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「浄化を望む土地を持つ領主はさぞ多い事だろうな。プリシラ、直ぐに安請け合いしてはダメだぞ!」
リチャード先輩が仰る。
「確かに知り合いだからとOKするのは違うな。それにプリシラは使命があって伯爵家から、わざと王都に残されているだろ?」
チャールズ先輩もそう言うが、殿下はずっと押し黙って何か考えているご様子だ。
何を考えているんだろう?
侯爵令息は「やはりダメか…」と項垂れている。
でもここで他人の意見はそう関係ない。決めるのは私だし。だけど自分はまだ伯爵領での討伐しか経験がない。それに本来は公に討伐参加が許可される年齢は成人の16歳からだ。
プリシラの場合は自領な上、祖父や祖母がいたから参加できたし、補助魔法の後方支援だけだった。やはり父や兄が戦うような陣の前衛での討伐参戦は基本無理だ。
だけど令息が言う“川の浄化”だけなら?
プリシラが口を開こうとすると、先に殿下が口を開いた。
「プリシラの呪文を覚える作業は、ギターモドキとやらがあれば、どこに居ても出来る作業だろうか?」
プリシラは直ぐに頷く。
「討伐に参加できる年齢は16歳からだ。だが川の浄化は討伐ではない。それに河川の浄化は侯爵家だけの利ではないはずだ。プリシラ、侯爵領に着くまでにホーリーは完成するか?」
「無理です。自分の目論見では来年の夏くらいかと」
呪文を覚えても詠唱する練習が必要だ。まさかのボイトレだけど。
あの長文を一気に唱え上げる肺活量はしばらくはかかる。まあ予定では夏を迎える前にはイケるかな?とは思っているけど。
「そんなにか…」
「でも殿下、聖女の杖なら初級でも…あっ!」
「聖女の杖?」
「…失言したなリチャード」
リチャード先輩のお人柄は良くも悪くも直情的だ。だから思った言葉が直ぐ出てくる。
殿下の側でそれを出さないように、日々、感情の抑制とコントロールを心がけていたようだけど…ヤラかしたな?
プリシラは自分の事を暴露されたというのに意外と冷静にリチャード先輩を見る。
「あ〜ゴメンよぉプリシラァ〜」
ソレッ!そういうとこもヤバい。
「ゴメンな。プリシラ、直ぐに失言を誤魔化せないのもコイツの悪い所なんだ」
チャールズ先輩も呆れながら謝ってくれる。
「聖女の杖とやらがプリシラの秘密か?」
侯爵令息はそう仰るけど、何だか反応は薄い。
だって彼はピアノの連弾で怪しいと思っていた人だし。
「侯爵令息、悪いけどその事は…」
「ああ。分かってる。他言は絶対しない。俺はプリシラが協力してくれるならプリシラの秘密は全部守るって約束する」
どうやら侯爵領に行く流れだなぁ。
まあ行こうかなって思ったりはしたけど、でも殿下も来るのかな?
「侯爵令息、悪いが協力出来るかはまた別の話だ。だけど国境の川の浄化は陛下に掛け合ってみる」
「本当ですか?!」
「ああ。だが許可が下りなければ、プリシラの出動も無しだ」
「えっ?!何で私の行動も王家の指図を受ける必要があるの?」
「君は本当に王都に残る理由が、ホーリーを覚える為だけだと思っているのか?どこででも覚えられるって今、答えたばかりだろう?」
「!」もしかして私を王都に残すのは別の目的があるの?
…まさか…王都の防衛の為なの?!
「プリシラの領地は祖父殿達だけで十分なんだろうな」
チャールズ先輩までご存知だったのか。
「プリシラ、君はまだ魔法を覚えているところだったから、自覚が無かったんだろうけど、初級魔法でもあれだけの威力がある事を、あの墓地で証明してしまったんだよ。すでに聖女の杖は君個人の采配で使って良いものではなくなったんだ」
何て事だ…私は自分で自分に不自由の首輪を着けたんだ!
聖女の杖なんて!だから最初から使うのは乗り気ではなかったんだ。
あの乙女でメルヘンなデザインも好みじゃなかったし!
それに私は十分、杖が無くても音楽で魔法を使いこなせてる。そう実力以上の魔法を!
杖はお兄様が持てば良かったんだ…欲しい人が。
そしたらきっと…そう努力家の兄ならきっと数々の上級魔法だって使いこなせたかもしれないんだ。
私は激しく落ち込んで、帰宅後も満足に食事が喉に通らなかった。




