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帰りの馬車の中でも私は背中の汗が引かなかった。
兄はずっと黙ったままだし、王子もイノも真面目な顔で黙ってる。
イノ?いつものフザケた雰囲気はどこに行ったの?
お兄様もいつもの憎まれ口は?
そして王子は…いいや。あなたは黙ってても。
「何で私だけ黙っててなんだ?」
ギャーッ!全部、声に出して言ってた!でも王子の為人なんて知らないし。
「ピッピアノを寄付してくれるなんて良かったですねぇ…」
と私はとりあえず誤魔化しておく。
「王家からピアノを寄付しようと思ったんだけど…」
「プリシラの結果次第でだろ?」
「?!」
それって私にピアノを弾かせに、何度も行かせるつもりだってこと?!
もしや国中?…待って待って!そりゃあ人助けはやりたい。でも私のやりたい事もある。
「なあプリシラ、皆も。とりあえず今日は聖女の杖を使った事にしといてくれないか?」
王子殿下の言葉に私は目を見開く。
「あぁその方が良いだろう。プリシラ、これは聖女の杖の効果だ。カスティエルもいいな?」
「…はぃ」
兄の声は、なぜか蚊の鳴く声のように小さかった。
王子殿下は先に私達兄妹を伯爵邸に送ってくれた。
「どうもありがとうございました」
兄と二人でお辞儀する。
「いや。こちらこそありがとう。じゃあ」
王子とイノは去っていったが、二人はあの馬車の中で一体、何を話されているのだろう?想像すると怖すぎる!そして兄は部屋に閉じ篭もった。
「一体、何があったんだ?」
帰宅してきた父は、母から兄の事を相談されたようで困惑していた。
「今日、第一王子殿下らと出掛けた事が原因か?」
そりゃあ兄も父と同じ騎士団で同じ部署だから、今日の兄の外出だって知っているはずだよね。行き先まで。
だから隠すのは無理だ。
それに私は家族には真実を話して相談したい。
私は兄だけがいない居間で、今日あった事を話す。
もちろん聖女の杖を使っていない真実だ。
「そうか。そんな事が…」
「だから、あの子は落ち込んでいたのね?」
「小さい男ね。妹に魔法の能力を抜かれたくらいで」
家族の焦点は兄の方か!何だか安心した。
「放っておきなさい。いつも自分で解決して前に進んできた子よ」
「そうよ器が小さいお陰で、治りも早かったわ」
お姉様って毒舌系だったっけ?
「小さい男で、しかも器まで小さくて悪かったな!お陰で早く復活したぞ!」
「わぁお兄様!」
「復活おめでとう。信じてたわ!お兄様!」
「ウルスラ〜!」
「ほらっ心配しなくても自分で解決してきたわ」
『ハハハハハッ』
「…そんな事より、皆、笑っているけどプリシラの状況は、かなりヤバいぞ?」
「キャス、もしかしたら“初代聖女並み”かもという話になるの?」
「でも私…多分、楽器がないと初級魔法もやっとだ。まあ杖を使えば今は中級魔法もイケるけど」
「楽器の方が効力があるのがプリシラらしいな」
「ホントだよっ!お陰で嫉妬もできやしないな」
「ウソだ〜プリシラに嫉妬して部屋に篭ったクセに」
「ウルスラ〜!引き篭もり違うからな!ちょっと考え事してたんだよ。しかも勝手に小者扱いしやがって」
「それで第一王子殿下は…でも病院での結果は聖女の杖の影響にすると仰ったんだろう?」
「ああ。その方がプリシラにとってもいいだろうって…イノ先輩も多分、大神官様と聖女様にそのように報告するみたいだ」
「お兄様、本当に病院での効果は出てると思う?」
「伯爵の耳が聞こえるようになっただろ?他にも、人に支えられて庭に出てきた病人が自分で歩いて戻って行ったんだぞ!ほとんどの人が。俺はそれを見てた!」
「まあ良かったじゃない!」
「は?」
「本当に良かったわ。だけどプリシラの能力だと知られてはいけないのは、今後魔法に頼られるかもしれないからよ」
「そうね初代聖女様の存在だって病気や怪我を治す為に神に遣わされた訳じゃないわ。悪意を払って魔物を退治する為よ。だから今後もプリシラはその為に力を磨くことが大事よ」
「それがすんなり許されるにかって話だろ!母上、ウルスラ」
「キャス、だから第一王子殿下もイノチェンツィオ小侯爵も杖の影響だって事にして下さったのだろう?」
「じゃあさ、今回の病院訪問は私の魔法の練習だったって事でいいのかな?」
「そうじゃない?」
「それで良いわよ」
良かった。ちゃんと家族に相談して。やっぱり直ぐに解決した。私の事も兄の事も。
今世も良い家族に巡り逢えて本当に感謝だ。
本日、20時頃、もう一話投稿予定です。月曜日ガンバレ!応援投稿。




