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「プリシラ、その…その前に侯爵家の領地の説明なんだが、うちの領地は隣国との国境にある。隣が辺境伯の領地で、いつも我が家と辺境伯が協力して魔物の発生に対処しているのだが…問題は隣国だ」
「魔物討伐以外に隣国からの国境侵犯とかあるのですか?」
「それは無い。なぜなら隣国との間に、大きな河川を挟んでいるから、向こうから難民や犯罪を企む輩が侵入してくる訳ではないんだ。だけど魔物は違う」
「つまり隣国の魔物が国境侵犯してくると?」
「まあそれに近いか?だけど隣国は川を挟んだ先の領土に、恐らく村も街もない。だから川の向こうの隣国で発生した悪意も魔物も全部、こちら側に垂れ流しなんだ」
「それは、どれぐらいの頻度と規模なんですか?」
「規模はまちまちだが、頻度も度々と言うしかない。いつも頻繁に討伐してるんだ。特に川の魔物は退治しないと船による物流に影響が出るし、漁業で生計を立てる民にも影響が出る」
「陸地と河川、両方の魔物討伐ですか…それは確かに大変そうですが、私にして欲しい事とは?」
「冬場は魔物の発生が特に酷い。隣国だから我が国からは兆候とか探らないだろ?だけど冬場は探らなくても、ほぼ毎回、中規模に近い魔物が発生しているんだ」
「待って!川の反対側には村や町が無かったとしても、全てがこちらに来る訳ではないでしょ?反対側に行く魔物もいるのでは…」
「ああ、きっとそうだ。だが隣国は恐らくその対処をしていない。だから向こう側は魔物被害が酷いはずなんだ。だからその悪意が更にこっちに来て魔物を更に生み出す悪循環になっている」
何てことなの!
「殿下!何か国からの対応は?」
「隣国は人の居住地区をドンドン狭めて、国内の何ヶ所かにまとめて大きな塀を作って囲っている。そうやって魔物対策をしているんだ。だから大きな居住地区から離れた場所の対策をしない。塀の中だけの魔物討伐で済むようにしているから、いくらこちら側に魔物が来ると苦情を言っても無駄なんだ」
「プリシラ、それに我が国では領地を守るのは領主に任されている。国としても、大変だからとその地域に騎士を回す余裕はない。特に冬場は領主が去るから、王家も騎士団も逆に王都を守らねばならないし、特に兆候の連絡が入れば騎士団を回さないといけないのは君も知っているだろう?それだけで手一杯なんだ」
「レオナルドの侯爵家も辺境伯も、苦労しているのは我々も知っている。でも彼らは守れているんだよ。毎年、守れず瓦解しそうな領地と領主はもっといて救難の要請が入ったらそっちが優先だ」
なんて酷い現実なんだろう。
私は王都と伯爵家の領地付近の事しか知らなかった。
他所はそんな酷いの?!
「侯爵令息、私の兄は「自分にはその能力は無い」と言って、断ったんですよね?やはり何を依頼したのか聞いてもいいですか?」
「ああ、一度 “光魔法使いがいる討伐” というのを体験してみたかったんだ。俺は学校卒業後は侯爵家に戻るからね。魔法騎士団に入団しない俺は、多分、一生その戦い方を知らないで終わるんだと思ったから」
なるほど。学校に、たまたま光属性の先輩がいたから頼んでみたと?でも、兄が「その能力がない」って言って断ったのは何だか理由がピンと来ない。
兄はその能力は無いって…ああそうか。令息が依頼した時の兄は、まだ中級魔法が使えなかったんだ!
「じゃあ、侯爵令息はこの冬の領地の討伐に、私に光魔法使いとして参加して欲しいという事ですか?」
「最初はそう思ったんだ。でも今は…」
今は?
「川を!国境の川を浄化してくれないか?プリシラ」
私はまさかの依頼に驚きで、目だけじゃなく口も開いてしまったと思う。




