囲われとけ!」
「今回は第一王子殿下もご一緒なさるだろう。殿下がいらっしゃれば、あちらもお前に縁談を申し込むことは出来ないだろう」
ちょっと待って!浄化が成功して、しかも縁談まで申し込まれる想定なの?!
「別にいいじゃん!縁談なんて持ち込まれても、嫌ならバンバン断っちゃえばいいじゃんか!」
「プリシラァ〜」
兄が呆れたように溜息を吐く。
「お前、自分だけが独身だと思ってんのか?」
「あっ!」
確かに私が無闇に縁談を断りまくっていたら、兄や姉に良い影響は無い気がする。
「それだけじゃないぞ、プリシラ。貴族には体面という面子やプライドがある。縁談の申し込みを最初からさせない事や、させる隙を与えない事が大事だ」
「でもさ…だったらそれって、私が殿下と噂されない?」
「それは一種の狙いだ。それがあるから互いに縁談が上がらない」
「プリシラ、生徒会の役員達に婚約者がいるのは大公家のルーズベルトだけだ」
「そうなの!何で?」
「お前は本当にお年頃のクセに恋愛に関してはは二の次なんだな〜」
お前は違うのか!私は兄を睨む。
「俺はモテたぞ?」
ヤツは不敵に笑いやがった。非常に悔しい!
「ちなみにウルスラもモテるな〜」
姉は美人だし、家庭的な雰囲気と優しげな容姿をしてるしな。
確かに私が一番劣る…。
「どうせ私はチンチクリンですよぉ!」
「キャスもプリシラもやめなさい」
「お父様、ルーズベルト先輩に婚約者がいるのは理由があるの?」
よく考えたらこの国は、貴族でも婚約者を持っている人はほとんどいない。
恋愛が禁止されている訳でも無いから、恋愛結婚も多いみたいだけど。
「彼の婚約者は他国の王女だよ。多分、最近まで彼に会いにこの国に来ていたはずだ。それで冬が本格的に始まる前に帰国した」
そうだ!以前、私を迎えに来てくれた後、婚約者の見送りに行くって言ってた!あの時は何も疑問に思わなかった。てっきり婚約者さんは領地に戻ったんだろうって思ってたし。
でも帰ったって母国にだったんだ。だけどそれが何だ?
「これだけ説明しても、まだ分かんないって顔してるな〜」
悪かったな!どうせ今世は、恋愛音痴ドンと来いだぁ!
「彼は第一王子殿下の代わりに王女と婚約したんだよ」
「えっ!」
「もうこれ以上は説明しないぞ!あとは自分で考えろ!」
「そんな!お兄様〜」
「プリシラ、第一王子殿下の準備が整えば、早いうちに侯爵領に向かう事になるだろう。ちゃんと準備をしときなさい」
「は〜ぃ」
確かにそうだ。今はそんな事に気を取られている暇はないのだ。




