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元々、伯爵家は病院に薬草や薬を納めていた。だから今回はボランティアと言うよりは、そのついでという感じで病院を訪問した。
母も姉も入院していた患者に対して、医師や看護師の手が回らないところに入っていくようだ。そして入院患者の健康状態だけじゃなく悩みなども聞いていく。
これは治療を受けても、辛かったり治らない症状を改善することなどが主だ。症状を抑える薬と共に、睡眠薬や痛み止め、胃腸薬、様々な塗り薬などを処方したりもする。
母だけでなく姉も薬師を目指しているから、随分前から母や祖母に同行してボランティアを行っていたそうだ。
ちなみに私は魔物討伐の方に行っていたから、ボランティアをサボっていた訳ではない。向き不向きや専門分野の違いの問題だ。
だけど私も回復魔法はできるから、出来れば役に立ちたいけど…そうだピアノ!前回も弾いたけど、今回はピアノの旋律に回復魔法をのせて演奏してみたらどうだろうか?
母や姉は診察室に居たり、病室を回ったりしているが、私は談話室に行ってピアノの前に座る。
談話室は決められた時間の間は外部の人と面会に使えるが、それ以外の時間はお茶を飲んだり、患者同士の歓談の場所に使われたりするので人が割と集まっている。
私はそんな人達のくつろぎの邪魔にならないような、まずは静かなリラクシングソングを弾く。そしてその後、讃美歌に当てはめた回復の呪文をブツブツと唱えていく。
聖女の杖は使えないから初級の回復魔法だ。中級からはヘビメタにしちゃったから癒しソングではないので今回は封印だ。
そもそも私の少ない魔力量の都合もあるから初級のみなのは仕方がない。
でも少しでも彼らの癒しになれば良い。そして痛みがやわらげば良い。あとは怪我も病気も少しでも良くなって、退院が早まればもっと良い!
そう願いを込めてピアノを弾いていく。
そうして回復魔法を込めた一曲を弾き終わると、一人の男性に話し掛けられた。
「お嬢さん、心なしか君の演奏で足の怪我の痛みが収まった気がするんだ。お陰で元気が出たよ。ありがとう」と。
そして他の男性にも「この曲を知らないか?弾いて欲しい曲があるんだ」とリクエストを受けた。
プリシラは嬉しくなって喜んでリクエストを受けると、他の人からもリクエストを受けて、皆で歌ったりして談話室は賑やかになった。
皆と盛り上がるのは、こんなに簡単な事だったのに!
王子や高位貴族達にはきっと分からないだろう。
奉仕活動って上からやるものじゃないんだ。
自分も改めて分かった気がした。
それからプリシラは学校で、後回しになっていた、あの時の令嬢達にとうとう囲まれた。
やっぱり改めて来る機会を伺っていたのね?
「私達、あなたは第一王子殿下にもレオナルド様にも相応しくないと思うの」
「あなたが光属性だから、お二人共、それに興味があるだけだと思うから、その気にならないようにと忠告をしたくって」
案外、優しく言ってくれる。ちなみにレオナルド様とはピアノ同好会の代表者の侯爵令息のお名前だ。
この世界の人達は悪意に敏感だ。自分が魔物の発生源にも発生理由にもなりたくないから、とても発言や行動に気を付ける傾向がある。
だけど気に入らないから、こうして言ってくる。
侯爵令息だけじゃなく、第一王子まで対象に加わった事は解せないけど!
しかし前世でも女子に囲まれて罵倒されたり、陰湿な悪口や嫌がらせを散々された事のあるプリシラには、正面切っての正直な苦情は好感が持てる。
だからこちらも誠意を持ってお伝えする。
「皆様にご不快な思いをさせて申し訳ありません。私自身はどちらのお方も恋愛対象とは見ておりませんが、今後、誤解を招かないようにピアノ同好会を辞める予定です。なので侯爵令息には特に、もう関わることはないと思います」
令嬢達は一様に驚いた様子を見せた。
まさか私が同好会まで辞めるとは思っていなかったのだろう。
「そんな!そこまではっ」と逆に仰って下さるが、私自身がもう決めたのだ。
私は放課後は音楽室ではなくて、病院でピアノを弾こうって。




