17
彼との連弾は断りたかったけど、他に弾きたい楽器もなかったから結局連弾する事になってしまった。
そもそも連弾じゃなくても良くないか?一人一人弾いても良いんだし…。
しまった!気付くのが遅くなって対処に遅れを取った…。
まあ連弾するのは一曲だけでいいよね。
私達が訪問した病院は、魔物討伐の際に負傷した騎士や兵士が入院している専門の病院だった。
当日は病院内のピアノのある広い談話室で演奏をしたけど、はっきり言って盛り上がるものではなかった。音楽が好きな人ばかりではないし、技巧を凝らした音楽だって素人には分からない。
兵士のリクエストを聞いて演奏したりもしたけど、途中で出て行く人も多かった。
せっかくボランティアで来たのに、なんだかモヤモヤが残る訪問だった。
前世では、まず有名人なら行くだけで喜ばれた。
父がクリスチャンだったからボランティアは当たり前のようにやっていたし、学生の頃は…小児病棟で劇や人形劇、大人にも流行りのアニメや歌手の歌を歌ったり、よく知られた曲を演奏すると喜ばれた。
でも今のこの国ではそういう娯楽はあまりない。
次は演劇クラブに声を掛けるといいんじゃないかと思って、王子殿下に提案する。
「次は演劇クラブに声を掛けて、皆が知るような劇や流行りの劇をやればいいんじゃないでしょうか?」
「そうだな…。実は前回、合唱部に参加してもらった時も同じような反応だったんだ…」
今回と同じってこと?
「殿下、事前にリクエストなどのアンケートは取られましたか?ただ演奏や歌いに来るから見てくれ、聴いてくれなんて奉仕なんかじゃなくて、ただの押し付けですよ?」
王子殿下の表情が曇る。
「君!せっかく我々が負傷者を激励に来ているのに、押し付けなんて無礼だろ!しかも第一王子殿下が直々にお見えなのに」
コイツらアホか…。
高位貴族の施し気分のボランティアなんて、もっと受け入れてもらえる筈がない。
だけどお偉い生徒会のメンバーに楯突くのは面倒に感じて、黙っていると王子殿下が「そうだな。次は彼らの観たいと思う劇を演劇クラブに頼んでみるよ。今日はご苦労だったな。ありがとう」と仰って解散となった。
私は気持ちがモヤモヤのまま屋敷に戻り、家族に今日の出来事をぶち撒けた。
「確かに気持ちがこもっていたとしても、相手に必要だと思われないとボランティアとは言えないかもな〜」
「そうだよな〜特に歌や演奏は嫌いな人は少ないと思うが、好みは広いだろう?」
と父も兄も言う。
それっ!よく分かる。だって前世の父はヘビメタのロック歌手だったのだもの!
父の実家はオーストリアで、代々オペラ座でも演奏するような音楽家のクラッシック一族だった。しかも一族の女性にはオペラ歌手や男性の中にはウィー○少年合唱団の経験者も多数いる。
なのに父はアメリカの音大に進んだ先で、出会ってしまったのだ。クラッシックと真反対の音楽に…。
まあ成功したから良いんだろうけど。
「プリシラ、我々のボランティアに参加するといいよ。我々は光属性だから討伐のない時は病院だけじゃなく、病院の無い地域も回る。母さんも薬師だから一緒にな」
「お祖父様もお祖母様も、領地では魔物討伐以外にも近隣にも赴いて、そういう活動をなさっておいでなのよ」
「でも学校があるから遠出は無理じゃないか?ボランティアも王都だけじゃなく遠征になるからな。お前は王都でちゃんと勉強してろ!」
兄の言い方は、多少ムカつくが確かに今は学校優先だ。
「今回は近場の病院でもいいじゃないか。きっと手伝いは病院側にも喜ばれるし、お前には経験にも学びにもなるぞ?いきなり討伐先で負傷者に向かうよりはいいぞ」
と父に言われてその通りだと思う。
父や兄は参加は無理だったが、私と母と姉、三人は今回、生徒会で訪問した病院に再度、ボランティアに向かう事になった。




