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魔法少女は無理がある?!〜魔法の呪文をヘビメタにのせて♪〜  作者: 朱井笑美


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 前世で言うところのドッキリ訪問だろう。いきなり王子と大物神官の小侯爵が来訪したのだ。病院内はプチパニックだ。

 所々で「キャー」という黄色い悲鳴も上がる。


 そんな中、お二人は起き上がる事が難しい年配や重病の患者さんの部屋から訪問を始めた。

 一応、感染系の病室ではないと聞いているが「我々が菌を持ち込む可能性があります!」と私が強く進言して、兄に殿下と自分自身にバリアを張らせる。イノと私は自分でだ。


 この世界には一応、石けんもあるし消毒薬などもある。

 マスクもあるが“イケメンのご尊顔”がマスクで隠れるのは良くないだろうという私の独断だ。

 きっと彼らの外見だけで回復力が上がる人も絶対いる!


 バリアは無色透明なので張られているのは相手からは分からない。でも張られている人は何となくモヤっぽいものを感じる。デメリットはそれぐらいだ。

 あとは魔法使いの腕によって持続時間が変わるが初級魔法なので恐らく大差は無い。


 戦場では中級魔法以上のバリアでなければ意味がない。

 初級魔法のバリアでも物理攻撃を和らげるだけじゃなく、炎などの熱や氷の冷気にも割と耐える。

 だけど中級になるとほぼ何でも弾く。


 更に上級は弾くだけじゃない。弾いた魔法を相手に跳ね返すミラー効果が付いてくるが、付近の味方にも返ってくるので「何すんねん?!」って感じだ。しかも持続力が、イノでも5分くらいがせいぜいだと言っていた。

 とにかく一番使い勝手が良いのが中級魔法だ。


 私達が重病患者の病室を回り終える頃、庭にピアノの設置が完了したと連絡が来た。あんなに大きく重い物を本当にご苦労様だ。

 王子殿下の護衛騎士たちと、ピアノの持ち主の伯爵様とその騎士達には大感謝だ。

 さあ後は私の出番ですな。


 庭の中央に設置された白いピアノの前に座り、指を慣らしがてら音の確認をする。

 うん。ちゃんと調律をされた良いピアノだ。私が準備をしている間に動ける患者さん達が庭に集まってくる。


 演奏は一曲だけの予定だけど、観客は病人だからイスや敷物も置かれていて、そこにも座れるようになっている。

 すごく人を集めているけど…一体、何て言って集めているんだろう?王子とイノはキラキラ笑顔で挨拶しながら人を集めているから、代わりに兄が私の側にいる。


「お兄様、彼らは何て言って患者さんに来てもらっているのかしら?」

「さあ?ただのピアノ演奏会じゃないのか?」

 ふ〜ん。そうか兄も私の側にいるから知らないか。でも演奏が皆の期待外れだと悪いな〜。

 まあ効果がなくても王子のせいって事でいいか。


 院内のほとんどの人が集まったんじゃないの?と思えるくらい庭は一杯の人になった。

 庭に面した窓にも人がビッシリだ。


「ねえ殿下、いきなり回復魔法でいいのかな?」

 上級回復魔法は“悪魔が来たりて”だからダークでハードな曲なんだよ。だから最初は明るく楽しい曲が良くない?


 私が躊躇しているのを見た殿下が「じゃあ前の病院で良かったと思う詩の弾き語りは?それか後世に託された亡くなった方の心に響くメッセージとか」と提案してきたけど…。

 そうか…そうよね。でも皆を感動で泣かせたい訳じゃない。

 それに、ここの患者さん達は戦って怪我を負った人達じゃなくて、病を患った人達だからちょっと違う。


 ここには老若男女、様々な人がいるから前世でも万民受けした明るい歌と音楽を奏でよう。

 そういう曲を2曲続けて弾いてから本番に移る。

 低音から入る前奏だ。曲色が急に変わって皆、ビックリしているけど逆に食い入るように聞いてくれている。


 さあっ“悪魔が来たりて”だっ!

 小さい子が怖がって泣いちゃった…ゴメンよ。

 でも逃げないで聴いて!病気が少しでも良くなるように、願いを込めて全力で弾くよ。


 皆、私の演奏に圧倒されているみたいだ。

 こんなのこの世界ではあまり無い曲だよね?でもここはエクソシストが命懸けで悪魔と戦っている歌詞なの。

 この人は悪魔に負けちゃうけど、あなた達は病気に負けないで!

 最後の叩き付けるような演奏でラストだ。


 さあ皆「回復せよ!」


 演奏が終わって「シーン」となって皆が固まっている。

 おい皆さん?私は時を止める魔法をかけたか?


 そんな中、一人の老紳士がプリシラに向かって静かに歩いて来た。

「お嬢さん、私の耳が遠いのが解消されたようだよ。あなたの演奏が途中から鮮明に聞こえるようになった。これは伯爵家(うち)のピアノだったが、お礼にこのまま、ここに寄付するよ」


「お祖父様、お耳が聞こえるようになったの?良かったわねぇ」

 なんと!そちらのお二人はピアノの持ち主の伯爵様とお孫さんのご令嬢ですか!


「今の演奏は何だったんだ?体に凄く響いたよ」

「確かにねぇ。聞いた事のない演奏だった」

「激しかったけど不快じゃなかったな。それにお腹が空いた気がするよ。今まで食欲なかったのに」

 患者の皆さんは口々に何か話しながら院内に戻って行かれた。


「ここの患者は怪我人じゃなくて病人ばかりだから、目に見えて症状の改善は分かりにくいな。だけどさっきの伯爵は明らかに、老化に伴う難聴が改善されていた。やっぱりかなり効果があるな」


「そうだな。殿下、これは上級回復魔法の広範囲効果だ。ピアノ演奏が聞こえていた範囲の影響を速やかに把握するよ。きっとこれから医師の診察でも明らかにされるだろう」

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