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プリシラは前世の記憶がある分、何にでも興味を持ち早熟だった。
特に兄姉が上に二人という影響もあり、兄や姉がすることは何でも一緒にしようとした。両親も祖父母も大らかな性格で危険な事でなければ、プリシラが何をしようと見守ってくれ協力的だった。
そしてプリシラが3歳になる頃には、我が家の男性陣に混じって剣を振っていた。
姉には「女の子が剣を振らなくても」と言われたが「私は魔力が少ないの。だから他のことも頑張らないと」と言うと、5歳の姉は「じゃあ私は魔法で怪我を治せるけど、お薬でも治せるようになるわ」とニッコリ笑った。
薬学は祖母や母の分野だった。
魔物討伐の遠征の時には祖母や母も祖父達と共に参戦し、後方支援に加わるのだ。
プリシラは部屋に籠るよりも、身体を動かす方が好きだったので、薬学は遠慮しようと思ったが、音楽は大好きだったので早い頃から音楽の教師を父におねだりした。
これは多分、前世の影響のせいだ。
前世では音楽家の父に、たっぷり楽器の英才教育を受けていた。
ピアノ以外にもギターやサックス、ドラムなんかもやったっけ。
伯爵家には誰も弾かないが“とりあえず貴族の家だからあります”的なピアノがあって、見つけた時には「この世界にもピアノがあるんだ!」と感動したものだ。
プリシラの1日は朝の鍛錬に始まって、文字の勉強、音楽、魔法と幼児とは思えない日々を過ごしていた。
ちなみに音楽の先生は流れの楽師だった。祖父が酒場で出会った楽師がピアノを弾けると聞いて連れて来たのだ。
間もなく4歳になる孫と聞いて舐めていたのか、楽師のピアノの腕前は、前世日本の昭和のピアノ教本“バイエル”レベルだった。
でもさすが流れの楽師。リュートとハープの弾き語りは見事で、リュートとハープは習うことにした。
この世界には残念ながらギターはなかった。
確か前世の記憶ではギターの前身がリュートじゃなかったかな?
だから、そのうちリュートを自分で改造すればいいのかもしれない。だけど今はまだ手も小さいし、指も動かないのでピアノやリュートを普通に弾けるように頑張ることにした。
毎日ピアノの練習をする私を見て、両親も祖父母も「誰に似たのか?」と首を捻っていた。
プリシラは1年ほど楽師に楽器を習うと、5歳にしてあっという間に楽師の腕前を抜いてしまった。楽師は満足そうに「俺にできる事はもう無い」と言って、また他所に流れて行き、プリシラは今度は王宮の楽師にちゃんと楽器を習うことになった。
楽師はさすが王宮お抱えだけあって、楽器だけでなく歌やダンス、この国の様々な楽曲を教えてくれたが、前世で発展した音楽環境で育ったプリシラには、少々物足りないものだった。
音楽以外にもプリシラが興味を持ったのは、やはり魔法だ。
前世には無かったものだから、俄然、やる気に満ちていた。両親や祖父母もプリシラの魔力が少ないからと、バカにすることもなく兄や姉の授業に混じって、真剣に肩を並べるプリシラを微笑ましく見守っていた。
魔法は小さいものや効果が自然現象に近いものは、無詠唱で魔力を込めるだけで発動できるのだが、大きな魔法は呪文を詠唱し魔法陣を展開しないと発動できない。
その詠唱呪文がとにかく長くて難しいのだ。しかも意味のない呪文の羅列の長文に、プリシラは見ただけで初っ端から躓いた。
あとは想像力だ。
呪文を唱え魔法陣を展開しながら、どのように発動させたいかイメージを魔力に乗せる。
確かに大きな魔法を無詠唱で、一瞬で発動させてしまえば危ないだろうとは思う。しかしこんなに魔法が難しいなんて想像もしていなかった。
この国では大きな魔法は“展開に時間がかかる”というのが常識で、魔法使いは戦闘の際には後方に控えるのだ。前衛にいれば呪文を唱えている間に無防備になり攻撃されてしまう。
祖父も父も魔法騎士だ。
魔法騎士は魔法だけじゃなく、剣技も備えているので魔法使いよりは、割と前衛に出る。特に光魔法使いは前衛で戦う騎士の補助魔法やバリア、回復などをかけながら剣技で自分自身の身も守るという難しい役どころを担っている。
それ以外の魔法騎士は騎士と一緒に剣技で戦いながら、隙を見て魔法も繰り出すという戦い方だ。魔法騎士とは、周囲の状況を見ながら戦う、とても器用者じゃないとなれない職でもあった。




