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私が同好会の退会を申し出ると、侯爵令息レオナルド様はとっても驚いた。
「なぜ?君はあんなに演奏が好きなのに。それに他の会員達とも楽しく演奏していただろう?」
「もうあなたとの仲を疑われたくありませんから!」とはちょっと言えない。
それに今回、疑いを晴らしても、彼と一緒にピアノを弾く限り、また同じような目に遭うはずだ。
だから、そもそもの縁を断ち切る方が早い。
「家業が忙しくなりそうですので、放課後はそちらの方に時間を回します」
「そっそうか…君の家は光魔法使いだもんな」
目に見えてガッカリする侯爵令息。
そんなにガッカリするような事?そりゃあ彼の演奏を聴くのも、一緒に演奏するのも楽しかったけど。でもそれは彼に対してだけではないし。
「せっかく君とはもっと仲良くなれると思ったのに」
ヤメロよ!それが一番の原因で私は同好会を抜けるんだぜ!
「私が同好会を抜けても、知り合いではあるじゃないですか。見ず知らずの他人に戻る訳ではありませんよ?」
令息ファンの令嬢達だって、知り合いに対する挨拶くらいは許してくれるだろう。
だけど令息は未練たらしい目で私を見てくる。
一体、どういう事?!私にだって分かる。彼の視線は私を女性として見ているわけではない事くらい。
何か他に下心があるんじゃないの?
「君には…やっぱり色仕掛けは効かないな」
おい!何だと!
「第一王子殿下にも態度を変えないもんな」
酷い男だな!一体、どんな目的なのか知らないけど、乙女の純情を利用しようとするのは良くないと思う。やはり、さっさと同好会を抜けるのは正解だった。
「短い間でしたがお世話になりました」
私はそう言って、引き止められないように早足で音楽室を出てきた。
全く何に人を利用するつもりだったんだろう?
私の聖女の杖の存在はまだ公にはされていない。だから光魔法の事ではないと思うのだけど。
彼の目論見を聞いてしまったら協力させられたかもしれない。追いかけては来なかったから、きっと大した事ではないのだろう。
私は学校を出ると、今日も病院に足を向ける。
前回、リクエストされて知らなかった曲も今回は調べて練習したし、何よりも皆が私の演奏で体が楽になったと喜んでくれるのが一番嬉しい。
私の少ない魔力も、普通の生活をしていたら一日で回復するし、平和な時に魔力を出し惜しみする必要もない。
今日も誰かが楽になって退院が少しでも早まればいい。
私は夏休みに入っても病院に通い続ける時間を作った。
だけど病院では良い事ばかりではない。
重傷者が治療の甲斐なく亡くなる事もある。そんな時は私は前世の影響で、やはり讃美歌を演奏する。
ピアノは外に持ち出せないので、最近はギターモドキも背負って行っている。
私のギターモドキは改良を重ねて、すでに5代目だ。
クラッシックギターから、やっとアコギに近付いた優れ物だが、私のうるさい注文に職人さん達には本当にご迷惑をお掛けした。
バイオリン職人まで巻き込んで、ボディの素材も厳選したのだ。
話が逸れたが…病院から出棺する際、神に召された患者さんを讃美歌で送り出す。
前世の父もよく葬儀で歌っていた「主よ御許に近づかん〜」怪我で苦しんでいた人が皆、安らかに眠ったように神に召された姿を見て、私に「自分も死ぬ時は!」と言ってくる人もいる。
よして下さい!縁起でもない。
それに私は葬儀屋でもないぞ!
それ以来、私はピアノでもギターモドキでも弾き語りをよくするようになった。
亡くなった方が残した遺言や後世へのメッセージの内容が、また良かったりするんだ。そういうのを歌にして皆に伝える。
まあ元歌は前世の有名ソングをお借りしちゃったりするのだけど、そんなのこの世界では著作権も無いしね。
だけど、それが患者さん皆さんの心に刺さってリクエストも増える。こんな時、私は音楽に長けていて良かったと本当に感じるのだ。それもこれも前世の記憶があったからだ。
もし記憶がなければ、魔力の少なさに絶望していたのかもしれない。せっかく光属性の家に生まれたのにって。
あと1年で私は前世で亡くなった年齢になる。
今世はとりあえず、前世の年齢を越えるのが目標だ。




