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プリシラは産まれた時から、これは前世の記憶だろう?と思われるものがあった。
その前世の記憶とやらの最後は飛行機の中で、機内で爆発したと思った瞬間、視界が暗転し次に目を開けた時には見知らぬ天井を見上げていた。そして自分が起き上がれず、赤ちゃんになっていることに気付いてパニックになった。
一緒に乗っていた両親と弟は?私は生まれ変わったの?それとも魂が事故のショックで別人に入り込んでしまったのか?
プリシラは手足をバタバタさせて声を上げるのだが、赤ちゃんなので周囲は微笑ましく声を掛けて宥めてくるだけだ。
でも自分が赤ちゃんだと自覚があるのが不思議…しかもとても無力。
更に赤ちゃんなせいか、とにかく眠気が頻繁に襲ってくる。
結局、眠ってミルクを飲んでまた眠って、それを繰り返しているうちに気持ちが落ち着いてきた。赤ん坊は何もやる事がないので、前世の記憶を順を追って整理することにした。
前世の父は世界的に有名なヘビィメタルロックの歌手だった。
母は日本人でフラメンコにハマり、本場のスペインで学んでいる時に、欧州ツアーをしていた父のバックダンサーを務めたことで、知り合い結婚したのだそうだ。
ちなみに父は人気スターにありがちなバツ2で、母とは3度目の結婚だった。しかし最初の2人の奥さんとは子供はおらず、なんと1人目の妻はバンドのバックボーカリスト、2人目は父のバンドの敏腕マネージャーで、実は離婚後も一緒に働いていた。
母は大物との出会いとは言え、前妻が2人とも現役で職場にいる父と、よく結婚したもんだなと思った。だけど父は3度目の結婚で学んでいるのか、妻子思いの良い夫で父親だったと思う。
私達は普段、父の活動の本拠地のNYに住んでいた。
父の全米ツアー明けの休暇で、母の実家の日本に家族で帰省した後、父の実家があるオーストリアに自家用ジェットで向かっている途中だったはずだ。
恐らくパーサーのジョシュアが「そろそろロシア上空でオーロラが見えますよ」と言っていたタイミングだったと思う。
その直後に爆発したから、もしかしたら事故とかではなくミサイルで撃ち落とされたのではないか?と思い至って身慄いがしたところで、現世の父と思われる人に抱き上げられた。
「プリシラ寒いのかな?震えているのかい?」
父はミルクティーベージュの髪に、優しいハチミツ色の瞳をした正統派イケメンで、前世のワイルドな容姿の父とは正反対な人だった。
まさかあの父が、この人に生まれ変わってないよな?と思っていると「あらっオムツかしら?」とオムツを調べる母は、明るいブラウンの髪に鮮やかなオレンジ色の瞳をしていて、もしかしたら、ここは地球ではないのかも?とうっすら疑念を持ったプリシラだった。
成長し、歩き始める頃には疑念はますます確信に変わった。
そもそも異世界どころか地球でもない。
月が無く、代わりの天体が3つ見える。
しかもこの世界の人達は魔法を使っていた。使用人達も水や火、風などを当たり前のように使い家事を行っていた。
プリシラの家は建国間もない時に、王が妻にした聖女の子孫の流れを汲む古い家門だった。
聖女の息子は王位を、長女が侯爵家に、次女が伯爵家に嫁ぎ、プリシラの家はその伯爵家だった為、プリシラの家門は代々、聖女が持っていた光の属性の魔法が使えた。
プリシラも1歳を過ぎた頃には光属性の魔法に目覚めたが、プリシラの魔力はそれほど強くはなく、兄や姉が中の上くらいだったらプリシラは中の下くらいだった。それは平民よりも少し多い程度だ。
母も光魔法の使い手だが魔力は少なく、自分のせいで子供達も魔力が少ないのではないかと気にしているようだったが、父も祖父母も「子供達全員が光属性だったので良かったじゃないか」と言って気にしていなかった。
光属性はそもそも存在自体が少ないのだそうだ。
家門で光属性なのは聖女の娘が嫁いだ侯爵家と伯爵家だけだし、世間では侯爵家、伯爵家両家の所縁の者か、稀に突然変異で産まれる事がほとんどだ。
それ故、父も祖父も王宮所属の魔法騎士で、魔物討伐を行う専門の魔法騎士団に所属していた。
兄と姉の容貌は父に似たミルクティー色の髪にハチミツ色の瞳だったが、プリシラの髪の色はミルクティーというよりも、濃い目のカフェオレブラウンで瞳も母譲りの明るいオレンジ色だった。
光属性は容姿でも判り、魔力が多いと髪は白に、瞳は金色に近くなると言う。
もう一つの聖女の血筋の侯爵家は、同じ光魔法の属性を維持していたが、侯爵家は代々神殿に属していて、今の大神官様が侯爵様でご長女の侯爵令嬢が今の聖女様であった。
聖女様は美しい亜麻色の髪に温かみのある金色の瞳をされていて、魔力も豊富なのだとか。
プリシラは末っ子で兄や姉にも可愛がられており、今世でも家族仲が良いことに感謝した。魔力が少ないことは残念だったが、他のことに長ければいいかと前向きに考えたのだった。




